走行距離が「浅い」「少ない」からと言っても新車ではないから要メンテ!!白煙が吹くのです

掲載日:2017年01月21日 特集記事    

文・写真/田口勝己  写真/栗田晃

登場車両:ホンダ スーパーカブC70 スタンダード 1972

シルクハットのようなステムキャップの内側に組み込まれるステムシール。この年代の国内モデルは排気側にしか組み込まれていない。このツバ付きの小さな部品が犯人だった。

ノンレストアでほぼ部品交換されることなく、しかも走行距離が少ない「ストレートコンディション車」だったことから、あまり手を付けず(いじり倒さず)、そのまま乗ってみようと思ったスーパーカブC70行灯号。スモールランプがヘッドライト下のフロントカバー部に取り付けられ、夕方になると薄明るく点灯する様が「行灯(あんどん)」のように見えることから、通称「行灯」と呼ばれている。残念ながらマフラーだけは、80年代以降に出回った「アメリカ/カナダ・コーション」と呼ばれるホンダ純正の輸出用に交換されていた。そのため本体が重く、行灯当時の元気な排気音ではないのが残念だった。当然ながら最高速も国内仕様のマフラーと比べ伸びが今ひとつ。

そこで、行灯時代のNOS(ニューオールドストック)マフラー、いわゆるデッドストック品を見つけて取り付けたところ、それはもう元気な走りが蘇り、何よりトルクフルに!!さらに最高速はメーター読みで7~8㎞/hは速くなった。ある日、C90M2に乗る、飛ばし屋のカブ仲間と走っていたら、信号待ちのときにイヤな匂いがプ~ンとしてきた。つぎの休憩ポイントへ移動後、停止状態で空吹かしを何度かやってみた。するとマフラーからはモヤモヤと白煙が出ているのを確認。以前はそんなこと無かったので、間違いなく飛ばし過ぎですね~♪

取り敢えずは硬めのエンジンオイルに交換したが、完全暖機後は同じ症状になってしまった。仕方ないのでエンジン腰上だけバラして、原因究明&修復にトライ。結果としては、経年劣化で弾力が無くなりカチカチ直前だった排気バルブ側の小さなステムシールを交換。その後は連続的ブン回し走行でも白煙はまったく出なくなった。ちなみに旧6V時代の国内モデルは「排気バルブ」にしかステムシールが入らないが、輸出のC70には吸排気双方にステムシールが入るようだ。

新車販売当時は福島県へ出荷されたらしく、つい数年前までは福島県内で活躍していた。その後、モトメンテガレージに嫁いできた。履歴がわかるので走行距離は正しい。生誕45年でこのコンディションは素晴らしい!! 72年からヘルメットロックを標準装備。

C70Zが最終かと思ったら、次のC70Z1が通称縦キャブ最終モデルになる。その後はクネったマニホールドにホリゾンキャブ仕様となる。過去にエンジンを降ろされた様子も無く、そこそこの汚れがイイ!!

シリンダーヘッドからの熱伝導を避けるために、遮熱板付きの強化プラスチック製インシュレーター+キャブのマウントスタッドにも樹脂カラーが入る。

12Vエンジンは腰下よりもシリンダーヘッドの違いが大きい。6V時代のカムスプロケットは3本ボルト固定。その内側にあるカムシャフトもオイルフローでボールベアリング支持ではない。

ヘッドガスケットは現代的メタル仕様ではなく昔ながらのアスベスト系を採用。代替え品はマルチ重ねのメタルガスケットで厚さを調整しピストンとヘッドが干渉するのを防ぐ。

エキゾーストバルブスプリングを外すとステムエンドにスプリングシート、ハット型ホルダー、ツバ付きのステムシールが組み込まれる。さすが46年の経過でラバーシールが硬い。

ゴソウダンではなく納品されたステムシール。部品番号から想定すると、そもそもの開発機種は028=CS90だったようだ。6Vエンジンオーナーなら常にストックしておきたいパーツのひとつである。

もしもピストンリング張力が減ったり、ピストンリングの摩耗が進むとピストントップからリング溝側面(特にピストンピン側)への吹き抜けが顕著になり、側面が真っ黒になってしまうが良いコンディションだ。

ストックパーツの横型70㏄用の6Vシリンダー+ピストンを引っ張り出し、すべての合口隙間を測定したら、やっぱり現車行灯号のピストンリングが一番減っていなかった。リング張力の低下も疑ったが……

ヘッド面と並行にシリンダー内にピストンリングを挿入し、合口隙間をシックネスゲージで測定する。0.5mm以上あるときには無条件に交換。新品部品の組み合わせ時は0.05~0.2mmになる。

ブレーキケーブルの長さに注意!!

コンディションが良かったので、即、自賠責保険に入って走り出したが、ブレーキング時に違和感があったので調べると、交換された痕跡があるブレーキケーブルが明らかに短かった。ブレーキ時にボトムリンクが作動すると異様に突っ張り違和感があった。調べるとC100用ケーブルだったので正規のC50/70用に交換して問題解決。





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