【カワサキ Z650RS 試乗記】飽きのこないデザインと乗りやすいキャラクターを持った“相棒感”のあるレトロスポーツ

掲載日:2022年05月10日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/野岸“ねぎ”泰之

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KAWASAKI Z650RS

大ヒットとなったZ900RSに続いてカワサキがリリースした新たなレトロスポーツがZ650RSだ。Z900RSの4気筒に対してツインエンジンを搭載し、軽くコンパクトな車体で、よりカジュアルに楽しめるマシンとなっている。実際に試乗し、その魅力を確かめてみた。

カワサキ Z650RS 特徴

正統派レトロスタイルの中に
現代的な装備をさりげなく盛り込む

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鮮やかなキャンディグリーンの塗装を身にまとったZ650RSが発表されたのは2021年9月。その傍らには同じキャンディグリーンの初代Z650が展示されていた。初代Z650は1970年代に登場し「ザッパー」(風を切り軽快に走る、という意味の造語)と呼ばれた空冷ミドルクラスの名車だ。その名を冠して登場したZ650RSは「現代版のザッパーか!?」と大いに話題となった。日本では満を持して2022年4月末に発売。人気色はキャンディグリーンと、Z50周年記念の火の玉カラーだが、今回の試乗ではグレー×エボニーという、渋めのカラーを紹介しよう。

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Z650RSはシャープなスタイリングを持つネイキッドモデル、Z650をベースとしてクラシカルなイメージに仕上げたマシンだ。先に登場して大人気となっているZ900RSの弟分的な存在で、同じレトロスポーツとして酷似した雰囲気を放っているが、こちらはエンジンが2気筒ということもあり、車体は非常にスリムでコンパクト。燃料タンク容量はZ900RSの17Lに対してZ650RSは12Lで、車両重量は900より27kgも軽い188kgとなっている。

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パワーユニットは649ccの水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブエンジンで、最高出力50kW(68PS)/8,000rpm、最大トルク63N・m(6.4kgf・m)/6,700rpmという数値はベースとなったZ650と全く同じだ。そのエンジンをトレリスフレームに搭載し、軽量なスイングアームやホリゾンタルバックリンク式のリアサスペンションと組み合わせることで、軽快なハンドリングを実現している。

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外観デザインは正統派のレトロスタイルで、昔ながらのバイクのイメージだ。Z900RSと似てはいるが、エンジンやタンクがスリムなことで、マッシブな雰囲気はなく、いかにも乗りやすそうでフレンドリーなもの。小型の丸形ヘッドライトはLEDを採用し、リング状の溝加工を施してある。また、砲弾型のメーターユニットはアナログ式のスピードメーターとタコメーターを採用した2眼タイプで、中央には様々な情報を表示する液晶パネルを配している。テール部分は水平方向を強調し、楕円形のLEDテールライトを採用。これらは一見するとZ900RSと同じように感じるが、実際はZ650RS専用のもので、つつましくも「兄貴分とは違うんだぞ」とばかりに、独自の存在感を示している。

カワサキ Z650RS 試乗インプレッション

軽くて乗りやすく、パワフル
気負わず走れるのが楽しい

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Z650RSの実車を目の前にすると、そのスリムさ、コンパクトさがやはり際立つ。Z900RSの大型車らしいボリュームある車体と比べると、400ccクラスと言われても信じてしまいそうなほどだ。愛車に押し出しの強さを求める人には物足りないかもしれないが、気負わず気軽に乗りたい、という人にはうってつけのマシンになる予感がする。

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シート高は800mmで、数値上はZ900RSと同じだ。足つき性はそれほどいいわけではないが、シート前端が絞られ、タンクの幅が細いので不安は少ない。何より車重が軽いため、停車時に少しぐらついたり傾いたりしても「何とかなる」という感覚は、Z900RSよりも相当強いので、安心感がある。ポジションはごく軽い前傾だ。見かけ上はハンドルが高めで手前に引かれているので「殿様乗り」に近いかと思ったが、実際に跨るととても自然でリラックスできる姿勢となっている。

