カワサキ ニンジャ 250R
カワサキ ニンジャ 250R

カワサキ ニンジャ 250R – ローコストで走りが楽しい本格的スポーツバイク

掲載日:2012年10月25日 試乗インプレ・レビュー    

取材・撮影・文/淺倉 恵介

カワサキ ニンジャ 250Rの試乗インプレッション

カワサキ ニンジャ 250Rの画像

“ちょうど良い” パワーとイージーなコーナリング性能
乗り手を選ばず楽しめる万人向けのスポーツバイク

エンジンを始動して最初に感じたのが、排気音が静かなこと。近年、日本の排気音量規制は世界的に見ても厳しいレベル。そのため致し方ない部分ではあるのだが、スパルタンなルックスからすると、やや寂しくも感じる。だがこの音量と音質であれば、深夜・早朝に住宅街を走っても気を遣わずに済む。環境への配慮だと考えれば実に正しい設計だ。通勤や通学にも使われることが多い 250cc クラスだから、こうあるべきなのだろう。エキゾーストノートを楽しみたいのなら、マフラー交換という手がある。ニンジャ 250R は人気モデルだけあって社外パーツも豊富だ。好みのマフラーでカスタマイズを楽しむのも良いだろう。

カワサキ ニンジャ 250Rの画像

自分の普段のアシは 600cc スーパースポーツで、10年程前のモデルではあるがスペック上で 100 馬力は超えているし、動力性能的にはそこそこ高い。そのためニンジャ 250R に乗ってみると、さすがに非力だと感じたのは事実。だが走行距離を伸ばす内に「これで十分なのではないか?」と感じ始めた。4輪車の流れをリードするのは余裕だし、高速道路でも法定速度+αの速度域までストレスなく加速する。なによりエンジンの回転数を上げて走るのがとても楽しいのだ。全域でフラットなトルク特性ではあるものの、本領を発揮するのは高回転域。5,000 回転でも十分走るのだが、特に 7,000 回転から上の領域がパワフルで楽しい。カワサキのパラレルツインエンジンは、伝統的に高回転型なのだ。スポーツモデルと言うと、マルチシリンダーエンジン搭載車がイメージされるが、カワサキは違う。クルーザーモデルや W800 のように、テイスト重視のモデルを除けば一貫して180度クランクを採用している。これは高回転高出力指向の表れだ。左右のピストンが交互に上下する180度クランクは、高回転を維持すのに有利な特性を持つ。ニンジャ 250R もその例に漏れず、回して楽しいエンジンに仕上げられている。とは言え、ピーキーなパワー特性ではない。低速トルクは “豊か” というレベルではないが、軽い車体を動かすには十分だし、エンジン回転数を容易にパワーバンドまで持ち上げる。ワインディングを気持ちよく走るのなら、10,000 回転をキープしたい。そう聞くと難しく感じるかもしれないが、必要なパワーに合わせたギアを選択すれば、自然と高い回転域を使っているはずだ。

カワサキ ニンジャ 250Rの画像

パワーを使う部分では、高速走行にも触れておきたい。重心位置が高めでハンドリングが基本的に軽快なので、ドッシリとした安定感は無いものの直進安定性は良好。軽快な運動性を持つのに高速域の直進安定性は確保している。この辺りはニンジャシリーズの頂点、ZX-14R などに通じるものがある。シリーズの末弟であるニンジャ 250R は、しっかりと “ニンジャの血統” に連なっているのだ。また、ひとつ覚えておきたいのが高速域でのウインドプロテクション。立派なフルカウルを装備しているのだから、さぞや高速走行が快適なのだろうと思っていたが、それがそうでもない。カウリングの防風性自体は悪くないのだが、ポジションがアップライトなため上体が起き、アッパーカウルの整流圏内から外れてしまうのだ。もちろん上半身を伏せればカウルが本来持つ高い防風性の恩恵に授かることができるが、それなりの前傾姿勢を要求される。ちなみに下半身の防風性は良好。多少の雨なら、足元は濡れずに済むほどだ。

カワサキ ニンジャ 250Rの画像

コーナリングは実にイージー。ハンドリングは極めて軽く、ヒラヒラと曲がる。もう少し落ち着きがあっても良いのでは感じるほどに軽い。これは “バイクで曲がる”、“バイクを曲げる” という動作に慣れないビギナーを考えたキャラクターなのだろう。荷重だのサスペンションの挙動だのといった小難しいことを考えずとも、簡単にコーナリングを楽しむことができる。その反面、フロントにガッシリと荷重をかけて旋回力を引き出すような走りは苦手。これは、やや動き過ぎるきらいのあるフロントフォーク特性が理由だろう。リアを軸にして車体のピッチングを引き出し、コーナリングのきっかけを作っているようだ。スロットルオフするだけで曲がり始めるのは良いのだが、もう少しフロントフォークのダンピングを効かせれば、ライダーが積極的に曲げていく走りも楽しめるはずだ。もっとも、これは装着されている OEM タイヤの特性もあるだろう。マイレージ性を無視できない OEM タイヤは、どうしてもロングライフ性能を重視しがち。スポーツ向けのタイヤを履かせれば、また違った乗り味になるかもしれない。

カワサキ ニンジャ 250Rの画像

ブレーキは非常に強力だ。その気になってブレーキレバーを握り込めば、フロントタイヤをロックさせるのも簡単。ただ、そういったハードブレーキングを行うと、柔らかいフロントフォークが一気にダイブしてしまう。これでは、強力なフロントブレーキを活かしきれない。やはりサスペンションの動きにもう少し落ち着きが欲しい、と感じた。その柔らかいサスペンションのおかげで、乗り心地は悪くない。シートも固めで疲れにくいのだが、その反面、長時間走行ではシートとの接地部分が痛くなることがあった。もっとも、個人的にはこういうシートは好み。柔らか過ぎるシートよりもずっとバイクを操り易い。

ヘッドライトも明るく夜間走行は快適だった。だが、そこで気になったのがメーターの視認性。ニンジャ 250R はホワイトパネルを採用している。明るいのは良いのだが、透過光の広がりが一定ではなくメーター盤面の明るさにムラができてしまうのだ。ここは是非とも改善して欲しい。またユーティリティ面からすると、時計も欲しいところだ。

ニンジャ 250R は既にニューモデル(2013年モデル)の登場が発表され、そのスタイルも公開されている。おそらく現行モデルで不満に感じる面は改善され、長所は更に伸ばされたマシンに仕上げられていることだろう。とは言え現行モデルも捨て難い魅力を持っているのは間違いない。痛快なエンジンと軽快なハンドリングは実に愉快で、さすがクォーターブームを巻き起こした1台だと納得させられる。ニンジャ 250R は、ミドルクラスにおけるエポックメーキングなマシンであることは間違いない。

カワサキ ニンジャ 250Rの詳細写真は次ページにて

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索