【ヤマハ YZF-R125 試乗記】フルカウルスポーツのエントリーモデルとして好適

掲載日:2023年12月21日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/小松 男

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YAMAHA YZF-R125

MotoGPやWSBKなど世界最高峰のロードレース選手権において第一線で活躍しているヤマハ。そのDNAを受け継ぐ市販フルカウルスポーツモデルのYZF-Rシリーズに、新たにYZF-R125が加わった。

上位モデルに見劣りせず
走りもカッチリ、これはアリだ!

欧州での展示会や国内のモータサイクルショーに出展されてから、日本でのデリバリーが期待されていたYZF-R125/15、MT-125、XSR125のヤマハ125モデル群が満を持して登場した。昨今加熱の一途を見せるワンツーファイブマーケットにおいてヤマハの存在感を一気に引き上げるこれらのモデルの中から、今回はフルカウルスポーツであるYZF-R125をピックアップし紹介する。フラッグシップスーパーバイクであるYZF-R1直系であり、YZFシリーズの末弟として加わったニューモデルの完成度はいかがなものだろうか。

ヤマハ YZF-R125 特徴

TZR125の再来か?
それともファッションバイクか!?

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今回YZF-R125に触れる機会となったのは、ヤマハが先だって国内販売を開始した125シリーズのメディア向け一気乗り試乗会を開催したからだ。場所は茂原ツインサーキット、コースこそコンパクトではあるが、クローズドコースで出来栄えを存分に楽しんでもらいたいという計らいが伺える。さらにこの日とは別日、別場所において発表会も行ったのだから、125シリーズに掛ける意気込みが伝わってくるというものだ。

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走行前のブリーフィングにおいて行われたヤマハスタッフからの説明では、学生や新社会人など若年層がターゲットカスタマーであること、YZF-R25やMT-25などの250ccクラスはエントリーモデルには違いないが、車両価格の他に免許取得費用や装具などを合わせると100万円近くの金額となってしまいハードルが高くなってしまっていることなどが話された。

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今から30年程前、16歳になった私は中型二輪免許を取得して最初に購入したバイクが、ヤマハのTZR125だった。原付一種だと上限速度30キロや二段階右折などがあり、126cc以上のクラスとなると任意保険をはじめとした維持費が嵩むという親兄弟からの助言でワンツーファイブにしたのだが、またその時選んだのがTZR125というのが良かったのだろう。レプリカブームはほぼ終焉を遂げていたものの、まだまだ走り屋は多く、私の行動範囲内に有名なワインディングロードがあったために基本的な車両コントロールを身につけることができたことや、シンプルな構造でメカ的にも勉強できるモデルであり、マフラー交換やバックステップ装着など外観上のカスタムを楽しむだけでなく、フォークオイルやクーラント交換、さらにエンジンの腰上を開けてピストンリング交換なども自身で行った。

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つまり私はワンツーファイブはライダー人生を始めるにあたり、本当に適しているのだと言いたいわけだ。そして昨今ワンツーファイブクラスがにわかにブームとなっており、今回のYZF-R125にも大変注目していたのである。

ヤマハ YZF-R125 試乗インプレッション

完成度が高く、これならば
ワインディング下り最強となれる

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フルカウルスポーツモデルであり、前後17インチタイヤを採用したいわゆるフルサイズと呼ばれるYZF-R125は、250ccクラスのモデルと比べても見劣りすることはない立派な体躯を持っている。YZF-Rシリーズ直系のモデルであることがしっかりと伝わってくるフロントマスクや、ゴールドでアルマイト処理されたフロント倒立フォークなど質感も良い。

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シート高は815mmで、今回時を同じくして登場したMT-125やXSR125と比べて5mm高く、兄弟モデルとなるYZF-R25より35mmも高い。だが、車重が141キロととても軽量であることと、シングルエンジンならではのスリムなボディラインのために、足つきや取り回しなどが気になることはない。

セルボタンを押すと124cc水冷SOHCシングルエンジンはいとも簡単に目を覚ます。クラッチレバーを握りミッションを1速に入れて走り出す。最高出力の15馬力は10000回転で、最大トルク12Nmは8000回転で発生させる高回転型のエンジン特性ではあるものの、低回転域からしっかりとしたトルクがあるために扱いやすい。2ストエンジンだったTZR125は低回転でのパワーがスカスカで、しかも半クラッチの幅が狭く、発進に苦労したという半世紀以上前のことを思い出し、「これならば誰でも楽しめる」とヘルメットの中で苦笑いをしてしまった。

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YZF-R125の前にMT-125に乗っていたのだが、クローズドコースを使ったスポーツライディングという面では、間違いなくYZF-R125の方が適していた。速度こそさほど出せないコースレイアウトであるものの、やはりクリップオンハンドルによる前傾姿勢はフロントタイヤの状況を察知しやすくコーナー進入時のラインをトレースしやすい。

