“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson2/発進

掲載日:2010年09月03日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson2/発進
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson2/発進

安全確認を優先し
スムーズに発進する

発進で何よりも最初にやるべきことは安全確認。特に注意したいのは後方。バックミラーだけでは死角があり後続車との距離感もつかみにくいため、必ず目視による確認を行う。

 

違反車を見つけるや否や、瞬く間にスタートダッシュし取締りを行う白バイ。赤色灯とサイレンでその存在をアピールしてはいるものの、非常に危険な任務であることは誰から見ても明らかである。そこで、どうやって安全を守るのか、一般ライダーの走りとどこが違うのか。そのあたりから聞いてみたい。

 

「白バイ隊員が一般ライダーと違うのは“取締り”を任務としている点でしょうか。皆さんは通勤・通学や趣味でバイクに乗ると思いますが、我々は“交通の安全と円滑の維持”という公共の目的のため、交通指導や取締りを行っています。ですから、一般のドライバーやライダー、そして自分も含めた安全の確保を常に第一に考えて行動しています」と笹野巡査長。白バイというと、ライディングの技術的な部分だけに目を奪われがちだが、実はそれ以前の安全マインドにこそその神髄があるのだ。

 

さて、今回は「発進」がテーマである。発進時はリスクが高く、実際の事故においても発進直後に発生しているケースが多いという。後続車に追突されたり、交差点での出会い頭の事故だったり、歩行者を見落として接触する例などだ。これらの事故はいずれも安全確認を怠ったことによるものである。後方を含めた周囲の安全について、必ずバックミラーだけでなく自分の目で直接しっかりと見るべきだ。

 

そこで、白バイ隊員の後方確認の方法を参考にしたい。上体を前傾させつつ肩越しに後方を見る。首を回すだけでなく上半身全体を使って振り返る感じだ。このときに左肘を上げて左肩を前に出し、反対に右肩は後ろに引くようにするとより楽に振り返ることができるので試してみてほしい。

 

操作に関してはスロットルとクラッチのコンビネーションがポイントになる。白バイが行うのはスクランブル発進なので、スロットルは通常より多めに開けて回転数を予め上げておく。ある程度パワーをかけた状態からリヤブレーキでタイヤの回転を抑えつつスタート準備。半クラを素早く当てながら発進し、リアブレーキをスッと解除。同時にスロットルをさらに開けていくイメージだ。ここでクラッチのつなぎ方が粗いと失速したりエンストしやすくなる。急に負荷がかかってエンジン回転数が下がり過ぎないように、あくまでもスムーズにクラッチミートしていくのがキモ。デリケートかつ速やかな操作が電光石火のロケットスタートを可能にしているのだ。

クラッチを切りスロットルを少し多めに開けて、発進に十分なトルクが発生するエンジン回転数をキープしつつ準備。リヤブレーキは踏んだまま、右側から振り返って安全確認。

スタート準備し後方確認

クラッチを切りスロットルを少し多めに開けて、発進に十分なトルクが発生するエンジン回転数をキープしつつ準備。リヤブレーキは踏んだまま、右側から振り返って安全確認。

スロットルをさらに開けつつクラッチミートして発進。エンストしないように半クラを心持ち長めに使う。加速に合わせて上体を前傾し、スタートと同時にすぐに左足はステップの上に。

スムーズにクラッチをつなぐ

スロットルをさらに開けつつクラッチミートして発進。エンストしないように半クラを心持ち長めに使う。加速に合わせて上体を前傾し、スタートと同時にすぐに左足はステップの上に。

足はなるべく真下に着く。少なくとも足の前半分程度は接地して安定させる。装備も重要。白バイ隊員は長靴タイプの革ブーツを着用するが、一般ライダーでも踝が隠れる靴は必須だ。

真下に足を着く

足はなるべく真下に着く。少なくとも足の前半分程度は接地して安定させる。装備も重要。白バイ隊員は長靴タイプの革ブーツを着用するが、一般ライダーでも踝が隠れる靴は必須だ。

足を着くとき必要以上に横に出してしまうと、距離が遠くなり足着きも悪くなる。爪先立ちになりやすい上にバイクも傾くので、余計重く感じて支えるのが困難になる。

横に出すと危険

足を着くとき必要以上に横に出してしまうと、距離が遠くなり足着きも悪くなる。爪先立ちになりやすい上にバイクも傾くので、余計重く感じて支えるのが困難になる。

白バイでも以前は4本がけが推奨されたが、バイクの性能が向上した現在では2本がけで十分だ。半クラが使えるレバー位置はほんの数センチの範囲で、そこを繊細につないでいく。

クラッチは2本がけ

白バイでも以前は4本がけが推奨されたが、バイクの性能が向上した現在では2本がけで十分だ。半クラが使えるレバー位置はほんの数センチの範囲で、そこを繊細につないでいく。

クラッチレバーを可動範囲いっぱいまでガッチリ握ってしまうと、再びつなぐときに半クラの領域がかえって分かりづらくなる。ここまで握らなくてもクラッチは切れる。

ガチ握りはダメ

クラッチレバーを可動範囲いっぱいまでガッチリ握ってしまうと、再びつなぐときに半クラの領域がかえって分かりづらくなる。ここまで握らなくてもクラッチは切れる。

白バイのスクランブル発進では俊敏な加速を得るため、スタート直前にスロットルをわずかに開けてエンジン回転数をやや高めておく。通常の発進ではそこまでやる必要はない。

わずかに開けておく

白バイのスクランブル発進では俊敏な加速を得るため、スタート直前にスロットルをわずかに開けてエンジン回転数をやや高めておく。通常の発進ではそこまでやる必要はない。

発進したら速やかにクラッチをつなぎスロットル全開。とはいえ、ガバ開けではなく手首の動きはスムーズに。グリップは軽く握る程度。通常の発進ではハーフスロットルで十分だ。

発進したら速やかに全開

発進したら速やかにクラッチをつなぎスロットル全開。とはいえ、ガバ開けではなく手首の動きはスムーズに。グリップは軽く握る程度。通常の発進ではハーフスロットルで十分だ。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

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