【ブリクストン クロムウェル1200 試乗記】これでいい、ではなく、コレが良い!

掲載日:2023年09月12日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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BRIXTON CROMWELL 1200

彼方より新たな黒船艦隊ブリクストン来航。クロムウェル1200はその中でもフラッグシップモデルでありオーソドックスかつ強烈。モダンクラシック・ストリートシリーズの頂点に立つ一台だ。

”ブリクストン”ってなに?
”クロムウェル1200”ってどんなの?

オーストリアを拠点とするバイクメーカー、ブリクストンモーターサイクル(以下ブリクストン)。まだ生まれたばかりのブランドであり、2023年に入ってから日本に上陸したことからも、初めて耳にするという人がいるのは当たり前のことであるのだが、個性的なスタリングだけでなく走りの質も良いと、感度の高いモーターサイクルファンたちの間で噂になっている今注目のブランドである。

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これまでバイクブロス・マガジンズのインプレッションコーナーでもいくつかのモデルをピックアップしてきたが、どれも味のある個性的な車両だった。そして今回は1200cc並列2気筒エンジンを搭載するブリクストンのフラッグシップモデル、クロムウェル1200を紹介していきたい思う。

ブリクストン クロムウェル1200 特徴

流行りのネオクラシック系
しかし個性的な魅力を感じる

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ブリクストンにはすでに125cc、250cc、500cc、1200ccと幅広い排気量のモデルをラインアップしており、そのどれもがクラシックとモダンを融合させた魅力的なデザインで纏められている。今回ピックアップするクロムウェル1200は、ブリクストンのモダンクラシックストリートセグメントとされており、125、250、そして1200と3種の排気量が用意されている。前者2機種は排気量も抑えられており、エントリーユーザーがバイクの楽しさを味わったり、セカンドバイクとして楽しめるようなパッケージングとなっているのだが、それらに対してクロムウェル1200はブリクストン最大排気量となる新開発1200cc並列2気筒エンジンを搭載し、フレームや足まわりも完全オリジナルのフラッグシップモデルである。

今春開催された東京モーターサイクルショーにて参考展示がなされており、個人的にも大変興味があった。そのクロムウェル1200がついに日本に上陸しストリートを走らせることができるようになったのだ。

ブリクストン クロムウェル1200 試乗インプレッション

快活なエンジンフィーリングと
扱いやすい車体構成

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クロムウェル1200のテスト車両を目の前にしディテールを見てゆく。シリンダーがほぼ垂直に立たされたいわゆるバーチカルツインタイプとされているほか、腰下のクランクシャフトケース部分には大きくブランドロゴがあしらわれておりエンジンの存在感はとても強い。車体色にはアースカラーが用いられており、しかも良く見るとさりげなくツートーンにしてあるなど演出も細かい(ブラックモデルはソリッド)。総じてクラシカルなカフェレーサースタイルで纏められているのだが、LEDデイライトをインサートしたヘッドライトケースや、超コンパクトタイプのウインカー、フル液晶デジタルディスプレイなど、モダンなエッセンスが散りばめられており、それらが効いている。

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車体に跨りエンジンを始動させると大排気量ツインエンジンのパルス感がしっかりと残されている上に、ブリッピングすると歯切れの良いエキゾーストノートが周囲に響き渡り、走り出す前からワクワクさせられてしまった。

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ミッションを1速に入れて路上へと出て行く。低回転域からトルクが太く、どんどん車体が前へと押し出され、乗り始めからとにかく力強いという印象を受けた。後からスペックシートを確認したところ、僅か3100回転でピークトルクとなる108Nmを発生させるとのことである。しかもエコとスポーツという二つのライディングモードが用意されているのだが、エコモードでさえパワフルに感じ、スポーツモードにするとより一層スロットルワークに対してリニアに反応するようになるので、じゃじゃ馬を乗りこなすかのようなライディングを楽しむことができる。

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ワインディングロードへとステージを移すと、ここでもまた光る部分が見えてきた。フロント110/90R18、リア150/70R17というタイヤセットはクラシックロードスポーツ特有のハンドリングをもたらすのだが、持ち前の強いエンジントルクを上手く使うことで、ヒラリヒラリとコーナーをパスしてゆくことができる。特に純正採用されているピレリ・ファントムとの相性が良く軽快でありながらも奥で粘ってくれる。強いて言えばシート形状が後ろに向かって若干下がっているような印象を受けたのでスポーツライディング時には上体を前傾気味にすることを意識するとよりコントローラブルであった。

