掲載日:2010年01月15日 特集記事 › ザ・パワーチューニング
記事提供/2009年7月1日発行 月刊ロードライダー 7月号
SOHCエンジニアリング
Photo & Text/石橋知也
1.はZ用鍛造ピストン(右)とそのブランク(左)。ブランクから切削加工し仕上げる。材料は高強度で熱膨張率が小さい4032相当材 2.はZ用でSOHC製(左。鍛造)とSTD(右)。重量も圧倒的にSOHC製が軽い 3.は'08~ハヤブサ用。SOHC製(左)もSTDも鍛造。 同ボアながらSOHC製は当然パワーとトルクが上がる。同ボアにしたのは「STDがせっかくめっきシリンダーなんだから、ボーリング+再めっきは大変でしょ」とのこと 4.5.はハヤブサの~'07(ともに左)と'08~(ともに右)。'08~はピストンピンがφ20→18mmと小径化し軽量だ
当たり前だけれど、ボアアップし、ハイコンプ=高圧縮にすればパワーアップする。あまりに単純な法則だ。問題はどんなピストンを使うか。スペシャルピストンと言ったらSOHC。そう言われるほど、渡辺啓三さんの作るピストンは効果絶大だ。
「Zとハヤブサのピストンプロフィールは同じではいけないでしょ。製法は鋳造でも鍛造でもいい、強ければ。強度が上がれば、軽くできるから。鉄で重いピストンピンとピストンリングを合わせたピストンまわり=往復運動部を軽くできれば、クランクが同じならクランクマスが増えた感じで、高回転域でも振動が小さく回りが良くなる(下もスムーズ)。V型は一概には言えませんが」
STDも最新型ほど鍛造ピストンで、ピストンピンも小径になっているのは、こういう理由なのだ。
「熱がかかる所だから、熱がかかった時の膨張率。膨れ過ぎるのは良くない。これは素材やプロフィールで解決できる。ピストンはご存知のとおり、上から見ればオーバル形状で、横から見れば下広がりのテーパー形状になってます。これは熱がかかったときに真円に近付くように、常温でわざわざ変形させているわけです。シリンダーは真円の筒ですから。で、ピストンリングを含めたピストンが、いかにシリンダーに優しく当たるか。オーバルにしてもテーパーにしてもエンジンの形式やボアによって違う。正解はない。Zとハヤブサでは違うし、ウチのでも昔のと今のとでは違う。メーカーは有限解析法などで基本を決めるけれど、結局、走ってみなきゃ分からない」
また、小さなパーツだけれども、ピストンリングの進化もピストンデザインや軽さに大きな影響があった。
「20年ぐらい前かな。ピストンリングが鋳造から鋼に変わった。これで強度が増し、リングが薄くなった。リングの自重も軽くなり、薄いからピストン上部の寸法が詰められて軽くできるようになった。薄いということはシリンダーとの当たりも有利で、フリクションも減る。同時にシール性も良くできるようになった。昔はフリクションを嫌って、3でなく2本リングを使ったでしょ、レースで。あれはリングが厚いから仕方なくで、オイル消費も多くなる。オイルが上がるってことは、ガスも吹き抜けているってことで、パワーロスでしかない」
ピストンまわりを軽量化し、フリクションロスを低減させ、同時にガスシール性を上げれば、同じボアでもパワーは十分に上げられるのだ。
「組み合わせるシリンダーはめっきが最良。パワーも出るし燃費も上がり、耐久性も抜群。鍛造ピストンとめっきシリンダーなら10万、20万kmなんて“ヘ”でもないんですよ」
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