ホンダ NSR250R(1986)

掲載日:2015年10月02日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA NSR250R(1986)
レーサーは無理して乗るものでなく、軽く、速く、良く曲がるもの。
それをレプリカでも作り込んだのがホンダNSR250Rだった。

90度V2を最大限に生かす

取り回しからちゃんと軽く、誰が乗っても速く、実に良く曲がって楽しい。その上、信頼性もバツグン。そんなスーパースポーツバイクは、なかなかありそうでないもの。

1990年代初頭の750cc以上バイクの国内自主規制解禁の前、つまり80年代の国内のバイクの主役は、いわゆる中型(現・普通)免許。つまり250cc、400ccに新型車や注目モデルが集中していた。250cc 2ストの“クォーターレプリカ”は、全日本や世界GPの250クラスレーサーと直結していたから、一番熱いジャンルでもあった。

このクラスのホンダ車の歴史は1983年のV3、MVX250Fで始まり、翌1984年の90度V型2気筒、NS250F/Rで性能は大幅向上する。しかし、並列2気筒のライバルヤマハTZR250やスズキRG250Γの人気に今ひとつ及ばない。そこでホンダはNSのエンジン、車体とも全面刷新したNSR250Rを1986年10月に投入。ここから快進撃が始まる。

その背景には、もちろんGPレーサーの存在があった。1985年の世界GP500と250にエントリーして双方の覇者となったフレディ・スペンサー。そのマシン、90度V4のNSR500と、そのエンジンを縦に割ったような90度V2のRS250RWだ。RS250RWはワークスマシンで、市販レーサーRS250Rも同様のレイアウト。さらに市販車のNSR250R(型式MS16)も同じレイアウトを取っていたのだ。

ボア×ストロークはオーバースクエアから54×54.5mmのスクエアボアに戻し、吸気効率の高いクランクケースリードバルブを採用。排気ポート高さを変えることで低中速域から高速域まで力強い出力特性を得る排気デバイスRCバルブを採用。90度V型2気筒でも1軸式とすることで低フリクション化が推進され、エンジン幅/長ともスリムかつコンパクトにでき、バンク角が深くできる。

そしてフレームも、NSのスチール(F)/アルミ(R)ダブルクレードルから、NSRではRS250Rに同じアルミツインチューブ(ダイヤモンド式)に変更。また90度V2は理論上1次振動がゼロになるのでフレームの軽量化も促進。乾燥重量はNS250Rの144kgから19kgも軽い、125kgに。ホイールは前2.50-17/後3.00-18インチ。

冒頭のような特性をもって大きな支持を受けたNSRは一気にクォーターレプリカの頂点へと向かい、1年少しを置いた1988年1月にはシリーズ中最も速いと言われたMC18型(俗称“ハチハチ”)にモデルチェンジ。市販2輪車世界初のコンピュータ制御式となるPGM(プログラムド)キャブレターを採用。さらにPGM-CDI点火システムやRCバルブ-2なども導入し、それまでにない扱いやすさと速さを手に入れた。このハチハチ、250cc自主規制値の45馬力を遥かに超えて、実質60馬力などとも言われた。

フレームはツインチューブながら素材を四角から異形五角断面材に。ホイールは3.00-17/4.00-18へサイズアップし、リアにはラジアルタイヤを履いた。キャスター角は26から24度へ、トレール量も103から90mmと、運動性優先設定になった。

サーキットやワインディングではライバルを凌ぐ強烈なダッシュ力を実感できたが、何よりもコーナーに入って行く時の車体の倒し込みの軽さと旋回時のスタビリティの高さ、そしてコーナーから間髪入れない小気味よい立ち上がり感が快感。しかも、旋回中のブレーキングもライン変更もまさに自在。2ストレプリカ以外では絶対に味わえない唯一無二の世界を堪能させてくれた。

1988年3月にはロスマンズカラーを施したSP仕様を追加。日本軽金属(株)との共同開発により、量産市販2輪車世界初のマグネシウムホイールを装備し、バネ下重量低減による路面追従性向上をもたらした。

1989年2月にはレース規則変更によってスラントノーズ化。PGMなど細部変更を進め、型式MC18のまま、実質熟成を図った。このように80年代のNSR250Rは、既存の概念にとらわれないで突き進む、ホンダらしさ溢れる1台であった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

【上】=1986年10月デビューの初代NSR250R(MC16)。1987年に青を追加し、1988年1月にMC18=【下】にモデルチェンジ。市販2輪車世界初のPGMキャブを採用。同年3月に量産2輪車で世界初となるマグ合金ホイール装備のSP仕様を追加した

MC18のカタログ内面は「“私”(NSR)の心臓と骨格」として主要構成を写真で紹介。同じくMC18では“MECHA NOTE”としてカウル(空力)やエンジン、キャブ、制御系などを事細かに説明していた

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