【Page3】 MICHELIN POWER PILOTONE / POWER 2CT

掲載日:2010年02月22日 特集記事タイヤ最前線!    

記事提供/2009年12月1日発行 月刊ロードライダー 12月号
■Photo/富樫秀明 ■Text/中村友彦
■取材協力/日本ミシュランタイヤ株式会社 10276-25-4411(お客様相談室/祝日以外の月~金、10~12時および13~17時)

主力タイヤメーカーに聞く、今イチ押しのタイヤ

MAKERS' CHOICE

近年のラジアルタイヤ市場でじつに根強い人気のパイロットパワー2CT/パイロットロード2に続いて、'09年にはパワーワンを投入したミシュラン。圧倒的なグリップ力を特徴にしたこの新作は、より幅広いライダーにハイグリップの楽しさを味合わせてくれる、画期的な存在のようだ。

 

高い評価のライフ&性能を持つ定番パイロットパワー2CTと
強烈グリップを押し出した

'09年春にミシュランが発売したパワーワンは、同社にとって新ジャンルへの挑戦と言えるタイヤである。その前身と言えるのは競技使用を前提とした溝付きタイヤのパワーレースだが、パワーワンではその競技用のコンペティションと、峠道や走行会に重きを置いた標準仕様の2タイプを設定(外観の印象はほとんど同じ)。触っただけでグリップしそうな感触があり、実際、公道走行を前提としたタイヤで、ここまで強大なグリップ力と、スリックに近い過激なパターンを採用した製品は、従来のミシュランにはなかった。

「パワーワンはパワー2CTのさらに上、もっとグリップが欲しい、もっと速さが欲しいという市場の要求に応えるために生まれたタイヤです。一般公道での使用を考慮していますが、やっぱり真価を発揮できるのはサーキット走行会、海外で言うトラックデイですね。ですから私たちとしては妙な言い方ですけれど、誰にでもオススメしたいとは思ってないんです。できれば最初に(パイロット)パワー2CTを履いて、それで不足を感じてからパワーワンを試してほしい。確かにパワーワンのグリップ感や安心感は絶大なんですが、パワー2CTだって相当以上の能力を持っているんですから」(日本ミシュランタイヤ株式会社・大井さん)

そう言う背景には、トップレンジのハイグリップタイヤは乗り手にある程度以上の腕がないと使いこなせない、という事情があるのだろうか。

「いや、パワーワンではそれはありません。このタイヤには乗り手の腕をフォローしてくれる包容力がありますから、積極的に荷重をかけていけないライダーでも恩恵は十分感じられます。ただ公道でのウェット性能や耐久性を考えると、パワー2CTに軍配が上がる面があるんです」

ここまでに出てきたパワーワンとパワー2CT、そしてスポーツ&ツーリング指向のパイロットロード2には、トレッドセンターとショルダー部に異なるコンパウンドを採用する2コンパウンドテクノロジー=2CTという技術が使われている。この技術が市販展開された(レース現場での開発は'94年から始まっていた)ことで、ミシュランのラジアルタイヤはより飛躍したように思える。

「確かに2CTの採用によって飛躍を果たした面はあるんですが、逆に私たちとしては、そこだけに注目してほしくないなって気持ちもあるんですよ。コンパウンドはタイヤを構成する要素のひとつに過ぎないわけですから。例えば内部構造で言うと、ひと昔前のミシュランは剛性が高めと言われることが多かったんですが、パイロットパワーが登場したあたりからは、ベルトの太さや配置、密度などを見直して、全体としてはしなやかな方向性にシフトしています。それから、私たちの製品はグリップ力が十分ある割にライフが長いと言われることが多いんですけど、その背景にはゴムとゴムを結合するシリカに関して、独自のノウハウがあるんです。簡単に言うとシリカの使い方で発熱が抑えられるので、柔らかめのコンパウンドを使っても摩耗を抑えることができる」(同)

前述した2CTも、ミシュランは絶対とは考えていないそうだ。例えばパワー2CTでは、高グリップコンパウンドのゾーンは指1本程度の幅で、エッジグリップを追求しないライダーにとっては、価格が安いシングルコンパウンドのパイロットパワーをあえて選ぶのもアリだと言う。

「最近のラジアルタイヤは狙っているゾーンや持てる性能がオーバーラップしている部分が多いですから、選ぶのが難しくなってきていると思います。実際、パイロットロード2は走行会レベルなら十分にサーキットランを楽しめるし、パワー2CTはツーリングメインという使い方にも余裕で対応できる。だからユーザーさんには、自分が何を重視するかを考えてほしいですね。もちろん私たちのタイヤなら、いろいろな要求にきっちり応えられると思いますよ」

 

ミシュランラジアルの最高峰に位置するパワーワンは、一般公道での使用を視野に入れつつ、ワインディングロードやサーキットランでの楽しさを徹底追求。トレッドコンパウンドはパイロットパワーやパイロットパワー2CTと同様に性能の安定化が図れる100%化学合成を採用。サーキットにおける推奨空気圧はF:2.1/R:1.9kg/平方cmとかなり低めの設定(公道では車両メーカー推奨値に)

2004年にシングルコンパウンドの通常モデル、パイロットパワーがデビューし、'06年に2CT仕様を発売。毎年のように新製品が投入されるスポーツ指向のラジアルタイヤの中で、異例と言えるほどの長寿を誇っている=支持されているミシュランの定番モデル。まずは、というときのベンチマークになっている1本、との説もある。

大井章弘さん

日本ミシュランタイヤ株式会社・二輪事業部トレードマーケティング。「タイヤ選びで最も重要なのは乗り手の感性。世間の評価に惑わされるのではなく、自分にとってのさまざまな面におけるいい悪いを、実際に装着して体感してほしいですね」と

 

 

パワーワンとパイロットパワーでは重視する特性が異なるため、同じ2CT構造採用タイヤと言っても使用コンパウンドの比率や使用コンパウンドの硬さ自体も異なる。

パワーワンの断面写真。ロード仕様は前後ともポリアミドカーカス×2(写真では下の方)と0度アラミドベルトを重ね合わせた3層構造で、カーカス角度はフロント65度、リヤ75度に設定。

 

パイロットパワー2CTでハイグリップコンパウンドが使われるのは両サイドの指1本分くらい。だがこの幅がフルバンク時に絶大なエッジグリップを発揮し、これを保険とするユーザーもいる。

“ライバルがいない/作れない舞台では戦わない”というポリシーの同社が今力を入れている世界耐久選手権戦。オーストラリアヤマハ/ホンダフランスのサポートに加え、自社のパワーリサーチチーム+CBR1000RRでも参戦中。

 

MICHELIN POWER ONE/PILOT POWER 2CT サイズ表

フロント

リム径 タイヤサイズ POWER ONE PILOT POWER 2CT
17inch 120/60 ZR17 M/C (55W)TL
  120/70 ZR17 M/C (58W)TL

 

リヤ

リム径 タイヤサイズ POWER ONE PILOT POWER 2CT
17inch 160/60 ZR17 M/C (69W) TL
  180/55 ZR17 M/C (73W) TL
  190/50 ZR17 M/C (73W) TL
  190/55 ZR17 M/C (75W) TL

※POWER ONEのサーキット走行時推奨空気圧はフロント210kPa/リヤ190kPaです。

 

 

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