掲載日:2022年03月07日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
HONDA 400X
今から遡ること約9年。2013年に新たな400ccシリーズとして登場したCBR400、CB400F、400X。フレームやエンジンなどの基本コンポーネンツを共有としながらも、フルカウルスポーツ、スポーツネイキッド、アドベンチャーとキャラクターを分けて登場した。どれも人気モデルとなったが、その中でも突出したヒットとなったのが400Xだった。
4輪界ではSUV、2輪界ではアドベンチャーモデルが世界的なブームとなっていることも、後押しとなったことには違いないが、扱いやすいサイズ、パワー、パッケージングで、誰でも楽しめるバイクとしてまとめられていたことが最大のポイントである。
2019年にフルモデルチェンジが施され、今年足まわりを中心にマイナーチェンジがされた400Xに触れ、その魅力や実力を探ることにする。
初代400Xの登場は2013年のこと。共通のスチール製ダイヤモンドフレームに同じ並列2気筒エンジンを搭載する兄弟モデルCBR400Rと、CB400Fと同時に発表された。ワインディングやサーキットなどでのスポーツ走行を楽しめるCBR400R、ストリートでの取り回しや扱いやすさを極めたCB400F、ロングツーリングも快適にこなせるアドベンチャーライクな400Xというキャラクター付けで、どれも業績は良好だったが、中でも400Xは爆発的なヒットとなったことを今でも覚えている。大柄に見えて実際に触れるとコンパクトにまとまっている車格、長時間乗っても疲れにくいアップライトなライディングポジション、誰でも扱える軽さや適度なパワー感など、ライダーの心をつかむパッケージングでオーナーを満足させ、さらに噂が噂を呼んだことで400Xオーナーは拡大していった。
2019年に行われたフルモデルチェンジでは、エンジンのカムを変更しバルブリフト量を再セッティングしたほか、インジェクターなどにも手が加えられ、中低速域でのトルクを引き上げ、さらに元気に乗りやすくされた。さらにこのフルモデルチェンジでの大きなポイントとなっているのは、フロントタイヤが従来モデルの17インチから19インチに引き上げられたことだ。前後17インチのセットというのは現在のスポーツバイクで考えれば定番となっているが、それはオンロードユースの場合だ。未舗装路に立ち入るのであれば、ジャイロ効果などでフロントの安定性や走破性が得られる19インチの方が有利だ。つまり現行400Xは、オンロード主体のモデルではありながらも、アドベンチャースパイスがさらに盛り込まれたモデルとなっているのだ。
そして先だって登場した2022年モデルは、フロントサスペンションにSHOWA製のSFF-BP(セパレート・ファンクション・フロントフォーク・ビッグピストン)の採用やダブルディスクブレーキ化が施され、足まわりの強化を中心に細部に手が加えられたマイナーモデルチェンジ版となっている。さっそくその最新400Xのテストを行っていこう。
マイナーチェンジが施された400Xはカラーグラフィックパターンも変更され、タフなアドベンチャーモデルの雰囲気が助長されている。傍から見ると大柄に見える車体も、跨ってみると意外なほどコンパクトにまとまっていることが分かる。シートに関してもカタログ値では800mmなのだが、それを感じさせないほど足つき性が良い。車体がスリムなこと、シート形状が良いことによる恩恵が大きい。
エンジンを始動し軽く操作できるクラッチを繋いで走り出す。排気音こそドコドコとした鼓動感があるものの、停車中の振動などは皆無であり、これは長時間乗っていても疲れにくい。ライディングポジションに関しては手前に引かれたハンドルバーのおかげで上体はかなりリラックスできる一方で、シートとステップの位置に関しては割と近いため、下半身はスポーティな構えとなる。実はこれが大きなポイント。高く広い視界で様々な情報を脳に送り、直感的に足腰で挟んだ車体を操ることができる。視線を移動するだけでハンドルバーなど手を添えておくだけで進みたい方向に向きをかえて進んでいける。走り出したとたんに、長年付き合ってきたバイクのごとく手足のように扱うことができるのである。
エンジンのフィーリングに関しても抑揚感こそ希薄だが、しっかりとしたトルク感と低中回転のどこからでもついてくるパワーを備えており、高回転まで全域でストレスなく使うことができる。
2019年のフルモデルチェンジからフロントが19インチとされているが、ハンドリングにダルな感じはなく、むしろ扱いやすさが増している印象で、さらに今回のマイナーチェンジで採用された新型フロントフォークとダブルディスクの組み合わせで、成熟した走りを楽しめるものとなっている。安定感を持ったまま深々とバンクさせることができるので、リヤタイヤの端まできっちりと使って走ることができる。
万能ランナー、これが400Xのキャラクターなのだ。400Xは街中を走っていてもロングツーリングに出かけても見かける。個人的な見解では派手なキャラクターは備えていないと思っている。だがしかし”あのバイクは何だ?”と思って注視すると400Xであることが多いのだ。
丸みを帯びたボディラインでフレンドリーな印象を持っていた2013年の初期型。フロントマスクを中心にややエッジを効かせたデザインに変更された2017年の初期型マイナーチェンジモデル、そして大幅に手が加えられた2019年からの2代目、それをベースに細部がブラッシュアップされた今回の2022年2代目マイナーチェンジモデル。最新モデルが最良、これは400Xにも当てはまることではあるが、従来モデルであっても懐の深いバイクライフを存分に楽しむことができることに変わりはない。できれば最新モデルを新車で手に入れたいところではあるが、中古マーケットから手ごろな一台を探し出しても良いかもしれない。