【スズキ Vストローム800DE 試乗記】スズキの真面目さが光る優等生アドベンチャー

掲載日:2023年05月13日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

【スズキ Vストローム800DE 試乗記】スズキの真面目さが光る優等生アドベンチャー メイン画像

SUZUKI V-STROM 800DE

多くのファンが期待する中、完全なるブランニューモデルとして登場したVストローム800DE。上位モデルに引けを取らない装備や、日本の道にはベターなサイズ感で纏められたアドベンチャーモデルだ。

新エンジンを搭載。Vストファミリーで
もっともオフロード色が濃い仕様

Vストローム1050(旧1000)、Vストローム650、Vストローム250に続き、今春登場した新たなファミリーモデル『Vストローム800DE』。新設計のスチールフレームに、完全新設計となる排気量775cc並列2気筒エンジンを搭載したブランニューアドベンチャーモデルである。

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アドベンチャーセグメントは世界的に見ても需要が高く推移しており、特に700~1000cc以下の排気量で抑えた、いわゆるミドルクラスは中核を担っていると言える。求められるのは扱いやすさ、軽さ、快適さ、オフロード走破性の高さ、これに尽きる。Vストロームファミリーには650と1050が存在しているのに、なぜ新たにVストローム800DEというモデルを開発しマーケットに導入したのか。そして秘めたる実力、魅力はどのような部分から感じ取れるのだろうか。登場間もないVストローム800DEに触れて探っていきたいと思う。

スズキ Vストローム800DE 特徴

伝説とされているあの怪鳥の
復刻版的な立ち位置なのだろうか

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Vストローム800DEの登場を耳にした時、頭に浮かんだのはタンクからフロントに掛けて繋げられたクチバシのようなフェンダーから怪鳥の愛称で親しまれたDR-BIG(DR800S)だった。わりとコンパクトにまとめられた車体に油冷のビッグシングルエンジンを搭載したそれは”デザートエキスプレス”の異名を持ち今回の”DE”というイニシャルに通じているものなのかと連想してしまったのだが、名称につく”800”という点こそ共通なものの、まったくの別物と言えるパッケージとなっていた。

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まずエンジンからVストローム800DEを見てみると、新開発の水冷776cc並列2気筒とされている。スズキクロスバランサーと呼ばれる2軸1次バランサーを採用し、270度クランクの鼓動感と粘り強いトラクションを持たせながらも振動を軽減している。

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車格に関しても、Vストローム650がコンパクトなシャシーとされていたのに対し、Vストローム1050と並べて置いても、遜色ないほどの大柄なボディワークを採用。前後にフルアジャスタブルサスペンションを搭載した足まわりに、トラクションコントロールをはじめとした車体制御を行うスズキインテリジェントライドシステムも搭載され、多くのライダーがオン/オフ道を選ばずに突き進むことができる設定とされている。

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これまでVストローム1050もVストローム650も触れたことがあったのだが、その中間となる部分に新たに用意されたVストローム800DEに大変興味を持っていた。今回はVストロームファミリーでの立ち位置、そしてキャラクターという点も注視してテストをしていきたい。

スズキ Vストローム800DE 試乗インプレッション

上位モデルと比較した上で、
Vストローム800DEを選ぶ意味がある

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今年のモーターサイクルショーの会場で実車を見ていたが、改めて目の前にするVストローム800DEは想像以上に大きい。今回はVストロームファミリーの長兄であり、それもまた新型であるVストローム1050DEのテストライドも並行して行っていたのだが、若干車格は小さいものの、Vストローム800DEはかなり大柄なのである。

855mmのシートに跨りスズキ車でおなじみとなったワンプッシュスタートでエンジンを始動する。新型エンジンはツインのパルス感をしっかりとライダーに伝えながらも、落ち着いた音色を響かせている。ミッションを1速に入れて走り出す。スズキの並列2気筒エンジンで初となる270度位相クランクエンジンは、ドッドッドッとしっかりしたトラクションを得られる上に、不快な振動を感じさせない。滑らかスムーズでありながらも、奥にゴリっとした感触も持たせている。これは良いエンジンだ。Vストローム800DEと同時発表となったGSX-8Sにも同じエンジンが搭載されており、そちらはスポーツネイキッドモデルであるが、きっとそれとも相性が良いと思える。

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ライディングモードはA(アクティブ)、B(ベーシック)、C(コンフォート)の3パターンがプリセットされており、それぞれスロットルワークに対する特性の違いなどを探りながら、市街地から高速へとステージを変えて走ってゆく。走行時にはクラッチを操作せずにシフトアップ/ダウンの双方向を行えるクイックシフトを装備していること、アップライトなポジションで視界が広いことなどから、快適なクルージングを楽しむことができる。

