“白バイ流” 究極の安全運転テクニック
取材協力/千葉県警察本部交通機動隊

Lesson1/乗車姿勢

掲載日:2010年08月20日 公道スペシャリスト“白バイ流” 究極の安全運転テクニック    

「白バイ流」安全の極意を学ぼう!

常に沈着冷静で威風堂々とした走り。そしてひとたび事件が発生すれば疾風のように現場に駆けつける…。「白バイ」は誰もが認める公道走行のスペシャリスト集団である。その極意とはいかなるものか。2009年度全国白バイ大会のチャンピオン、千葉県警の笹野巡査長を講師に迎え、ストリートを安全確実に走り続けるための考え方やノウハウをお伝えしよう。

Lesson1/乗車姿勢
白バイ走法のここがキモだ!
Lesson1/乗車姿勢

リラックスして
一体感を高める

白バイ隊員の自信に満ちた威風堂々としたライディングフォームは実にカッコいい。バイクとの一体感を高めるニーグリップ、そしてリラックスした上半身が印象的だ。

 

猛暑でも厳寒の中でも顔色ひとつ変えずにフル装備の大型バイクを颯爽と乗りこなす、白バイ隊員の走りを見ていると実に凛々しくカッコいいと思う。その華麗な走りを支えているのは絶え間ない日々のトレーニングなのだが、そこには一貫した考え方がある。それは「安全」である。白バイ隊員はいつどんなときでも我を忘れず、冷静な判断と操縦技術が求められる。時として暴走する違反車両を追跡し取り締まらなくてはならない彼らにとって、日常の任務は常に危険と隣り合わせなのだ。安全なくして上達はあり得ない。本当の危険を知っている白バイ隊員だからこそ、安全にバイクを走らせる技術に磨きをかける。趣味でバイクに乗る一般ライダーにとっても安全は最も大事なテーマ。白バイに見習うべきことはたくさんあるはずだ。

 

さて、今回は「乗車姿勢」から学んでいきたい。バイクを上手く操るためには、バイクとの一体感を高めることが大事である。そのためには「リラックスとニーグリップが大事」と笹野巡査長。全身からムダな力を抜きながらも、下半身でしっかりバイクを押さえていくのがポイントだ。白バイの乗車姿勢には特徴的な部分がいくつかある。まずは着座位置。写真を見るとシートのだいぶ後方に座っている。これは白バイの走り方と関係が深い。混雑した市街地での任務が多い白バイの場合、日頃の訓練は主にスラロームなどの低速系が中心である。低速系の場合、ステアリングを切って曲がっていく、いわゆる舵角中心のライディングスタイルになる。そのため、やや腰を引くことで懐に余裕を持たせてハンドル操作をしやすくするとともに、重心をリヤ側にかけてタイトターンで旋回しやすくしているのだ。加えてハンドル位置も通常よりアップ&バックしているため、上体もSTDポジションより起きている。これによりさらにハンドル操作しやすくまた長時間走行でも疲れにくい姿勢を保てるのだ。乗車姿勢はライダーの体格や車種によっても変わってくるが、目的や状況に合わせて最適なフォームを作っていくこともできたほうがいい。その意味で白バイ流のライディングフォームもひとつ参考にしてもらいたい。

シートのやや後方に座る独特のスタイル。アップハンドルが装着されているため上体はSTD車両の場合よりも起きている。背中をやや曲げて軽く上体を前傾させることで腕に余裕を持たせている。

乗車姿勢

シートのやや後方に座る独特のスタイル。アップハンドル仕様のため上体はSTD車両の場合よりも起きている。背中をやや曲げて軽く上体を前傾させることで腕に余裕を持たせている。

頭の位置は常に水平に。目線は1点に固定せず、常に焦点を移動させてなるべく多くの情報を収集。意識して広く遠くに向けるようにすることで早めに危険を察知する。

頭の位置は常に水平に。目線は1点に固定せず、常に焦点を移動させてなるべく多くの情報を収集。意識して広く遠くに向けるようにすることで早めに危険を察知する。

肩に力が入ると腕や手にも力が入り、スムーズなハンドル操作ができなくなる。緊張気味のときは、深呼吸してリラックスするとともに意識的に肩を下げるようにする。

肩に力が入ると腕や手にも力が入り、スムーズなハンドル操作ができなくなる。緊張気味のときは、深呼吸してリラックスするとともに意識的に肩を下げるようにする。

加速や減速によるバイクの姿勢変化には肘の曲げ伸ばしで対応。肘をクッションのように使うことで柔軟な走りができる。肘は「絞りすぎず曲げすぎず」がポイント。

加速や減速によるバイクの姿勢変化には肘の曲げ伸ばしで対応。肘をクッションのように使うことで柔軟な走りができる。肘は「絞りすぎず曲げすぎず」がポイント。

グリップに対して手はやや斜めに置くようにし、軽く握るとスロットル操作しやすい。手首の角度は120°ぐらいがベスト。ガバ開けにならず閉じやすい。

グリップに対して手はやや斜めに置くようにし、軽く握るとスロットル操作しやすい。手首の角度は120°ぐらいがベスト。ガバ開けにならず閉じやすい。

左右に偏りがないようにシートの真ん中に座ること。燃料タンクと自分の間に拳1個分ぐらいの隙間を開けるイメージで着座すると懐に余裕のある自然な乗車姿勢が作れる。

左右に偏りがないようにシートの真ん中に座ること。燃料タンクと自分の間に拳1個分ぐらいの隙間を開けるイメージで着座すると懐に余裕のある自然な乗車姿勢が作れる。

バイクとの一体感を高めるためニーグップが基本。ただし、常に締め付けるわけではなく普段はタンクに膝を当てている程度。状況に合わせてニーグリップの強さを調整する。

バイクとの一体感を高めるためニーグップが基本。ただし、常に締め付けるわけではなく普段はタンクに膝を当てている程度。状況に合わせてニーグリップの強さを調整する。

ステップには土踏まずを乗せ、いつでもペダル操作できるように足先はペダル上にセットしておくのが基本。しっかりニーグリップするためにも爪先は真っ直ぐ前に向ける。

ステップには土踏まずを乗せ、いつでもペダル操作できるように足先はペダル上にセットしておくのが基本。しっかりニーグリップするためにも爪先は真っ直ぐ前に向ける。

取材協力
取材にご協力いただいたのは千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係の皆様。2009年は「全国白バイ安全運転競技大会」団体一部で総合優勝を獲得するなど、全国白バイ隊員の中でも強豪チームとして知られる。
講師 プロフィール
講師 笹野裕也巡査長
千葉県警察本部交通部交通機動隊訓練指導係所属。「第41回全国白バイ安全運転競技大会」において個人総合優勝、千葉県警を団体一部優勝に導いた。マラソンを先導している白バイの凛々しい姿に憧れて現職を志す。プライベートではツーリングを楽しむ根っからのバイク好きでもある。愛車はCB1300SF。千葉県出身。
解説者 プロフィール
解説 佐川健太郎
モーターサイクルジャーナリストとして2輪専門誌等で活躍中。公道で役立つ実践テクからサーキット走行まで造詣が深く、白バイ関連の記事や映像も数多く手掛けるなど白バイテクについても精通。本誌ライテク講座「"スマテク"で乗りこなそう!」でも講師を担当した。ライディングアカデミー東京校長。MFJ公認インストラクター。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索