掲載日:2023年06月15日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/増谷 茂樹
HONDA CT125 HUNTER Cub
「CT125 ハンターカブ」は現在のバイクブームを牽引する役割を担った1台と言っても異論を唱える人は少ないだろう。スーパーカブ系のエンジンと車体を用いながら、ちょっとしたオフロードも走れるタフな足回りや、流行りのキャンプツーリングに最適な大きめのキャリアを装備し、エントリーライダーからベテランまで多くのライダーを惹き付けている。2022年12月には早くもモデルチェンジを受け、新型のロングストロークエンジンを搭載するなど各部がブラッシュアップされた。また、カラーに関しては既存の「グローイングレッド」「パールオーガニックグリーン」に加えて新色の「マットアーマードシルバーメタリック」も選べるようになっている。
現在の”ハンターカブ人気”を支えているものの1つが、アウトドアイメージの強いデザインだろう。往年の「CT110」を上手く再現していると感じるのは一部のベテランライダーで、多くのユーザーはキャンプ道具などを積んで出掛けるシーンが絵になることを理由に選んでいるのだろう。今回のモデルチェンジでは、そのデザインに関わる部分にはほぼ変更が加えられていない。先代モデルと見分けるポイントは「グローイングレッド」のカラーでも、荷台がブラックとされたことくらいだ。
ただ、エンジンは同じ”横型”と呼ばれるスーパーカブ系のエンジンを搭載するモデルと合わせて、ロングストロークとなった新型が搭載されている。この変更によって、最高出力は従来の8.8PS/7000rpmから9.1PS/6250rpmにアップ。最大トルクは1.1kgf・m/4750rpmで従来と同様だが、ロングストロークタイプとなったことで、低中回転域でアクセルを開け足していった際のトルク感は向上していることが期待できる。また、リアサスペンションのプリロード調整が可能になったことも、タンデムや大きな荷物を積んで走る機会の多い人にはうれしいポイントだろう。
このモデルから搭載された新型エンジンは、既に「グロム」や「モンキー125」「スーパーカブC125」など同系のエンジンを搭載するモデルに採用されている。それらのモデルに試乗した際には、従来のエンジンに比べてトルクアップが感じられ、特に登り坂など従来モデルであれば「シフトダウンしたほうがいいかな」と感じたシーンで、アクセル操作のみで走れるようになった点が好印象だった。
ただ、「CT125 ハンターカブ」は元々ほかの同系エンジンモデルよりも低速トルクよりに振ったエンジン特性となっている。そうしたことから、ロングストロークエンジンによる効果がどこまであるのか? と試乗前は思っていたのだが、実際に乗ってみると効果のほどはしっかりと感じられた。
といっても、効果が感じられたのは低回転よりも中回転域。フラットな幹線道路などでアクセルを開け足していったときにスピードの乗りが従来モデルより明らかに向上している。最高出力は0.3PSのアップだが、発生回転数は750rpm下がっており、中回転域でのパワー感は数値以上に向上している印象だ。
もう1つ走行性能の面で進化しているのが、リアサスペンションにプリロード調整機構が追加されていること。従来の調整機構のない車体でも、1人で乗っている際には不満を感じることはなかったが、大人とタンデムをすると路面のギャップを通過した際にサスペンションが底付きしてしまう場面もあった。
今回の試乗でもタンデムを試したがプリロードを2段階掛けた状態にすることで、大柄な人を後ろに乗せても底付きを防ぐことができた。また、タンデム走行ではフロントの荷重が不足しがちで前輪の接地感が希薄になりやすいが、その傾向もある程度抑えることができている印象。タンデムする機会が多い人や、重い荷物を積みたいと考えている人にはありがたい進化といえるだろう。
また、車体をよく見ると、アンダーガードのフレーム部分に補強が追加されていたり、細かい部分でもブラッシュアップが図られていることが感じられる。進化し、魅力を増した「CT125 ハンターカブ」は、今後もバイク人気を牽引する存在であり続けそうだ。
リニューアルされたエンジンのボア×ストロークは50.0×63.1mm。従来型の52.4×57.9mmに比べてロングストロークとなった。最高出力は0.3PSアップの9.1PS/6250rpm。
アンダーガードを支えるアーム部分に左右をつなぐ補強が入っている。試乗した範囲では剛性感の変化は感じ取れなかったが、オフロードを走る際には安心感が高まる進化だ。
「グローイングレッド」のキャリアはボディ同色からブラックに変更された。新色の「マットアーマードシルバーメタリック」も同様にブラックだが、継続色の「パールオーガニックグリーン」はボディ同色。
このモデルの特徴でもある「CT110」から受け継がれるキャリアにエアインテークを設けた機構はそのまま。エア吸入口を上部に持ってくることで、水没などによる影響を最小限に抑えるための工夫だ。
リアサスペンションには、新たにプリロード調整機構が備えられた。タイヤは従来と同じIRCのGP-5でサイズは前後ともに80/90-17だが、リアの荷重指数は44Pから50Pにアップしている。
この車種の特徴の1つであるアップタイプのマフラーはもちろん踏襲。ヒートガードも備えられているため、2人乗りをしてもタンデムライダーの足が熱くなってしまうことはない。
「CT110」へのオマージュを感じる丸目ライトと角型ウィンカーの組み合わせ、ボディ同色の三角形のライトステーは継承。灯火類はすべてLEDで、リング状のポジションランプも近年のホンダ車に多く採用されているもの。
アップタイプで幅のあるハンドルなど、コックピット周りにも大きな変更はない。個人的には、メーターにギアポジションインジケーターを装備してほしかったところ。
グリップはリブが立っているオフロード向けのタイプが装着されている。泥が付着しても滑りにくく、このマシンがオフロード走行を視野に入れて仕上げられていることを感じさせる部分だ。
蛇腹タイプのフォークカバーを装着し、フロントフェンダーが金属製となっているのも「CT110」から受け継がれている装備。クラシカルなルックスに一役買っている箇所だ。
前後とも油圧ディスクブレーキを採用し、フロントにはABSを装備。キャリパーは、このクラスでは一般的な片押し式の2ピストンで十分な制動力とコントロール性を発揮する。
シフトレバーはスーパーカブシリーズ共通のシーソー式だが、前側はつま先でかき上げる操作も可能な形状。かき上げる動作でシフトダウンとなるが、かかとで踏む操作に馴染めないライダーにはありがたい。
ステップにはラバーが装着されているが脱着可能なので、オフロードでよりしっかりとステップを踏みたい場合は取り外すことも可能。エンジンの変更に伴って、キックアームにもラバーのカバーが装着された。
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