掲載日:2010年10月07日 試乗インプレ・レビュー
初代ZZR1400が登場したのは欧州における300km/h規制後の06年のこと。それ以前のカワサキの最速系フラッグシップだったZX-12Rや常にライバルと目されてきたハヤブサなど、最速にこだわり続けたマシンとは少し異なるコンセプトを持って生まれたマシンである。もはや「最速」とはいわず「オープンクラスキング」、つまりジャンルを超えた最強マシンと自らを定義づけている点に注目したい。
コンセプトは設計思想にも表れている。エンジンは直4スポーツ最大クラス1352ccの排気量を誇る最新式の水冷DOHC4バルブユニットを搭載。ビッグボア&ショートストローク設定で排気量を稼ぎながら高回転でパワーを絞り出す意図が見て取れる。これにカワサキ十八番のラムエアシステムを投入して最高速付近ではピーク200psを実現するなど、パワーの面でもライバルを凌駕する性能を付与。さらに08年のマイナーチェンジで微粒化インジェクターを採用。よりスムーズなレスポンスと低中速域の扱いやすさを向上させている。ユーロ3対応としながら3ps上乗せしてくるなど、環境性能とパワーの両立も図られた。
シャーシは12Rで採用された軽量かつ高い剛性バランスを持つモノコックフレームをさらに熟成進化。超高速域での抜群のスタビリティと軽快なハンドリング、スリムな車体を実現している。車体ディメンションもZX10Rを踏襲していることから、“本気でスポーツできる車体”を目指したことが分かる。また、足回りはφ43mmの倒立フロントフォークとフルアジャスタブルのユニトラック式リヤサスを採用。豊富なサスストロークによる路面追従性の良さを生かし、スポーツライディングからツーリングまで幅広いセッティングを可能としている。強大なパワーを受け止めるブレーキシステムについても、ペータルタイプのφ310mmダブルディスク&4ポッドラジアルマウントキャリパーを装備し確実な制動力を発揮。さらに雨天やパニック時に安全マージンを高めるABS仕様もラインナップ。人間工学に基づいたライディングポジションや航空力学を応用したエアロダイナミクスフォルム、メーターにさまざまな情報を表示する液晶パネルタイプのCANインターフェイスを設置するなど最先端の技術も投入されている。快適なクルーズもできて、スポーツライディングも得意、本気を出せば最速。そんな欲張りなニーズを1台で満たしたい人におすすめのモデルと言えよう。