掲載日:2022年04月15日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
SUZUKI KATANA
一度見たら忘れないデザイン。スズキ・カタナというバイクはそのようなモデルだ。初代モデルから2000年まで生産されていた旧カタナの話は後述するとして、2019年に登場した現カタナにマイナーチェンジが施され2月25日に発売されたのだが、スタイリング的にはほぼ変更がなされていないということからも、いかにデザインを重要視したモデルなのかが分かるだろう。
では何が変わったのだろうか、それは中身だ。電子制御式スロットルの採用や電子制御システム S.I.R.S.(スズキ・インテリジェント・ライド・システム)の搭載など、パワートレーンを中心とした走りの面が強化されている。どのような乗り味になっているものなのか、試乗テストを行い考察することにした。
ドイツのケルンショーにてプロトタイプが発表されたのが1980年のこと、市販開始は翌年なので初代GSX1100カタナが登場したのはすでに40年以上も前の話となる。他に類を見ない独特なデザインを与えられたカタナは、世界中のライダーに衝撃を与えたものだった。追って小排気量モデルなども開発され、一世を風靡したモデルだったが、排ガスや騒音規制が厳しくなったことなどの理由により2000年にファイナルエディションが販売され、一度は姿を消していた。
それから19年という長い時が流れ、2019年にまったく新しい姿となった新生カタナが登場した。実は2017年のEICMA(ミラノショー)内でのイベントに出展されていたKATANA3.0というコンセプトモデルがベースとなっており、それを本家であるスズキが市販化したという経緯だった。
誰が見てもカタナの血脈だと分かる佇まいにまず感心させられるものである上、そもそもフレーム、エンジン、足まわりなどをGSX-S1000の物を流用していることもあり、よくぞこのカタチで纏め上げたと思える。2019年の登場時から数回触れたことがあったのだが、カタナという特殊な雰囲気を演出しているだけでなく、GSX-S1000譲りの刺激的なパフォーマンスを秘めた新しいタイプのスポーツバイクという印象だった。そしてそれから約3年、早くもマイナーチェンジが施されたのである。
マイナーチェンジ後のカタナに対面すると、従来モデルとボディやフロントフォーク、シートのカラーリングが変更されているのだが、ほとんど外見上では見分けがつかない。デザイン的には完成されているものであり、あえて手を加える必要はないということなのだろう。重要なのは吸排気系のデチューンや電子制御スロットルなどによりユーロ5基準に適合させたことだ。
スズキイージースタートシステムが装備されておりワンプッシュでエンジンを始動。ギアを1速に入れ走り出す。上げ下げ共に使えるクイックシフターが新たに採用されているので、一度走り出してしまえば、ラフな感じで乗り回すことができる。低回転域でのトルクがより一層増された感じがし、2~3000回転でテンポよくシフトアップしてゆけば、あっという間に6速トップに入っている。従来モデルではギクシャクするような使い方でも、スムーズにこなしてくれることがすぐに分かった。
市街地を抜けて高速道路を使いワインディングを目指す。レッドゾーンは11000回転超とされているが、公道では7000回転も回せば十二分であり自制心を持っていないと、とんでもない速度になってしまう。ただしそこにこそ、新型カタナの魅力があると言うこともできる。ライディングモードは3パターン、さらにトラクションコントロールは5段階から選ぶことができ、アグレッシブな走りを楽しむことを前提としているからだ。
ワインディングにステージを移すと、思っていたよりも立ちが強い印象を受けた。曲がっていかないわけではないのだが、ハンドルには手を添えるだけでスムーズにコーナーに入っていきたいのに、ハンドルを抉るような乗り方になってしまう。これはライディングポジションが影響しているのだと推測できる。体格によっては問題ないと思うが、私は少々ハンドル位置を調整してみたいと感じた。
従来モデルと比べて、スパルタンな面が一層強調された新型カタナ。デザインコンシャスなモデルであることもあり、燃料タンクに見える部分には大きなエアクリーナーボックスがレイアウトされていたり、その分燃料タンク容量が12リットルと少なかったり、シート下にはバッテリーやセンサーなどがぎっちりと収められていたりと、とにかくこのカタチを実現するために、あらゆる工夫がなされている。そこに強烈な走りも得たとなれば、さらに我が道を突き進むモデルへと進化したと言える。カタナに魅了されたら、他のバイクなど眼中に無くなるのである。
以前旧カタナが空冷ポルシェとバトルする漫画が流行ったが、今なら何が相手となるのだろうか。