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一切カウルを持たないモデルであるから高速道路や幹線道路での巡行シーンとなると走行風はもろに受けるが、クロムウェル1200はエンジンの特性的に見ても高回転まで引っ張って高いスピードを維持してギュンギュン走らせるようなキャラクターではない。むしろオートクルーズが備わっているのでゆったりとしたクルージングを快適且つ気持ちよくこなすことができた。細かい部分ではデジタルタコメーターの針の動きがあえてアナログチックに設定されていることなどにもこだわりが感じられる部分であり、ライダーを飽きさせないポイントにもなっている。

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数日間クロムウェル1200を乗り回したが、とても良く走る相棒という印象を受けた。もちろん、そんなチープな感想を述べるためにテストを行ったわけではないのだが、ちょっと思考を俯瞰して考えてみて欲しい。これがいわゆるメジャービッグブランドのニューモデルであれば当たり前のことで済んでしまうことだ。しかしクロムウェル1200はオーストリアに本拠地を持つそもそも聞きなれないKSRという企業が手掛けた、イギリスのストリートカルチャーを意識したブリクストンというモーターサイクルブランドが、新たに開発した1200ccもの排気量を誇るエンジンを搭載したニューモデルである。少々胡散臭く思ってしまう人も少なからずいるに違いない。かくいう私自身、乗る前までどのようなものか疑心暗鬼であったことを白状しておこう。だがしかし、クロムウェル1200はそんな私の気持ちを一蹴する高い魅力を持つ一台に仕上がっていたのである。

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これは驚くべきことであり、もしかすると数年後にはブリクストンを所有しているだけで羨望のまなざしを受けるようになっているかもしれない。ライバルと比べてより深いバイクライフを楽しむことができそうなクロムウェル1200は、税込み149万6000円という価格設定も絶妙な線である。新しいモノ好きは飛びつくべきであるし、懐疑的な思いを抱く人にもニュートラルなアタマで接してもらいたい推しの一台である。

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ブリクストン クロムウェル1200 詳細写真

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新開発の排気量1222ccの水冷SOHC並列2気筒エンジンを搭載。最高出力83馬力を6550回転で、最大トルク108Nmを3100回転で発生させる。トルクを重視したセッティングとなっており、クロムウェル1200のキャラクターづくりを大きく担っている。

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ワイヤースポークホイールに110/90R18サイズのタイヤをセット。ブレーキはニッシン製の2ピストンフローティングキャリパーをダブルで備える。ブレーキレバーのタッチも良く、ストリートユースであれば制動力も十分に感じた。

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オーソドックスな丸型ヘッドライトケースの中に、LEDデイライトやブリクストンのロゴをインサート。クラシカルでありながらもモダンな印象を受けるフロントマスクとしている。

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シート高は800mm。座面はフラットで前後の自由度は高い。ただ上体を起こした姿勢だとやや後ろ下がりに感じた。タンデムテストも行ったが、パッセンジャーシートの乗り心地も良かった。

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ボディカラーは、グリーン、グレー、ブラックの3種類。タンクからリアフェンダーにかけてのシルエットが美しく、シンプルでありながらも存在感があるスタイリングとなっている。燃料タンク容量は16リットル。

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リアフェンダー上にテールランプ及びウインカーが備わっている。ウインカーは前後ともに流行りの超コンパクトタイプ。フェンダーに貼られた車名のバッジも質感が高い。

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リアタイヤのサイズは150/70R17。フロント18、リア17であること、細身の幅であることから、クラシックロードスポーツ的なハンドリングを生み出す。ピレリ製ファントム・スポーツコンプとの相性も良く、路面状況が伝わりやすかった。

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ステップはミッドコントロール位置でセットされている。ミッションは6速でアンチホッピングクラッチが備わっている。登録間もない新車だからか、シフトチェンジ時のミッションの入りがやや渋かった。

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丸型のメーターケース内にフル液晶ディスプレイをインサート。エコモードとスポーツモードで表示デザインが異なる(写真はエコモード)。タコメーターの針がアナログチックな動きを見せ、細かい部分まで演出していることに感心した。

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ハンドルバーはテーパータイプ。クラシカルな樽型グリップを採用している。シンプルなスイッチボックスはライディングモード切り替えやオートクルーズのセットもしやすい。

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リアサスペンションはプリロード調整機構式のKYB製ツインショックを採用。必要にして十分なパフォーマンスだが、カスタマイズしても良さそうだ。

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シート下はETC車載器もセットできないかもしれないほどで、ユーティリティスペースはほぼ無いに等しい。荷物の積載はパッセンジャーシート部分やサドルバッグを活用するなどをした方が良さそうだ。

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