カブ生活

第三十六回「花」

掲載日:2015年05月08日 原付漫遊記松本よしえのゆるカブdays    

え・文・写真/松本よしえ

長野県までキャンプに出かけました。花の香りに誘われて、ついふらふら寄り道してばかり。

4月の後半、キャンプに出かけました。今回はわたしも運営に携わるHUB倶楽部のイベントに参加するためです。キャンプサイトにおでんの屋台を設えて楽しもうという趣向で、会場は長野県南部にあるキャンプ場。羽カブで現地へ向かうため、東京から国道20号を西へひたすら走りました。途中、八王子から相模湖へ抜ける大垂水峠は125cc以下のバイクが通行できない規制(土・日・祝日)なので津久井湖方面へ迂回します。余談ですが、この通行規制はかつての暴走族対策の遺物だと知られています。いまだに規制が続いているのには意味があるのかなぁ。不便を感じる方は多いはずなのでぜひ見直してほしいです。

さて、東京を未明に出発すれば国道20号は快調に流れ、郊外の沿道には遅咲きの桜がちらほらと目につきます。都内はすでに葉桜でしたが、津久井湖や相模湖周辺では気温差もあってか桜の花がぼんぼりみたいに咲きほころんだところ。カブで下道を走ったおかげで二度目の桜を楽しむことができました。さらに里と峠を上り下りして甲府方面へと進むと、黄色い菜の花や真っ白なコブシ、緋色のモクレンなど、さまざまな花に出合い、春が豊かに膨らんでいくのを感じました。この日、予定ではまっすぐにキャンプ場へ向かうつもりでしたが、ふと閃いて道の駅へ寄り道することに。

国道20号を西へ向かうと、長野県へ入って一番初めにあるのが「道の駅 信州蔦木宿」(長野県諏訪郡富士見町)です。こちらは食事処や農産物の直売所はもちろん、「つたの湯」というご機嫌な天然温泉もあって人気の高い道の駅です。わたしもかなりの頻度でお世話になっているのですが、駐車場から傍らを流れる釜無川の河原へ降りると、堤が桜並木になっているのを思い出したのです。じつはこのとき、「もしかしたら桜が咲いているかなぁ」くらいの淡い期待でしたが、なんと桜は満開で風が吹くたびに花びらが降り注ぐように散っている最中。口をぽかーんと開けていたら、花びらを食べちゃうような花吹雪でした。

その後、慌ててカブを降りて撮影したのが一枚目の写真です。曇り空が背景なのでぼんやりした写真になってしまいました。よく見れば花吹雪がわかるでしょうか。二枚目は堤の先の河原に咲く白い一本桜です。この木はおそらく桜の一種だと思うのですが、詳細がわかりません。花と一緒に若葉も芽吹いているのが美しいです。花自体はちょっとズミ(小梨)にも似た風貌でしょうか。堤に並ぶ桜並木よりも少し遅咲きで、強風に晒されつつも散らないのが健気でした。

ところで写真を撮りながらぼーっとしていたら、あっという間に小一時間。先を急いでいたので慌てて走り出しましたが、こんな絶好の桜の旬に遭遇するのは稀なことです。カブのおかげで桜と出合え、この春一番のうれしい出来事になりました。

「道の駅 信州蔦木宿」の駐車場から河原へ降りる堤ぞいにある桜並木。花が終われば新緑が涼しげな木陰をつくってくれます。

河原に咲く一本桜の白い花。道の駅で樹名を聞こうか迷ったけれど敢えて聞きませんでした。思い出の引き出しに仕舞うときは「ゆるゆる」したままのほうが味わい深いこともあります。

厳密には一本桜ではありません。数本が寄り添っています。写真を撮っていたら、通りがかりの方にカブのショートバイザーを褒めていただきました。これは 第三十二回 にも描いたとおり、ヘルメットのバブルシールドを流用したもの。

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