【Page6】火花の特性と点火時期。これが基本です

掲載日:2010年01月15日 特集記事ザ・パワーチューニング    

記事提供/2009年7月1日発行 月刊ロードライダー 7月号
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Photo/鶴身 健 Text/編集部

パワーを引き出すための考えと最前線

火花の特性と点火時期。これが基本です



上のSPⅡフルパワーキットは車種別専用設計のボルトオンで、車載→シャシダイ計測→実走で詰めた基本点火カーブを収めた上で、内部も自社で完成。左下「コントロールユニット」と右上「パワーコイル」の組み合わせだ。写真はZ用でポイントを無接点化するピックアップも付属。CDI車/FI車はパワーコイルのみが対応品。左の青い「パワーアンプ」は、低抵抗のパワーコイルをSTDイグニッションに装着する際に抵抗値を合わせ、過負荷を起こさない

 

上のグラフは点火のタイミングを模式的に示したもので、すべての基本的考え方になる、と魚谷さん。「一般にエンジンが最大トルクを発揮する点火時期は、混合気の燃焼による最大圧力が上死点後約10°に設定された時です(A)。この最大圧力に達するまでの燃焼時間はエンジンの運転状態で異なるため、燃焼速度が遅い時(スロットル開度が小さく実際の圧縮比が低い時等)には点火時期を早くする必要があります。エンジン回転数が高くなると同じ燃焼時間でも、その間のエンジンの回転角は大きくなります。従って点火時期を早めて=進角して燃焼開始を早くする必要があります」。単に早めるだけでなく、遅くする方がいい場合もある

エンジンの他パートは見える物が主体なので比較的イメージしやすいが、電気は見えないので分からない、と言う人は少なくないはずだ。そんな電気系で今支持を集めている“ウオタニSPⅡ”の製造販売元、ASウオタニの代表・魚谷さんにパワーと電気=点火との関係を聞くと、「火花の特性と点火時期。このふたつが大事」と言う。ではその大事なところは、どう考えたらいいか。

 

まず火花は、混合気を燃焼させる元になる点火プラグの火花放電のこと。その元になるのが電気系で、ここの効率を上げれば強い火花が出せる。これがまずひとつ。バイクでの点火はものすごく簡単に言えば、磁界変化で1次コイルに生じた電流を、これにつながった2次コイルでおよそ100倍(約3万V)に増幅させて、その高電圧によって点火プラグの電極間に火花を飛ばすこと。プラグには常に電流が流れているのでなく、コイルから高電圧が来たときに回路を完結しようとして、電極間に火花として流している。これが1分に数千回という回数で起こる。ここでコイル性能を高めてやれば、誘導放電(ポイント/フルトラ)。容量放電(CDI)どちらの方式でもより強い火花が飛ばせて、パワーにつながる。ウオタニSPⅡの「パワーコイル」は、これを具体化した物だ。コイルは通電時間が十分に必要な一方で、同時に起こる電流の流しにくさ=発熱があるので、長すぎてもいけないという点も考慮されている。このコイルは低抵抗で、FI車でもCDI車でも、点火性能を高めることが出来る。

 

もうひとつの点火時期は、左上の図を基準にすればいい、と魚谷さん。エンジンの圧縮行程で混合気が圧縮され、点火→燃焼となる。ここで上死点で点火すれば、一番圧縮されたところからの燃焼なので燃焼圧力が得られそうだが、この燃焼にも若干の時間が必要になる。その火炎伝播時間を見越して、上死点の手前で点火してやろうというのが、進角という考えだ。上死点までに燃焼は始まり、上死点後10度近辺で一番高い燃焼圧力が得られるように考えるのが、最もパワーが出るのだそうだ。

 

この点火時期を決めるのが、点火ユニット。大事なのは、TPS(スロットル開度センサー)があるか、ないか。ないものは、点火時期はエンジン回転数でのみ決められるので、線で表示される。この線はある一定のスロットル開度の時のみで決められていて、その開度に合った時ならば狙ったパワーになる。これがTPS=スロットルポジションセンサーが付くことで、カーブが立体化したマップになる。これだとエンジン回転数、スロットル開度の両方に応じた点火時期が得られ、パーシャル=中間開度にも応じた点火時期が得られて、特性が安定してくる。トップパワーについては変わらなくても、日常域で変わってくるのだ。

 

ウオタニSPⅡのうち「コントロールユニット」は、この点火時期を最適化したマップ/カーブを入れた点火ユニットだ。点火時期は5~10パターンが入り、チューニング内容やライダーの乗り方に一番近いものを切り替えて選べる。ただ一部チューニングエンジンに対しては、狙うチューニング(ボアや圧縮比)とほしい点火時期にずれが生じることもあるので、ここは魚谷さんに相談してみて、ベストを得たいところだ。

 

 

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