掲載日:2023年02月07日 試乗インプレ・レビュー
取材・文・写真/小松 男
Benelli 125S
2021年に日本市場へ再上陸してからというもの、個性的なモデルを多数輩出し話題の絶えないイタリアンモーターサイクルブランド、ベネリ。現在は125ccから400ccまで6機種をラインアップしており、中でもネイキッドモデルのバリエーションは多く、どれも定評がある。
125Sは、そのベネリのネイキッドモデルの一つであり、125ccクラスのストリートファイター筆頭となる一台だ。イタリアンモーターサイクルらしい秀でたデザインで纏められたスタリングもさることながら、フルサイズのシャシーに3スパークシステムが採用されたシングルエンジンを搭載し、スポーツライディングに応える足まわりで固められた本格派だ。
昨今話題となっているイタリアンモーターサイクルブランドであるベネリのコンパクトストリートファイターモデル125S。フルサイズで纏められたボディワークと、小排気量ながらもパワフルなエンジンで街の遊撃手となる。イタリア中部にあるアドリア海に面した町、ペーザロで1911年に産声を上げたベネリ。これまで100年以上にもわたるその歴史の中で、戦前戦後の時期はマン島TTをはじめとしたレースでの活躍で注目され、市場では並列6気筒エンジンを搭載した名機SEIの開発、1990~2000年代初頭にかけてはルーフィングスクーターブランドのアディバの立ち上げや、3気筒エンジンのフルカウルスポーツモデル、トルネード900TreやそのネイキッドバージョンにあたるTNTの発表などなど、いつの世も先進的なモデルを輩出し世界中から注目を浴びてきた。
ただその途中には幾たびか経営企業が変わるという紆余曲折があったことも事実だ。現在のベネリは2005年に中国最大級のモーターサイクルブランドである銭江グループ傘下となり、過去と変わらず革新的なデザイン、最新技術を取り入れながら、それを安定した製造で進めることができる環境が整えられた。
以前も一部のベネリは国内で販売されていたことがあったが、2021年に再び日本に上陸し今に至る。デザインからして他と一線を画すレオンチーノ250、並列2気筒エンジンを搭載したTNT249S、前後12インチタイヤを採用しコンパクトにまとめられたTNT125、そして今回取り上げる125Sは、すべてネイキッドモデルとなっている。
125~250ccクラスでネイキッドモデルを探すことを思い立った際に、何かしら自分の求めるモデルがあるというわけだ。もちろん一口にネイキッドモデルと言っても、スクランブラータイプやコンパクトスタイルなど、それぞれにキャラクター付けがされており、見た目も乗り味も異なるものとなっている。
125Sはその中において、原付二種免許で乗れるフルサイズのストリートファイターという存在となっている。それでは早速実車に触れて、内容を紹介してゆこう。
再上陸したベネリのモデルには、ほぼすべて触れたことがあるが、今回の125Sは初めての対面となった。これまでに乗ったベネリはどれもなかなかの完成度だったので、125Sにも期待を膨らませていた。
まずはスタリングからチェックしてゆくと、左右に分割された異形デイランニングライトをセットした精悍なフロントマスク、エッジーなラインで纏められたサイドパネルからタンクへかけての造形、見るからに剛性の高そうなtwinスパーフレーム、そして前後17インチタイヤを採用したフルサイズのボディワーク。見た目からして125ccモデルということを忘れさせてくれる存在感がある。
車体に跨ってみるとシート高はスペック上810mmと高めの数値だが、リアサスペンションが割と沈み込むため足つき性も良い。イグニッションをオンにしエンジンに火を入れて走り出す。SOHC4バルブシングルエンジンは125ccと排気量が小さいながらも、低回転からしっかりとしたトルクを発生してくれるおかげで、ストップアンドゴーの多い街中でもストレスはない。エンジンをはじめ各部が温まってきたことを確認しつつ、高回転域まで使って走らせて行く。
スペックシートでは9500回転で最高出力の9.4kw(約13馬力)を発生するとされているが、10000回転付近でリミッターが作動する。そこからもうひと伸びできそうなポテンシャルを秘めていそうに感じられるが、故障などのトラブルを防ぐというマージンを取ってのリミッター設定なのだろう。高回転を使うほどエキサイティングな走りを得られることは確かであり、7000回転以上をキープしていれば、快活なライディングを楽しむことができる。
