『バイク乗りの勘所』

下手ほどタイヤを端まで使う

掲載日:2014年05月12日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

コラムや雑誌のタイトルってのは、どれだけ目を引くかが勝負。だから、今回のタイトルも、うのみにしないでいただきたい。が、しかし、レーシングライダーが、気象および路面コンディションが良好なときに、条件に合ったタイヤを履いたような場合を除けば“下手ほどタイヤを端まで使う”というのは、大外れではない。同じマシンに同じタイヤを履いて同じ山道を同じ速度で走れば“下手ほどタイヤを端まで使う”は、より真理に近づく。

タイヤを端まで使うのは、リーンアングル(バンク角)が大きいからであり、いわゆる“寝かさないと曲がらない”乗り方をしている証拠だ。同じコーナーを同じ速度で走ったとき、リーンアングルの大きい走法と小さい走法の、どちらがリスクが高いか…。それは、言うまでもなく前者である。サーキットでタイムアタックをするのならともかく、公道でタイヤを端まで使うのは、上手い下手以前に、ハイリスクであることを肝に銘じてほしい。

さらに、リーンアングルが増大し、接地点が端に寄れば寄るほど、タイヤの変形(潰れ)が大きくなり、駆動ロスが増加することも知っておくべきである。そしてまた、接地点が端に寄れば寄るほど、タイヤの外径が小さくなったのと同じく、総減速比が大きくなり、それによってエンジン回転が高くなるのはいいが、コーナー立ち上がりで接地点が中央に移っていくときにエンジン回転が落ち込み、加速が悪化することも知っておいて損はない。

こうしたリスクや問題点を承知のうえで、それでも端まで使わなければならないほど、他にコーナリング速度を高める余地がないのなら話は別である。だが、例えばラインどりや、初期旋回性を高める乗り方とセッティング、そしてブレーキとスロットルによる旋回効率の高い動的ジオメトリーの実現など、するべきことはたくさんある。それをせずにタイヤを端まで使うのは下手の証拠。本来は自慢するよりも恥ずかしがるべき現象なのである。

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