ロードライダーインプレッション~ホンダ VFR1200F & VT1300CX~

掲載日:2010年03月08日 特集記事    

記事提供/2009年11月1日発行 月刊ロードライダー 11月号
Photo/富樫秀明、柴田直行、鶴身 健、伊藤 均、徳永 茂

'86年のVFR750Fに始まったVFRシリーズが8年ぶりに全面改良され、6代目へと進化した。ツアラーの資質を高めながらも、そのスポーツ性はVFRそのものだった。

Report/和歌山利宏  Photo/HONDA

 

扱いやすく快適でもスポーティそのものだ

VFR1200Fが世界で初お目見えしたのは、'09年東京モーターショー。早くも、そのプレスデーの明くる日、スポーツランドSUGOで、世界各国のジャーナリストに試乗の機会が与えられることになった。

次期VFRの存在が明らかにされたのは'08のケルンショーで、そのときはイメージスケッチを立体化したオブジェだけの出展であった。でも、今回のVFRを見て、あのオブジェが単なるオブジェではなかったことを思い知らされることになった。イメージが見事に形になっていたのだ。

ニューVFRのスタイリングはいかにも斬新である。ホンダらしいデザインではないという声もあるそうだが、ホンダらしさうんぬん以前に、既存のモーターサイクルのデザインから脱皮していると思う。

得てして斬新なデザインは、デザインのためのデザインになりがちである。でも、ニューVFRにギミックはない。見れば見るほど機能が追及された結果に見えてくる。

特徴的なのが、一体化された燃料タンクとカウリング。カウル前面左右の裂け目から導入された空気が、エンジンからの熱気を遮断してライダーを快適に保ち、さらに高速安定性にも寄与させようというのは明らかだ。美しい造形のマフラーもマスの集中化の狙いが窺える。スタイリングからも、快適性とスポーツ性の融合形であることが見て取れるのだ。

実際、イメージされたニューVFRの使われ方は、「300km先までランチに」であったという。高速道路を快適に、峠道をスポーティに走り抜け、目的地のレストランの駐車場にも溶け込めるスタイリングが目指されたというわけだ。

そんなVFRは存在感を放つも、跨ると小柄な身体が無理なく収まる。足着き性も良好で、スポーティに扱える相棒であると思わせる。走り出しても、そんな第一印象は裏切られることはない。スロットルレスポンスやエンジンフィール、車体の挙動など全てがスムーズで上質で、快適さの資質を備えていても、曖昧模糊としたものはなく、バイクをダイレクトに感じることができる。

後輪はシャフトドライブでも、このオフセットピボット方式は、チェーンドライブみたいな感覚でトラクションを伝えてくれるし、高速コーナーの安定性ももはや巨漢のシャフト車を思わせない。コンバインドABSも、前後を独立作動させたような自然さだ。高速走行でも空気の壁を突き進むような感じはなく、軽快さが保たれている。そして、タイトなコーナーでも車体の大きさを感じさせず、素直に忠実に狙ったとおりに走り抜けていく。

エンジンはツアラーらしく超フラットな特性で、どこからでもまろやかに力強く加速していく。その一方で、スポーツ気分でスロットルを開けていくと、高回転域に向かってトルクが立ち上がっていく。電子制御スルットルが実用性とファン要素を両立させているのだ。

そして、快適に移動しスポーティに楽しめるニューVFRを、さらに高次元化させているのが、新搭載のデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)である。

DCT仕様車には、クラッチレバーとシフトレバー/ペダルはなく、ATモードにしておけば、スロットル操作だけでギヤは自動的にシフトされていく。オートマチックであっても、有段でシフトタイミングを把握できるので、マニュアル車同様のダイレクト感もある。そして、ドライブモードとスポーツモードがあり、前者はのんびり気分用でエンジンは低中回転域に保たれ、後者ならコーナーを攻める走りにも応えてくれる。

また、MTモードであれば、シフトスイッチで普通のマニュアル車のように走ることができる。クラッチ操作は必要なくイージーなのに、熟練ライダーによるシフトよりもスムーズで無駄がないときている。

VFRのネーミングの末尾のFは、オールマイティスポーツを意味するFコンセプトのFだ。そんなVFRたるは、高次元化されて新型に引き継がれている。従来型にはスーパースポーツの素性を快適指向に調教している感もあったが、この1200Fは素性がVFR-Fそのものである。そして、DCTがそれをさらに昇華させているのである。

 

6代目となったV4万能スポーツ

ニューVFRは、排気量1237ccで、前方2気筒の間に後方の2気筒を挟み込むレイアウトの新設計エンジンを搭載。シリンダー挟み角は76度だが、位相クランクの採用で一次振動をキャンセルする。車格も大きくなり、後輪駆動をシャフトドライブとし、ツアラーの資質を高めている

 

和歌山利宏:

ニューVFRにはスポーツランドSUGOのサーキットだけでなく、場内の連絡道路を公道に見立てて試乗。残念ながら秋の仙台を楽しむ余裕はない強行軍でした

 

 

 

キャンディープロミネンスレッド

 

パールサンビームホワイト

 

¥1,575,000
(消費税抜本体価格 ¥1,500,000)

●寸法・重量    
全長/全幅/全高 mm 2550/755/1220
ホイールベース mm 1545
地上最低高 mm 125
シート高 mm 815
車両重量 kg 267
キャスター 25.5
トレール mm 101
●エンジン・性能    
種類   水冷4スト 76°V型4気筒
弁形式   SOHC4バルブ
内径×行程 mm 81.0×61.0
総排気量 cc 1237
圧縮比   12.0
最高出力 kw/rpm   127/10000
最大トルク Nm/rpm   129/8750
燃料供給方式   電子制御燃料噴射
点火/始動方式   フルトランジスタ/セル
燃料タンク容量 18.5
●トランスミッション形式:6速リターン
1速:2.6000   4速:1.1600
2速:1.7368   5速:1.0322
3速:1.3636   6速:0.9393
1次減速比:1.738   2次減速比:2.54
●サスペンション テレスコピック
  スイングアーム
●ブレーキ  ダブルディスク
  ディスク
●タイヤ  120/70R17M/C
  190/55R17M/C

 

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