軽量な車体もスポーツライディングにおいて大きなメリットであり、細めのタイヤと相まって、ヒラヒラと舞い降りる羽のごとく軽快な走りをもたらしてくれる。それでいながらも、剛性の高いシャシーや良く動く足まわりのおかげで、ワンランク上のクラスのバイクに乗っているかの印象も受ける。

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大排気量スポーツモデルのインプレションで鉈(なた)のようだとか、日本刀のようなどと形容することがあるが、その線で言うならばYZF-R125は肥後守やボンナイフといった感じだ。細かい工作からハンティング、さらに調理まで何にでも使うことができる道具としての原点だ。

アシスト&スリッパ―クラッチやABS、トラクションコントロール、さらにYZF-R125ではクイックシフターのオプション用意までされているが、それら安全・快適装備はワンツーファイブクラスには、あまり必要がないものだと個人的には思っており、むしろスポーツライディングの楽しさを、限られたパワーと低いスピード域で体感できることこそがワンツーファイブの醍醐味だ。

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だから51万7000円、税抜きだと47万円という車両本体価格は最初こそ、この仕上がりならば安いか! と思ったものの、よくよく考えてみると、不要と思える装備をそぎ落としてでももう少し価格を抑えることはできなかったのだろうか、などと旧時代のライダー的には感じてしまった。大卒の平均初任給が直近5年の間に2万円引き上がるという時代なので当たり前のことなのかもしれないが……。

何にせよ、ワンツーファイブクラスでYZF-R125のような完成度の高いモデルが出され、ヤングライダーがツーリングや日常の足だけでなく、デートやメンテナンスなども楽しんでもらえると嬉しいものである。

ヤマハ YZF-R125 詳細写真

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低中回転域と高回転域で、それぞれ適した形状のカムを使用するVVA(可変バルブ)機構を備える124cc水冷SOHCシングルエンジンを搭載。環境性能も高く、約50km/1Lという(WMTCモード値)低燃費も実現している。

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インナーチューブ径φ37mmの倒立式フロントフォークに、100/80-17サイズのタイヤをセット。ブレーキキャリパーはブレンボの小排気量モデル向けラインであるバイブレ製。ワンツーファイブクラスとしては贅沢な仕様だ。

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YZF-Rファミリーだとひと目でわかるM字ダクトを用いたフェイスマスク。ラインチューブタイプのLEDデイライトをサイドに備えるほか、LEDヘッドライトは単体でハイ・ローを切り替えられる技術により、コンパクトで特徴的なデザインを実現。

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シートは815mmとスペックシートでは高めの数値であるものの、両側が深く切り落とされたシャープな形状であることと、スリムな車体であるために、足つき性は気にならないだろう。強度と剛性のバランスを取ったシートレールを採用している。

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視認性の良いマルチファンクションLCDメーターを採用。シフトアップタイミングランプ他、各種インジケーターを備えている。なお、メーターの表示は、ストリートモードとトラックモードの2パターンから選ぶことができる。

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クリップオンハンドル(セパレートハンドル)は、比較的垂れ角が強めで、戦闘的なライディングポジションをもたらす。スイッチ類は必要最低限を用意。ブラックアウトされたレバーや肉抜き加工されたトップブリッジなど、スポーティなディテールとなっている。

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ステップバーは後方高い位置にセットされている。YZF-R125にはクイックシフターのオプション設定も用意された。確認したところベースプレートの取り付け位置が、MT-125と共通のようなので、スワップできるかもしれない。

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軽量なアルミ素材を用いた湾曲タイプのスイングアームを採用。リアタイヤは140/70-17サイズで、クラスを考えるとやや太めの設定。サイレンサーは車体後方に向かい跳ね上がるデザインとなっている。

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ワンツーファイブクラスは高速道路こそ利用することができないが、タンデムライドを楽しむことができるのは大きなメリットだ。YZF-R125ではサーキット走行なども想定してタンデムステップの脱着を可能としている。

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YZF-Rファミリーのレーシーな意匠を受け継ぐリアセクションデザイン。テールカウルは優れた空力特性をもたらすほか、ファミリーのアイデンティティとも言えるバーチカルなレイアウトのLEDテールランプを採用している。

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リアサスペンションはモノショックでリンクを介してスイングアームにセットされている。動きが良く、リアタイヤのインフォメーションもしっかりと伝わってくるので、安心してスポーツライディングを楽しむことができる。

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デザインや立体エンブレムなど総じて質感の高い燃料タンク。容量は11リットルとなっている。なおボディカラーは、写真のディープパープリッシュブルーメタリックC、ブラックメタリック12、ダークブルーイッシュグレーメタリック9の3色展開。

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タンデムシートを外すと、最低限の車載工具が用意されているほか、書類スペース程度の空間が設けられれている。オプションでシングルシートカバーの設定もあるので、ソロユースがメインならば付け替えても良いだろう。

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