『バイク乗りの勘所』

整備はネジに始まりネジに終わる(その1)

掲載日:2012年01月16日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

ネジを締めたり緩めたりするのは、部品の点検や交換のため、あるいは調整のため。そのこと自体が整備ではないが、整備の中で非常に重要な作業であり、最後の1本のネジを正しく締め終わるかどうかが、整備の結果を左右すると言っても過言ではない。にもかかわらず、ネジの締め方について、実用的かつ正しい方法が書かれたマニュアル、雑誌、ウェブサイトなどはほとんどない。難しい論文の類はあっても、理解して応用するにはハードルが高い。

ブレーキディスクをホイールに取りつける場面を想定して説明すると、ボルトを締めるというのは、ボルトの座面(頭の裏面=ディスク表面に接する面)とネジ部の間にクサビを打ち込むのに例えることができる。これにより、ボルトには、座面~ネジ部の間を引き伸ばす方向の力がかかり、それに反発する力(金属の弾性による)が生じ、その力(ボルトが縮もうとする力)がディスクをホイールに押しつける。これが、ネジによる部品の締結である。

どんな難しい話かと思ったら、わりと簡単だったので安心した人も多いはず。だが、原理は簡単でも、原理どおりに効果を発揮させるのは難しい。ネジ部と座面に異物が挟まれないように清掃するのと、クサビ(ネジや座面)がスムーズに滑るように潤滑するのは、最低限必要なこと(潤滑には例外あり)で、その他、ボルトの底突き、メネジの異常、ネジの軸に対するパーツ表面(ボルトの座面が当たる面)の傾きなどがないことを確認する必要もある。

そして、どれくらいの力で締めるのか。これは、工具でボルトを回す力ではなく、上に書いたボルトを伸ばす力のことである。締めすぎるとボルトが千切れたり、締めつけられた部品が壊れたりするから、適度な大きさでなければならない。ところが、同じ大きさの力で締めた(ボルトを回した)はずなのに、ボルトを伸ばす力に大差が生じることがある。それは主に、ネジや座面の滑り具合の違いによって生じる。難しくなってきたので、続きは次回に。

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