ロードライダーインプレッション~カワサキ ER-6n~

掲載日:2010年06月28日 特集記事    

記事提供/2010年2月24日発行 月刊ロードライダー 4月号
Report/石橋知也  Photo/徳永 茂

KAWASAKI ER-6n

並列ツインの二面性で日常とスポーツを満喫

649cc DOHCパラレルツインの軽さ、スリムさ、おもしろさは格別。バイクを自由自在に操る快感。フレンドリー、スポーティ、リーズナブル。ミドルクラスの本質はこうなのだ。

肩肘張らないミドル
回せば回り、充分速い

やっぱりこういうミドルスポーツがバイク全体の中核になければ健全ではない。欧米でロングセラーだとか、人知れずベストセラーになってきたのは600~750ccのミドルモデルだ。日本では400ccまでの普通免許のおかげでミドルクラスが400ccになっているけれど、本来は600ccクラスなのだ。リーズナブルで扱いやすく、でも、パワーもそこそこあって、スポーツもできるから、多くの人にフィットする。

カワサキのミドルツインは実績があって、'80年代中期のGPZ400S/500Sや、その後継機のEX-4/5('90年代)などが高評価を得てきた。なぜ4発ではないかといえば、ツインの方が安価にでき、低中速トルクで勝るから排気量の割りに加速も良く扱いやすいからだ。

その良さはリファインされた'09年型ER-6nにも存分に生かされている。とにかく気軽に乗れる。'06年型の初代よりも低中速域(特に4000rpm以下)をスムーズに改良したというが、その通り。でも、ツインらしいパルスがこの領域では心地好くて、街中を流していてもストレスを感じず穏やかな気分になる。

このDOHC4バルブの649ccパラレルツインは、180度クランクだ。360度の等間隔爆発と違って180-540度間隔の不等間隔爆発を採る。それでパルス感が強いのだろうか。でも、バランサーのおかげで振動は小さい(4発よりは間隔の大きい振動はあることはある)。それが6000~7000rpm、そして8000rpmとなるとビーンと回転物に慣性力が付いて、それまでとは異質の回り方をし、一気にレッドゾーンが始まる1万1000rpmに飛び込む。高速道路での追い越しやワインディングロードで、この高回転域を使うと心躍る。完全にスポーツモードだ。

 

石橋知也:ツインはパラレルもVツインも大好き。「ER-6nは初代のイエローボディでゴールドフレームが好き。エンジンはB・ワーナーさんが使うだけある。並列ツインがダートに不利というけど、どうなの?」

不等間隔爆発だからか、その連続音の領域でもトラクション感がハッキリしている。路面を蹴る感じが伝わってきて安心かつ、自分がエンジンをコントロールしている感覚になる。リッタークラスのハイパワー4気筒だと、パワーとスピードに圧倒されて、その感覚を得るにはサーキットや高速道路の300Rぐらいの高速コーナーでないと、余裕が生まれないのが僕のような常人。でも、ミドルツインならもっと低い速度でもっと高い回転数で、その感覚が掴めるから嬉しい。長年H-Dファクトリーで名チューナーと働いたビル・ワーナーが最近、このカワサキ製ツインを搭載したダートトラッカーを走らせているのも納得できた。

車体はスリムなこともあって、どんな場面でも完全に股の下で扱える。適度な剛性感で、硬くもなくヤワでもない。切れがあるタイプのハンドリングではない。そこそこの安定感とニュートラルさが、安心感をもたらす。ときどきリヤがフロントを押す挙動が出ることがあるが、これはリヤショックの減衰力発生と作動性の精度の問題だ。リーズナブルなクラスなのだから仕方ない部分。これを改善したいならアフターマーケット製の高性能ショックに交換すればいいし、もっと切れのあるハンドリングを求めるなら、もう少しスーパースポーツ寄りの最新タイヤに交換すればいい。φ41mmフロントフォークの剛性はフレームに見合っているからセッティングでOK。ブレーキは強力ではないが、効力の発生がどこでもフラットで使いやすい。

このバイクを乗りこなすのに時間はかからない。そしてワインディングロードでは、その気になればかなりハイペースでイケし、中級者までならかえってスーパースポーツで走るより速いかもしれない。それぐらい扱いやすさがプラスになっている。

現在カワサキの600cc以下は、基本的にメイド・イン・タイランドで、これもそうだ。ASEANは地域内の自由貿易化を目指し関税が低く、このためこの地域で人気の小中排気量バイクも地域内生産が必要なのだ(逆に地域外からの輸入では関税が高い)。また、ASEAN内では生産コストが低く抑えられ、日欧米に輸出しても充分に見合うのだ。

たしかにスタイリングは好き嫌いがあるだろう。でも、大きな重いバイクに疲れた人は、こんなミドルで操る楽しさやツインの2面性を肩肘張らずに味わってみたらどうだろう。

Machine Details

'09年型でデザイン一新

初代ER-6nは'06年型。先鋭的デザインと軽快さで、欧米では高い評価を受けてきたミドルツインスポーツだ。今回試乗したのは'09年型で、デザインやスイングアームなどが変更された第2世代。車重200kgは取り回しも楽で、シート高785mmでもスリムなので足着き性は良い部類

水冷4ストパラレルツインDOHC4バルブは180度クランクでバランサー付き。潤滑はセミドライサンプ。コンロッド小端にピストン冷却用オイルジェットを持つ。クランクとミッション2軸を三角形状に配置して前後長を短縮するなど非常にコンパクトに仕上がっている

高張力管トレリスフレーム(鉄)はナローで軽量。ショートホイールベース、ロングスイングアームが軽快性と安定性を両立させている

 



ER-6nの顔である縦2灯のリフレクタータイプのヘッドライト(ハンドルマウント)。Fウィンカーはシュラウドに配置する。メーターはスピードがアナログ(白色LEDバックライト)でタコがバーグラフ

ベルトがなくすっきりしたシート。グラブバーも目立たない

 

 

KAWASAKI ER-6n 』スペックを見る >>

 

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