AIDS撲滅のためのひとつのシンボルとして登場した深紅のベスパをインプレッション 試乗インプレ・レビュー

ベスパ 946 レッド

(VESPA 946)RED
VESPA

AIDS撲滅のためのひとつのシンボルとして登場した深紅のベスパをインプレッション

掲載日:2017年11月29日 試乗インプレ・レビュー    

取材・写真・文/森下光紹

AIDS撲滅のために組織された(RED)とコラボ
購入すると150ドルが資金となるシステムだ

2016年に発表されたこの真紅のベスパ946は、2006年にミュージシャンのボノと、活動家であるボビー・シュライバーによって設立された(RED)とコラボレーションした注目のモデルである。

(RED)の活動は、HIVやAIDSに対する意識を啓発し、企業から持続的な資金を集めて設立から10年間で7,000万人以上の人々に影響を与えたとされている。その金額は3億6,000万ドル以上で、このベスパ946のオーナーになるということは、世界中で苦しんでいるキャリアの人々を救う手立てのひとつになるということなのである。

ベスパという乗り物の特徴は、紳士淑女が襟を正して乗れるグローバルスタンダードバイクであること。まったく新しいボディデザイン、構造のスクーターとして世の中に発表された1946年以来、基本的に変わらないコンセプトが今回のコラボレーションに発展したのであろう。誇り高きイタリアンスクーターに乗ることが、さらに気高き人間性を表現する。その証がこの真紅のモデルということなのだ。

ベスパ 946 レッド 特徴

乗りやすさと降りやすさをバランス良く
デザインの巧妙さは他に似るものを持たない

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

パイプフレームにエンジンを搭載する「モーターサイクル」とはまったく違った発想で設計されたベスパは、元々航空機からの発想としてスチールモノコック構造を採用して今日に至る。

デビューは1946年、第2次世界大戦終了直後のイタリアで、まったく新しいコミューターとして産声を上げ、爆発的人気を獲得した。とくに俳優オードリー・ヘプバーン主演の映画『ローマの休日』に登場する通称「フェンダーライト」タイプは、その後のヒット作に大きな影響を与えたと言ってもよく、女性でも乗れるシティコミューターとして世界的な認知が広がった。そんな黎明期のベスパデザインを踏襲しつつ、未来を見据えたデザインとして登場したのがこの946である。

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

ベスパとはイタリア語で「スズメバチ」という意味だ。デザインのコンセプトはその名のとおり、軽快でグラマラスなもの。とくに946のデザインは、オールドベスパが持っている流麗なボディワークを強く意識したもので、リア周りのふくよかさが強調され、ウエストのくびれたラインもまた、クラシカルなイメージを持っている。その大きな要因は、この時代にあえてヘルメットインという利便性を捨てたことによることが大きいのだが、イタリアのデザイナーは魅力的なスタイルのためなら重要な機能でさえあっけなく捨て去る、その潔さには脱帽する。様々な利便性、高機能を備えたモデルは他にもラインナップするのだから、946はこれで良い、と言わんばかりのスタイルだ。

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

機能部分を見てみると、前後12インチのホイールにはミシュランタイヤを装着し、伝統の片持ちフロントサスペンションにABS付きディスクブレーキを装備。パワートレインはフラットなトルクで扱い易い155ccのOHC3バルブエンジンを採用し、燃費レベルはクラストップを誇る。しかもASRトラクションコントロールシステムを備えた安全性の高いユニットである。ほかにも、ヘッドライトは上下分割のプロジェクターライトを採用し、ウインカーはLEDタイプと、最新のスペックでまとめられているのも特徴である。

ベスパ 946 レッド 試乗インプレッション

見た目のインパクトは特別な存在を表す
乗ってみればベスパらしさをあらためて感じる

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

まず目に飛び込むのは、その真っ赤なボディカラー。(RED)とのコラボで実現したカラーは正しくイタリアンレッドだが、じつはベスパの標準色には、歴代あまり採用されていない色である。とくにオールドベスパはシックな無彩色が多く、色のバリエーションが多かったのは、1990年代に日本からの要望で復活したスモールボディの50Sぐらいだ。だからこそ、このモデルが特別な存在であることが強調されているのである。

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

スマートかつグラマラスなボディは、思いのほか大柄である。かつてのスモールボディはもちろん、GSなどのオールドモデルと較べても大きなボディシルエットで、シート位置はかなり高い。じつはベスパのライディングポジションには独特のスタイルがある。シートには深く腰掛けるのではなく、背筋を伸ばしてスツールに腰を降ろすようなスタイルなのだ。それは男性ならスーツスタイル、女性のロングスカートでも気軽に乗り降りできるようなポジションとして設計されている。だから歴代どのモデルに乗っても基本的にシート位置は高いのだが、この946もまた、そんなベスパスタイルを受け継ぐデザインとなっている。

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

テスターの身長は172cmだが、両足のかかとは地面から少し浮き気味だった(写真のライダーは身長175cm)。しかし、シッティングとスタンディングのポジション差が少ないために、乗り降りは極めてスピーディーでスマートだ。乗車姿勢も、背筋をピンと伸ばしたスタイルをキープすると、車体も安定して軽快なハンドリングを楽しめる。その姿勢なら、素直に下ろした両腕がハンドルを無理に抑えこむこともなく、細かい右左折時のセルフステアを邪魔することもなくなる。これが、ベスパを操るうえでとても重要なポイントだ。標準的な体格の日本人女性にはさすがにシートが高すぎる印象もあるが、姿勢を正した「ベスパ乗り」を習得すれば、エレガントに街を駆けることは可能だろう。ベスパのライディングポジションは、ハイヒールにスカートというスタイルも充分許容範囲なのだ。

