ホンダ レブル(1985)

掲載日:2015年09月11日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA REBEL(1985)
「気負わずにいつでも気軽に乗れるバイク」が破格の低さと
長さ=ロー&ロングで表現され、ロングセラーとなった。それがレブルなのだ。

普通を極めたアメリカン

レブルが登場したのは、レプリカモデル増殖中の1985年のことだった。当時で言うアメリカンスタイルのスポーツバイクとしてデビューすると大方の予想を遥かに超えて、ヒット作となると同時に、1990年代前半にまで続くロングセラーモデルとなる。毎年のモデルチェンジが当然というこの時代、構成もスタンスもほとんど変えずに売れ続けるのは異例。「レブル現象」という言葉が出るぐらいにもなった。

1980年代初頭に販売された250Tマスター/LAカスタムの後継モデル的な、SOHC2バルブの並列2気筒エンジン・クルーザー。ただ、車体はそれらと比べものにならないぐらい低く、長かった。シート高は660mm。女性受けを狙った原付スクーターのそれと同じか、低いぐらい。足着き性はバツグン。長さはホイールベースで1,460mm。現行モデルのCB1100とほとんど同じ。250ccだからと小さくまとめる必要はない、堂々としていていい。でも、無駄に大きいわけではない。そこにあって、パッとまたげて、エンジンはいつでもかかるしイージーな5速…という考えによる作りだった。もちろん車名にも車体にも、排気量表示なんてない。

この欄では何度も紹介してきたように、当時のニューモデルと言えば、エンジンの水冷化を初めとしたハイパワーを生み出すための新技術。車体にもアルミフレームやリンク式リアサスペンションなど、新技術が投入された時期。しかもその新技術によって速くなるという図式。

でも、レブルは違った。そういった目新しい技術は一切なし。エンジンは元々あった125cc改223cc空冷ツイン。フレームは鋼管セミダブルクレードル。リアは2本サスペンション、ブレーキは前1枚ディスクにリアドラム。新しモノ好きからすれば、何をか言わんや的なほどに時代遅れと言うか、オーソドックス。ちなみに北米仕様もあって、同じレブルの名を冠されていた。

しかし、このオーソドックスな構成に、ロー&ロングをミックスしたことにこそ、レブルの価値はあった。とにかく気を遣わない。低中速回転トルクを充実させた360度クランクエンジンは思いのほか低音域が充実していて、車体に合った威風堂々のサウンドを奏でていた。しかも大柄に見える車体ながら、乾燥で137kgと、同クラスのレプリカモデルに近いくらいの軽さ。21psと低めのパワーでも、その走りには不足を感じないぐらい。

さらにはティアドロップ型燃料タンクや前後フェンダー、チェーンケース等、金属パーツやめっきパーツを多用し、安っぽさはほとんど感じられなかった。価格は初代レブルで33万9,000円。250ccはどちらかと言えば小さめの排気量だったからチープ感や安物イメージが付きやすかったが、そうした感覚を一蹴する作りだった。

レブルが発表された直後にサッと飛びついたのは、ビギナーや小柄なライダー。とりわけ中高年の、当時でもいたリターンライダーは、レブルを大歓迎した。彼らにしてみれば、シートが高いバイクや前傾度が強いバイクなどは要らない。カウルも邪魔だ。普通に風を受けて、アップライトで両足がベッタリと着いて、普通に走れる普通のレブルに痛く共感したのだろう。

レーサーレプリカが全盛に至る節目の時代とも言うべき1980年代半ばにして、既にライダーの多くは普通のバイクに飢え始めていたのだろう。盛り上がりのあるジャンルは大きく捉えられがちだが、地味に見えつつもレブルがヒット作になったのには、そんなサイレントマジョリティの支持があったのだ。

「こんなカッコでこう乗りなさい」と乗り方やスタイルを決められること=お仕着せに対するREBEL、つまり反逆というスタイルが受け入れられた。そんな1台だった。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

REBELには当初から1万円高でREBELスペシャルが設定されていた。初代は白ベースに金箔のようなラインを入れて高級感アップ

1986年のスペシャルは限定4,000台で、黒基調にゴールドパーツ、唐草模様と火の鳥パターンをゴールドでデザイン。この存在感に負けないように乗れ、と言う意味だったのか

1986年末にはツインキャブ化、1990年にはエンジン外観を変え、1994年にはマフラーを左右→右2本出しに。1996年2月には最終型=掲載のカタログとなるが、ここまで10年間、ほぼ一貫したロー&ロングで支持を得続けてきた

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