掲載日:2023年09月07日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/増谷 茂樹
Peugeot TWEET 125 GT
4輪車のイメージが強いプジョーブランドだが、1898年のパリ・モーターショーで初の2輪車を発表するなど、バイクブランドとしても世界最古の歴史を持つ。125周年の節目に当たる今年、ニュージェネレーションラインと呼ばれるモデルをリリース。その中の1台が今回取り上げるTWEET 125 GTだ。同名のモデルは2018年にも限定発売されていたが、今回の新モデルでは外観を一新し、4輪車で用いられているブランドのアイコンである「ライオンズクロー(ライオンのかぎ爪)」を採用。車体のシルエットも直線基調のデザインとなり、カラーリングは4輪で人気のグラファイトグレーとされるなど、ブランドのDNAを色濃く感じさせるものとなった。
125ccクラスのスクーターというと、国産ブランドでは12インチ前後のホイールを採用したコンパクトなモデルのイメージが強いが、TWEET 125 GTは前後16インチのホイールを採用。石畳の路面が残る欧州製スクーターでは多いホイール径だ。シート高は790mmと高めで、足を置くステップボードの部分がフラットになっているのもヨーロッパ的な装備といえる。エンジンは125ccの空冷4ストローク単気筒SOHC。最高出力は8.4kW(約11.4PS)/8,500rpmで、最大トルクは10.3Nm/6,500rpmとなっている。
同一の車体で170ccのエンジンを搭載したTWEET 200 GTというモデルもラインナップしていることもあり、車体サイズは原付二種クラスとしては大きめ。ホイールベースも1,330mmと長めの設計だ。フロントには「ライオンズクロー」デザインのデイタイムランニングライトがあしらわれ、リアのLEDテールライトにも同様の意匠が採用されている。
TWEET 200 GTと共有される車体は、同クラスの国産スクーターと比べるとやはり大柄。シート高も高めだが、車体が意外とスリムなので足付き性は数字から想像するほど悪くない。車重が106kgと軽量なこともあって、小柄なライダーでも不安なく支えられるだろう。フラットなステップボードに足を揃えて置くライディングポジションで、ライダーの足が長く見えるのも欧州製スクーターらしいところだ。
11.4PSという最高出力は、このクラスのベストセラーモデルであるホンダPCXの12.5PSにこそ劣るものの、同じくホンダのリード125(11PS)とは同等。スズキのアドレス125などの8.7PSと比べると2PS以上上回っている。ちなみに車重はPCXが133kg、リード125は116kg、アドレス125は105kgなので、パワーウェイトレシオで見るとTWEET 125 GTはこの4車種の中で最も優秀な数値となる。
国産の125ccスクーターは出だしの加速に優れているというイメージを持っている人が多いだろう。そういったモデルをイメージしていると、TWEET 125 GTの発進加速には一瞬拍子抜けするかもしれない。アクセル開け始めの加速は9.29kgというパワーウェイトレシオから想像するより穏やかだ。しかし、エンジンの回転が上昇していくに従って胸のすくような加速感が味わえる。かつて、このクラスを席巻した2ストロークエンジンを搭載したスクーターを思い起こさせるような加速感だ。
ハンドリングは16インチの大径ホイールと長めのホイールベースから想像していた通り、スピードの乗るコーナーでも安定感がある。12インチなどの小径ホイールを採用する国産モデルと比べるとクイックさはないが、タイヤが前後とも110/70-16と細めのため倒し込みの操作は軽く、軽快感で劣る印象はない。路面が荒れているカーブや、段差を乗り越えるシーンでは、この大径ホイールならではの安定感がライダーの安心につながるだろう。
欧州生まれらしい個性的なルックスとハンドリングを備え、中回転域以上での伸びのある加速が味わえるTWEET 125 GT。価格は39万500円と、国産のライバルに比べるとやや高めだが、パワフルなエンジンと安定感のある足回り、日々の通勤だけでなく週末のツーリングにも出かけたくなる完成度を考えればリーズナブルに思えてくるほどだ。