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エンジンをかけると、ストトトト……という歯切れのいい排気音を奏でる。Z650RSのエンジンは180度クランクを採用しているが、アイドリングから低回転域にかけては心地よい鼓動感をもたらしてくれる。車体の軽さとトルクフルなエンジンのおかげか、スタートダッシュはかなり小気味よく、鋭いもの。車体がスリムでポジションも自然なため、混雑するシティランでも先を見通しながらヒラヒラと身軽に走ることができる。Z900RSよりもはるかに軽快な乗り味は、まさにザッパー的なテイストといえるだろう。

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郊外のちょっとしたワインディングを走ってみると、さらにこのマシンの軽快さがよくわかる。リッターマシンのような豪快さはないが、5,000回転以上をキープすると、とたんにスポーティな走りへと変貌する。タイトコーナーから中速以上のコーナーまで、ヒラリと身を翻しながら意のままにマシンを操る感覚は、走りの楽しさをあらためて教えてくれるようで心がウキウキする。強大なパワーを持つ車両だと「バイクに乗せられている感」を抱くこともあるが、Z650RSは「自分でバイクを操る」という、バイクの魅力の原点を思い出させてくれるのだ。

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軽快なマシンではあるが、高速道路においても安定感があるし、走りのバランスがいい。100km/hほどで巡航し、時に遅いトラックをヒョイヒョイと追い越す走りなどはかなり余裕がある。もちろんここ一番という時には、高回転域までエンジンを回すことで、車の流れをリードするような走りも可能だ。速度域が高くなると体に当たる風がきつくなるが、ポジション自体は楽なので、飛ばさなければそれほど疲れない。観光地での取り回しや、気軽にUターンできることなどを考えると、ロングツーリングにも案外向いているマシンだと思う。飽きの来ないデザインと軽快で乗りやすいキャラクターを持ったZ650RSは、日常の足からツーリングまでソツなくこなす、長く付き合える相棒と呼べそうなマシンだ。

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カワサキ Z650RS 詳細写真

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ヘッドライトは上下2室に分かれたLEDで、Z900RSよりも小型のもの。リング部には溝加工が施してある。

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ブラックフィニッシュされたパイプハンドルは、Z900RSよりも少々高めとなっている。タンクキャップは現代的なデザインのもの。

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メーターはZ650RS専用となっている。スピードと回転計にはアナログ表示を採用し、中央の液晶部には燃料計やギアポジションなど様々な情報を表示できる。

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ハンドル左にはメーター液晶の表示切り替えスイッチを装備している。ハザードはスライドタイプだ。

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ハンドル右側はスターターボタンとキルスイッチのみというシンプルな構造だ。

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クラッチレバー、ブレーキレバーともにダイヤル式の5段階調節機構を備える。

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水冷4ストローク並列2気筒DOHC4バルブ649ccのエンジンは、タンクからはみ出すことのないスリムなシルエット。マフラーも車体下部に収まるコンパクトなものだ。

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丸みを帯び、段差のないシルエットのシートは車体デザインにマッチしたもの。表面は滑りにくい仕様となっている。

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シート下にはETC2.0車載器や書類&工具が収まっている。バッテリーやヒューズへのアクセスも容易だ。

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車載工具にはリアサスのプリロード調整器具のほか、12/14mmのスパナ、ドライバー、六角レンチが入っている。

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ステップはライダー、タンデム用ともにラバー付きを採用。チェンジペダルは肉抜きされたものとなっている。

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ボディ左側、サイドカバー下にはヘルメットホルダーを装備している。

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フロントフォークはインナー41mm径の正立タイプを採用。ブレーキは300mm径のダブルディスク、キャリパーは2ポットだ。

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リアのディスクブレーキ径は220mm。スイングアームは湾曲タイプを採用している。タイヤはダンロップのSPORTMAX Roadsport 2を履いている。

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往年のZをオマージュした楕円形のテールランプは、LEDでありながらバルブ球のような光り方になるよう工夫されている。

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ライダーは身長170cmで足は短め。Z650RSのシート高は800mmで、片足なら母指球、両足でもつま先はしっかり接地する。車重が軽めなので不安感は全くなかった。

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