高速道路では6速トップ、4000回転で時速90キロ+αの速度域。トルクのあるエンジンはその上の回転域へもすんなりと持ち上げてくれるので、自分が心地よいと感じる速度で走らせることができる。これならばストレスのないロングツーリングを楽しむことができるだろう。

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フロント21、リア17インチというタイヤサイズは、オフロードも楽しめるストリートモデルの鉄板的セットとなっているが、オフロードを本格的に楽しむようなフリークであるとリアタイヤに18インチを求めてくるのかもしれない。Vストローム800DEを手にする人の多くはオンロード走行を主体とし、道中に林道などがあれば入ってゆくという使い方がほとんどであろうから、F21/R17の組み合わせはベターだと言えるだろう。

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それに加えフロント21インチタイヤというのは、若干癖のあるハンドリングをもたらすことが多いのだが、Vストローム800DEではサスペンションの動きが舗装路にもマッチしていることもあり、違和感なくフロントタイヤが寝てくれる。これはオンロード主体で使用するユーザーにも支持されるはずだ。

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未舗装路に持ち込んでみる。トラクションコントロールに新たに追加されたG(グラベル)モードは、若干のスリップを許容しつつ、前へと車体を押し出すようにする美味しい介入を見せてくれる。これにより、オフロードスキルをあまり持ち合わせないライダーであっても、オフロード走行の楽しさを感じ取ることができるだろう。

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メーターなど上位モデルと共通のものが採用されているために見劣りせず、コンパクトかつ軽量なので、オンロード、オフロードのどちらも快走を楽しむことができる。ツーリングにおいてほとんどを高速道路を使うようなスケジューリングや、未舗装路は皆無に等しいような使い方、さらにはスキルに自信があり、大柄な車体を振り回すことに喜びを感じるようであればVストローム1050DE、オン/オフどちらも同じように走りを楽しみたいというのであればVストローム800DEを選ぶと良いだろう。新車価格では約35万円の差があることも考えると……、Vストローム800DE、ヒットの予感がするモデルである。

スズキ Vストローム800DE 詳細写真

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新開発の水冷775ccDOHC並列2気筒エンジンを搭載。ボア×ストロークは84×70mmのショートストロークタイプ。スズキの並列2気筒エンジンとしては初の270度位相クランクを採用している。

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90/90-21サイズのフロントタイヤ。ブレーキはABS付きダブルディスクを採用し、制動性能、タッチともに良い。フロントフォークのボトム部分には圧側ダンピングアジャスターが備わっている。ストローク量は220mm。

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リアタイヤサイズは150/70R17。なお、標準仕様タイヤはダンロップの『TRAILMAX MIXTOUR』で、前後ともにチューブタイヤとなっている。ホイールベースは1570mmで、Vストローム1050系より25mm短い。

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Vストロームファミリーの意匠をしっかりと受け継ぐことを感じさせながらも、縦に2灯レイアウトすることで、個性も演出しているフェイスマスク。ウインドスクリーンは上下3段に高さ調節が可能となっている。

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ステップ位置は低めでシートの真下に位置しており、スタンディングポジションも取りやすい。シフトアップ/ダウン双方向で作動するシフトアシストシステムも標準で装備している。

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シート高は855mmと決して低いとは言えない数値ではあるが、前方に掛けてシェイプするなど上手く立体裁断されており、スペック程足つき性は悪くない印象(とはいえやはり高い!)。シッティングでの長時間乗車は快適。

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5インチカラーTFT液晶ディスプレイを採用。速度や回転数はもちろん、ライディングモードやトラクションコントロールの状態なども一目でライダーに伝わる。なおVストローム1050系と同じタイプ。

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サスペンションは前後ともにフルアジャスタブルタイプが採用されており、フロントフォークのトップには伸び側ダンピングアジャスターが備わっている。自分好みのセッティングを見つければ、オン/オフさらに楽しめるだろう。

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車体後端に埋め込まれたテールライト、その下部から伸びるフェンダー兼ライセンスプレートホルダーにウインカーが装備される。すべてLEDランプとなっている。

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リアサスペンションはリンクを介してスイングアームにセットされている。最低地上高は220mm、トラベル量は212mmと余裕を持った数値となっている。

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バックミラーは大きく、後方の視認性が高い。ナックルカバーやアンダーカバーを標準で装備しており、オフロードライドへと誘う。スイッチ類の操作も直感的に使うことができ良い。

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シート下にはバッテリーや電装系などがメインに収められている。タンデムシート下には多少のユーティリティスペースも確保されている。

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Vストローム800DEは各パネルの折やフィニッシュの仕方、カラーリングなど、デザイン性の高さにも注目されている。なお燃料タンク容量は20リットルとなっている。

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