ハンドリングに関してはニュートラルな印象で、思ったラインをトレースできる。ステップ位置が後方高めにセットされていることもあり、ついつい攻めた走りをしたくなってしまうのは、ストリートファイターモデルとしての素質を高める格好で125Sが開発された功罪といえよう。
そして果敢に攻めるような走りをしても、それをしっかりと受け止めるシャシーの剛性の高さにも驚かされる。足まわりなどのリセッティングは必要だが、このフレームならば200ccや250ccエンジンを搭載しても問題ないだろう。
スリッパ―クラッチやコンビブレーキなどの安全装備も充実。小回りも得意なうえに、長時間乗車でも快適とくれば、125ccクラスのスポーツモデルを狙っている諸兄もチェックを怠らないようにした方が良いということ。
ベネリにはTNT125という125ccクラスのネイキッドモデルも存在するが、あちらはコンパクトにまとめられたホビーバイクといった位置づけなので、実際の購買層は違うであろう。なので125ccクラスでピュアなスポーツネイキッドモデルを求めているならば、ベネリ125Sを選択することは健全なことだとお薦めできる一台となっている。
ボアストロークは54.0×54.5というほぼスクエアスタイルとした、SOHC4バルブ水冷4ストロークシングルエンジン。燃焼効率を高める3スパークプラグというのも興味深い。さらに高回転まで引っ張れるポテンシャルを秘めていると感じた。
フロントタイヤサイズは100/80-17で、パワーを含めた全体的なバランスが良い。倒立式フロントフォークは細身ではあるが、フロントの突き上げをしっかりと吸収してくれた。CBS(コンビ・ブレーキ・システム)も装備している。
LEDのデイランニングライトを採用した精悍なフロントマスクは125Sの個性を打ち出している魅力の一つ。夜間走行テストを行わなかったので、明るさや照射角は次の機会に確かめたい。
やや後方高めにセットされたステップ。膝の曲がりは多少あるが窮屈に感じるものではなく、むしろステップ入力がしやすいという印象。ヒールプレートもしっかりしており、コーナーで荷重を載せやすい。
シート高は810mmとそこそこ高い数値であるが、車体が細いこと、サスペンションの沈み込みがやや大きいことから、足つき性は良い。タンデムシートはセパレートタイプとなっており、スポーティなデザインだ。
リアタイヤサイズは130/70R17。スイングアームの剛性感も高く、車体を大きくリーンさせても不安がない。注油や張り調整などドライブチェーンのメンテナンス性も良さそうだ。
テールランプは車体の後端にインサートされており、その下方にステーをセットし、ウインカー及びナンバーが備わっている。これは補器類の脱着を容易にするための仕掛けで、クローズドコースなどでの走行も楽しみたいところ。
デジタル表示のフル液晶メーターパネル。スピードメーターを中央に表示し、その周りをタコメーターとするのはスポーツモデルの定番レイアウト。シフトインジケーターや残燃料などのインフォメーションも分かりやすい。
ハンドルバーは若干手前に曲げられており、アップライトなライディングポジションとなる。Uターンや小回りもしやすく、街中ではとても扱いやすいと感じた。ミラーの後方視認性も良い。
サイドパネルから燃料タンクに続く造形はなかなか美しいもの。燃料タンクは細身で体格を問わず足で挟みやすい。コンパクトに見えるが容量は10リットルと十分。
リアサスペンションはモノショックで、リンクを介してスイングアームにセットされる。スラロームテストなど意地悪な走らせ方もしてみたが、動きは良くトラクションも伝わりやすい。
シート下に収まる車載工具は、その内容が充実しており、日常的なセルフメンテナンスも楽しめそうだ。小排気量バイクはメカニックを学ぶにも最適なものである。
タンデムシート下に多少のユーティリティスペースが設けられている。125ccモデルなのでETCは必要ないが、追加工具など小物程度であれば収めることができるだろう。
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