カワサキ エリミネーター400(1986)

掲載日:2015年11月06日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

KAWASAKI ELIMINATOR400(1986)
リラックスライドが主と思われていたクルーザーだが、意外な利点が評価され、
エリミネーター400は枠を超えたロングセラーとなった。

クルーザーを超えた1台

低いシート高に長めのリラックススタイル。そんなクルーザーの世界にも、1980年代中盤には新しい波が訪れた。ドラッガー。ドラッグレースイメージのバイクだ。スタンディングスタート=SSから1/4マイル(約401.2m)先のゴールまでフル加速し、隣に並んだバイクとの勝ち負けを競うためのスタイル。

その加速感と力感を表現したボディワークを、クルーザースタイルに合体させた。なぜそうなったかと言えば、ドラッグマシンには低いスタイルと長い車体が当然だから。クルーザーの資質とある意味、近かった。クルーザー自体も直線を走るイメージがあったから、なおさらだ。

ヤマハVMAXと時を同じくする1985年型として、カワサキもエリミネーター(ZL900)を輸出する。このエリミネーター(排除者の意味)は1984年登場の世界最速モデル、GPZ900Rニンジャの908cc直4エンジンを使い、駆動系をシャフトに改めた、ニンジャよりも100mm長い1,595mmのホイールベース。タイヤを18/15インチとした。

国内でもGPz750Rベースのエリミネーター750を1985年に投入するが、これは1年で終了。900の方は1987年にエリミネーター1000に拡大され、シリーズを終了。

前置きが長くなったが、今回紹介するエリミネーター400は、そんなシリーズの流れ、ドラッグマシン的高性能とクルーザー的ロー&ロングという流れに、国内主力市場の400クラスという要素をミックスして展開した1台だ。大排気量エリミと同じ文法で、エンジンはベストセラーのフルカウルスポーツ、GPZ400Rの水冷直4。DOHC4バルブエンジンで、クラス自主規制値の59から5psを落とした54psながら、発生回転は400Rと同じ12,000rpm。回して楽しむことも出来たし、それは低めの車体が生む安心感とも相まって、使いやすさになった。また低速域は400Rより充実化し、ストリートでのゴーストップに有利となった。しかもゆっくり走りたい時は高めのギアを使い滑らかな回転でクルーズも楽しめた。

タイヤも400Rの前後16インチから兄貴分同様の前18/15インチとされたが、コーナリングもなかなかの実力を持っていた。一般的なスポーツバイクに優るとも劣らない安心の旋回力が誰でも安心して楽しめた。ステップは一般的なバータイプで、かつ一般的な位置だったから、バンク角もフォワードステップのクルーザーにありがちな浅い角度ではなく、常識的な速度内であれば狙い通りのラインをトレースできた。

ホイールベースは400Rの1,430mmに対して1,550mmと、120mmも長かった。さらにシート高は720mmと、400Rよりも50mm低く、ほとんどのライダーが安心して両足のかかとを地面につけられた。免許取得間もない初心者や小柄なライダーにとって、この低シート高と扱いやすい4気筒エンジンの組み合わせは特筆ものだった。時にゆったり、時にスポーティに。あらゆるシチュエーションに無理なく入れて、多彩なライダーのワガママを叶える懐の深さがあった。これが、エリミネーター400の真価だった。

ロングホイールベースによる超低シートと大らかな乗り味でしかも低重心。そしてエンジンは回すほどにパワフルで、ゆったり走ることもできる4気筒。ほかにはない独自の持ち味が誰でも気軽に楽しめたのだ。

クルーザーと言えば、長いフロントフォークと大きくアップしたプルバックハンドルという、アメリカンスタイル。だがエリミネーター400は違っていた。短めのバーハンドルを含めたドラッガースタイルのミックスによって、まったく新しいクルーザージャンルを創出した。

このエリミネーター400と弟分250(こちらはGPz250Rの2気筒)の流れは以後のカワサキミドルクルーザーにも引き継がれる。1997~2007年展開のエリミネーター250Vは新作90度Vツインで快速。2015年登場のバルカンS(650cc)もニンジャ650のプラットフォームをローダウンフォルムや調整可能なシート/ハンドル/ステップと組み合わせ、街中を快活に走るアーバンクルーザーとしている。クルーズするだけでない、キレのある走りを楽しむロー&ロングスポーツ。エリミネーター400はそんなニュージャンルの元祖となった1台だった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

1986年2月発売、同年8月にめっきタンク仕様のパーソナルバージョンが追加。1988年の変更で2タイプに分化。「SE」はビキニカウルを追加しキャストホイールを継続、エンジンも黒塗りで精悍にしたドラッグ仕様で。「LX」はハンドルをセミアップに、ホイールをワイヤスポークとしてめっきパーツを多用してクラシカルな雰囲気を演出したレトロ調仕様。1993年にLX系に再統合されて終了する

単色ロングタンク、ローダウンにシートストッパー的なタンデムシートでドラッグイメージを作る。エンジンはGPZ400Rのそれだが最高出力を59→54psとしながら低中速回転を扱いやすくし、ストリートでのダッシュ力が楽しめた。900/750同様にシャフト駆動化。コストアップを承知でメンテフリーと静粛性にこだわった

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