KTM 2014年モトクロスモデル(SXシリーズ)
KTM 2014年モトクロスモデル(SXシリーズ)

KTM 2014年モトクロスモデル(SXシリーズ)

掲載日:2013年08月09日 試乗インプレ・レビュー    

取材・写真・文/三上 勝久、ダートライド編集部  写真・取材協力/KTM ジャパン

身長156cmのダートライド編集部が乗ったKTMインプレッション

KTM 2014年モトクロスモデル(SXシリーズ)の画像

ぼくはイタリア・サルディーニャ島での試乗会ではなく、日本の長野県にあるワイルドクロスパーク GAIAで2014年のKTMマシンたちに乗りました。ラインアップは85 SXと250 SX-F、それに350 SX-Fで、会場のモトクロスコースのみを走りました。450はぼくの体格(身長156cm、体重50kg)とスキルでは扱い切れない、という判断で省いています。モトクロスレーサーには普段は専らミニモトサイズに乗り、フルサイズの経験はそれほどありません。また、KTMに乗った事は、過去に1度だけ250 SX-Fがあります(半日程度)。この日のコンディションは、山あいにあるコースなので乾いた薄いサンド路面の下は適度に湿っていて、また山林を抜けるセクションは日陰なのでそれなりに湿っていました。午後からは雨が降ったり止んだりを繰り返し、埃があまり立たない程度の湿り気となり、概ね良好なコンディションでした。

今回、1番興味があったのはメジャーなモトクロスレーサーの中では唯一の存在である、中間排気量マシンの350 SX-Fです。250cc並のコンパクトさと軽量さを持ちながら、パワーは450ccに匹敵する、いいとこ取りのマシンと言われています。デビューから1度も乗った事がありませんが、レースの現場ではFIMモトクロス世界選手権でMX1に出走するファクトリーライダーがこのマシンを駆って、他メーカーの450ccを凌ぐ成績を残しているので、KTMが狙ったメリットは存分に活かされているようです。

毎週末モトクロスの練習をしているわけではないですし、GAIAは初めて走るコースだったので、試乗は乗り易い85 SXを一発目にチョイスしてコースレイアウトを憶えたり路面の特質を読み取りました。まだ身体に硬さが残る午前のランで、350 SX-F、250 SX-Fの順番でフルサイズにも乗りましたが、まずホビーライダーには85 SXのリンクレス機構とそれ以外のモデルのリンク機構の特性の差は感じ取れませんでした。プロのコメントだとモトクロスでは明らかにリンク機構にメリットがあるようですが、85 SXはそれよりももの凄く良く走るバイクで、驚くというよりかはビビリました。KTMジャパンでは出力を公表していませんが、アクセルの一捻りで凄まじい勢いで車体が前に進もうとします。この排気量とモトクロスレーサーの味付けがされた2ストロークマシンは、アクセルを開けないとプラグが被りがちになるしパワーバンドの美味しいところを捉えられないので、ゆっくり走る事は到底出来ず、いけない乗り方なのですがマシンに必死でしがみつく事になりました。ホイールベースが短いので車両のセンタースポットはもの凄く狭く、マシンに置いていかれないようにするには相当な前後バランスが要求され、「バイクの中心に乗る」という基礎練習にはうってつけです。

少し慣れてくると軽い車重のお陰で(約68kg)、バイクに振り回されている感や慣性の無駄が発生せず、とても扱い易くなって来ました。とはいってもフルパワーを発揮出来た訳ではなく、まだまだ習熟が必要な己のレベルを痛感させられました。車格はホビーレーサーかもしれませんが、パワー特質はスキル向上育成装置のような1台です。

KTM 2014年モトクロスモデル(SXシリーズ)の画像

続いて乗った期待の350 SX-Fは、後で250 SX-Fに乗らないとその差や特質が分からず、はじめのライドはただコース周回するだけ、という感じでした。250も体験した後で分かったのは、確かにエンジンパワーに余裕がある、という事です。250だといくらトルクフルな4ストロークでもアクセル操作によるエンジンの加減速は明らかで、特に登り斜面ではきっちりクラッチ操作とアクセルを合わせていかないとジャンプ攻略はやや難しいです。ガパッと開けて路面を勢い良く蹴ってくれるわけではありません。350はこの神経質さがなく、全体的に下(トルク)が増して、パワーを要求されるシチュエーションで少しぐらいラフなアクセルワークでクラッチを使わなくても、エンジンが咳き込む事なく車体を前に進めてくれます。また、全域で安定したパワー感があるため、2ストローク85ccのような「常に攻め」でなくファンライド的にゆったりとコースを走る事が出来ます。個人的にGAIAはコンパクトなコースだと感じたので、例えばスポーツランドSUGOなどではさらに特質を発揮させる事が出来るように感じました。

ただ、これは250 SX-Fでも起きた現象ですが、コーナーの進入で勢いよくリアブレーキを踏んで後輪をロックさせると頻繁にエンストしました。250はこの日のセッティングでやや起きやすい傾向ではあったそうですが、そもそもKTMのモトクロス4ストロークは全般的に圧縮比が高く、この症状が起きやすいという事です。また、欧州車は一般的にブレーキの効きが非常に良く、国産車と同じ感覚でブレーキを掛けると効き過ぎて、余計に今回のような症状が起きるそうです。国産レーサーから乗り替えると、異なる乗り方に慣れる必要は感じました。

また、250と350で抱いた印象ですが、やはりぼくの体格だとフルサイズ・マシンはややアンマッチと言えるかもしれません。パワーが、とかではなく、どうしても車体が身体比で大きくなり、成人馬に子供が乗っているに近い見た目とライディングの違和感を起こします。当日はプロライダーもテスト走行をしてくれたので自分が乗って写っている写真と見比べてみると、フルサイズはミニモトとは違う身体の使い方が要求される事が分かります。ぼくの乗り方が悪い意味でコンパクトで、身体が小さいので余計に大きく身体を動かしてライディングする必要があります。フルサイズを上手くモトクロスコースで走らせるには、バイクを身体の下で自由に操れるスキルが要求され、性能以前にそういった技量を磨かなければ、と思いました。

ちなみに、KTMのモトクロスレーサーは50 SXを除くすべてのマシンに油圧クラッチが装備され、また4ストローク車にはセルスターターが搭載されているため、操作性やコース上での再始動性は非装備車両に比べ、圧倒的なアドバンテージがあります。価格は高くなりますが、その恩恵は充分にある事を最後に述べておきたいと思います。KTMモトクロスレーサーは、「勝つ」だけでなく「遊ぶ」にも最適な1台でした。(ダートライド編集部)

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