ライダーの頬をユルくする!ヤマハのスポーツモデル
Photo/Takao ISOBE  Text/Koji SAITO (CLUBMAN)   Arrangement/Zensuke TANAKA (Virgin-Bike)

【Page4】FZ1& FAZER比較インプレ

掲載日:2009年03月02日 特集記事ヤマハのスポーツモデル    

ヤマハの“スポーツしたくなる”モデル FZ1 [spec] FZ1 FAZER [spec] 比較インプレッション 多彩なカラーバリエーション

YAMAHA FZ1

骨格は同じながら
異なるスタイルとハンドリングを持つ
2台のFZ1

キャスターやトレールなどのジオメトリーからサスペンションのセッティングまで、全く同一の車体を持つ2台のFZ1。カウル付きとネイキッドという差こそあれど、それは一卵性の双子の1人が帽子をかぶっているようなもの。実際、スペックで見ても重量が6kg異なるだけだ。しかし跨った瞬間からこの2台は全く別のフィーリングをライダーに見せる。FZ1は排気量を感じさせない軽快感を放ち、FAZERは常にリッターバイクらしい安定感を保っている。それらはデザイン以上に個性が与えられているように感じるのだ。

 

クラブマン編集スタッフの齋藤と小平が、3つのステージで2台の比較インプレッションを行った。はたして2人の印象は…?

シチュエーション別比較インプレッション

ひらりと曲るFZ1としっとり曲るFAZER

【峠】ひらりと曲るFZ1としっとり曲るFAZERハンドリングの差がもっとも明確にでたのが峠。FZ1はハンドルを近くに感じ、メーター以外が視界に入らずフロントタイヤに直結したような感覚で、車体の大きさを感じさせずにフラッと倒れ込むかのようにバンキングし、クルッと曲る。リッターバイクとしては非常に軽快だが、フロントの接地感はFAZERと比べて少なめで、路面状況によっては不安を感じることもある。対してFAZERはフロントカウルが大きく、常に視界に入る為、バイクの中心で操作している感覚だ。倒し込みと舵角のツキのテンポが同調しており、ややゆったりしたモーションながら高い接地感を維持したまま曲っていく。スポーツ性の高いFZ1に比べて鈍いアクションだが安心感は高い。これらの傾向は速度レンジが低いほどはっきり現れ、切り返しではその差が明らかになる。

風を感じながらも疲れないFAZERの防風性が光る

【高速】風を感じながらも疲れない、FAZERの防風性が光るカウル付きのFAZERとネイキッドのFZ1。乗る前は防風効果で大差が付くと予想していたのだが、法定速度で巡航する限りでは、予想より差が少なかった。どちらも体に風圧を感じる。FAZERはカウル付きのスポーツモデルとしてはスクリーンが小さく、体全体を風圧から防ぐようには設計されていない。ヘルメットやグローブ越しに感じる風はFZ1と大きく変わらないのだ。しかし長時間巡航を続けると、主張はせずに、じつは仕事をしているスクリーンの存在に気付く。顎下から胴体の部分の風圧を軽減しており、距離を走るほど腹筋や腕の疲労が少ない。その効果は高速コーナーでも現れる。FZ1では体が風圧に押され続けながらのコーナーになり、意識して上体を被せないと安定しないが、FAZERではリラックスしたポジションでクリアできるのだ。

ネイキッドのFZ1はクラスを超えた扱い易さ

【街乗り】ネイキッドのFZ1はクラスを超えた扱い易さどちらもリッターバイクとして軽量な車体とアップライトなポジションで、さらも切れ角の多いハンドルのため、街乗りは得意なシチュエーションだ。しかし2台のフィーリングはやはり異なる。FAZERはハンドルの遙か前方に幅が広いカウルマウントのバックミラーを採用しているので、実際の全幅では差の無いFZ1より大きな車両に感じる。対して、ハンドルマウントのミラーを持つFZ1では、ハンドルより前にあるのはコンパクトなスピードメーターだけだ。視界に入る車体のボリュームは非常に少なく、それはリッタークラスを超えて、原付スクーターレベル。アクセルを開け易いエンジンキャラクターもあり、裏道や渋滞路など通常リッタークラスのバイクが苦手とする場面でこそ水を得た魚のように走る。

FZ1を選んだコダイラ

思い切りスポーツする。楽しさを実感できる本質的には同じバイクであるはずの2台を乗り比べてみると、まったく異なる操縦性を持っていることに気づく。落ち着いた動きで、どちらかというとツアラー的なFAZERに対し、FZ1は徹底してスポーツバイク的な性格なのだ。また安定感がベースにあるFAZERとは対照的に、カウルを持たないFZ1は250ccクラスのような軽快さ。街中では、その軽さが扱いやすさとして現れるが、ワインディングでスピード域を上げていくと、違った一面が現れる。軽快な動きの素になっていたフロント回りが、乗り手にしっかりコントロールすることを求めてくるのだ。あいまいな操作を拒絶するような動きに最初は面食らうのだが、コーナーを曲がるたびに前後左右に積極的に体を使って操ると、その分FZ1は、しっかりライダーの操作に応えてくる。そういうマシンと対話することの楽しさを感じ始めたら、もうこのマシンの虜になったも同然だ。人によって好みが分かれる部分だと思うが、2台のうちどちらを選ぶか聞かれたら、僕は絶対にFZ1だ。

FAZERを選んだサイトー

走行シーンに左右されない、安定感が魅力コントロール性の良いエンジンとしなやかな車体。一般道を走るバイクとして非常に高いバランスで構成されている2台だが、どちらを選ぶか?と聞かれればFAZERになる。街乗りから高速走行、峠でスポーツを楽しんでいる時。どの環境でも常に安心感はこちらが勝っている。反対に、ライダーをその気にさせるスポーツ性という面ではFZ1のキャラクターにも未練が残る。峠をカリカリに攻めたり、ストリートでの走りなどシチュエーションを絞るならFZ1になっていたと思う。ただ、これだけ日本の道にあった特性を持つバイクならば、ロングツーリングにも使いたくなるだろう。高速道路でイッキに遠方へ行き、ワインディングで存分にスポーツ性を楽しむ。美味い飯をたらふく食べ、温泉に入った後、また高速道路で家路に向かう。そんな休日の過ごし方を想像したとき、疲労の少ないFAZERを選びたくなるのだ。カラーリングに関しては、個人的には地味系のFAZERよりFZ1のホワイトのようなレーシーなデザインが好き。もうちょっと派手なら良いのに、と思っていたが、FAZER用のオプション外装のストロボカラーのイエロー/ブラックを見て、すっかりやられてしまった。実はこれが一番大きな要素なのかもしれない。

ヤマハの“スポーツしたくなる”モデル FZ1 [spec] FZ1 FAZER [spec] 比較インプレッション 多彩なカラーバリエーション

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