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

エンジンは、フラットトルクで扱い易いフィーリング。振動もしっかり吸収されていてボディから安っぽいビビリ音もない。モノコックボディは基本的にスチール製。樹脂部分が少ないので振動による異音は発生しにくく、走行騒音は極めて低いレベルにある。燃費もクラストップの実力となれば、ストレスの低いライディングが楽しめる。

サスペンションは前後共に減衰力が高めのしっかりしたセッティングで、ピッチングの少ない挙動に好感が持てる。試乗車がほぼ新車であることを考えると、もう少し動きの軽い状態に落ち着くと考えられるが、大きな段差を乗り越えた際に効率よく衝撃を吸収することから、硬く感じた乗り心地はバネレートが特別高いということではないと思えた。

ベスパ 946 レッドの試乗インプレッション

ベスパ946(RED)は、オールドベスパのデザインを踏襲しながら未来的なイメージも同時に表現している。その理由は、ベスパは第1号の登場時から、これまでになかった未来的なスタイルを身に纏っていたからだ。そのポリシーが受け継がれていくかぎり、ベスパのデザインは未来志向であり、他のスクーターには真似できないものなのである。

詳細写真

ヘッドライトは上下二分割されたプロジェクターライト方式。全体のデザインはオールディーズな丸型。上半分がロービームとなっている。

真ん中に946のエンブレムを配したボディの下半分がハイビーム。完全に独立したライト設定なのは、上下共プロジェクターライトゆえ。

アクセサリーパーツの小ぶりなウインドシールドも、オールドベスパファンには懐かしいデザイン。防風効果というよりもファッション性を重視したシルエットだ。

ほぼライダーの肩幅プラスアルファのハンドルは全体のデザインを壊さぬようなラインを描き、アルミ製のカバー自体がハンドルとなる。スイッチボックスはメッキが施された樹脂製で、デザインは60年代の未来感とでも表現するべきか。

メーターパネルは液晶表示で現代的なもの。しかしその姿は、やはりどこかクラシカルなイメージを醸し出す。スピード表示が大きく、好感が持てる。

伝統の片持ちフロントサスペンションは、元々航空機の尾輪からの発想と言われている。右側はユニットが無いのでホイールデザインが良くわかる構造だ。

減衰力が高めのフロントサスペンションには高品質なディスクブレーキを装備する。ABSを標準装備するユニットは、信頼性もストッピングパワーも高いレベルにある。

ウインカーはボディフロントに埋め込まれたLED式を採用。ポジションライトもインクルードされている。

ダブルシートはパッセンジャー部分を分割したタイプで、人間工学を追求した複雑な形状。乗り降りしやすいという大きな特徴がある。

シートの下にはガソリンタンクの給油口と、小さな書類入れがあるだけだ。シート開閉のストレスを無くすために、フロント側のヒンジにはダンパーが装備されている。

シートの先端下部には荷掛けフックが存在する。これもまたオールドベスパからの伝統パーツ。実際にバッグ等を下げることができる頑丈な作り。

ステップボードは左右で6本のゴム製モールを配置。流れるようなデザインはウエストがキュッと引き締まった女性的な印象を醸し出す。後部にはタンデムライダー用のステップも装備する。

斜め後ろからの眺めはベスパ(スズメバチ)という名の由来を最も感じさせられる部分であり、クラシカルなデザインを思い起こす。後部にはクロームメッキされたキャリアを標準装備。テールライトはLEDだ。

ボディ最後部に位置するウインカーは完全にボディ内に埋め込まれたLEDタイプ。ボディ形状をまったくスポイルしないウインカーだが、昼間の視認性はあまり良いとは言えない印象。

排気量155ccのOHC4サイクルエンジンは3バルブ機構を採用し、クリーンな環境性能や燃費はクラストップを誇るもの。エンジンから一体のスイングユニットは、ベスパが最初から採用する方法である。

マフラーは消音性の高いもので、エンジンは強制空冷式。赤く塗装されたホイールは12インチで安定した走行性能を確保する。ホイールデザインも重要なポイントである。

試乗ライダー プロフィール
森下光紹(モリシタ ミツアキ)
本業はカメラマンだが、興味の赴くままにソロ活動することが多く、結果レポートやコラムも執筆するライターとして各地を飛び回るオールラウンダー。バイク歴は40年以上で、基本的にシンプルなバイクを好むツーリングライダーである。

SPECIFICATIONS – (VESPA 946)RED

ベスパ 946 レッド 写真

価格(消費税込み) = 129万8,000円
※表示価格は2017年11月現在

2016年に発表されたこの真紅のベスパ946は、AIDS撲滅のために組織された(RED)とのコラボレーションにより、ピアッジオグループがその活動のひとつのシンボルとして打ち出した注目のモデルである。

■エンジン型式 = 空冷4ストローク単気筒OHC3バルブ

■総排気量 = 155cc

■ボア×ストローク = 58×58.8mm

■最高出力 = 11.9HP(8.9kW)/8,000rpm

■最大トルク = 11.5Nm/6,750rpm

■トランスミッション = 自動無段階変速

■■全長×全幅×全高 = 1,965×730×1,170mm

■車両重量 = 147kg

■シート高 = 805mm

■ホイールベース = 1,405mm

■タンク容量 = 8.5リットル

■Fタイヤサイズ = 120/70-12

■Rタイヤサイズ = 130/70-12

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