ホンダ CB250RS/RS-Z(1980)

掲載日:2014年08月08日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA CB250RS / RS-Z(1980)

世界GPで活躍した片山敬済がイメージキャラクターだった。車体色は赤と青の2色。タンクとカウル上面にピンストライプ入りデカールをセット

急増するバイクファンの入門用に、軽く扱いやすくシンプルな作り込みのCB250RSが誕生。
ハイテク満載車にはない魅力が溢れている。

元祖シングルスポーツ

25馬力のバイクが35馬力のそれよりも速い! と、いうと昔も今も多くの人は信じない。しかし、馬力は速さを決定づける要素の一部であってすべてではないことを理解するには、相応の経験や感受性が必要とされるのかもしれない。

’80年3月にデビューした単気筒スポーツ、CB250RSは見通しの悪いタイトコーナーが続くような、しかも荒れた路面、濡れた路面や初めてのワインディングロードなら、その速さと楽しさはピカイチだった。

排気音も昔ながらのドドドッというピストンの上下をイメージするものではなく、アイドル回転では軽いパルス感を発しながら、少し回転を上げるとバランサー効果によって振動はサッと消えてギュイーンという連続音に。それまでにない新しい時代の単気筒エンジンを思わせた。

新鮮な驚きはエンジンだけではなかった。25馬力を誰でも手軽に引き出せる250単気筒専用の軽量性としなやかさを持つフレームは、エンジンを車体の強度メンバーとするダイヤモンド式。しなりやすいフレームがエンジンのキャラクターと絶妙にマッチしていたのだ。だから「ひらり、俊足。現代シングル」というカタログのキャッチはこれ以上当てはまるものがないというほどドンピシャの表現だった。

そんな機械としての魅力だけではなく、当時は時代がCB250RSを後押しした。’76年のラッタッタことロードパルの発売以降、女性層を含めたライダー人口の大幅な増加で、入門用の250ccクラスが俄然注目され始めたのだ。

この時期にビッグヒットしたヤマハRZ250は2ストのピーキーなエンジンで、乗り手を選ぶスパルタンな性格。対するCB250RSは誰もがすぐに楽しめる4スト単気筒の秀才タイプ。しかも低価格。まさに対照的なキャラクターだった。

当時のホンダは並列2気筒のベーシックスポーツ・CB250Tとヨーロピアンスポーツ・ホークCB250N、そしてオフロードのXL250Sを持ち、このCB250RSでさらなる250ccクラスの拡充を図ったのだ。ちなみにCB250Tの車重は174kgだが、CB250RSは128kg。その差46kgは初心者や女性には大きかった。

SOHC4バルブ・デュアルエキゾースト・2軸チェーンバランサー内蔵のXL250Sのエンジンを流用したCB250RSはクラスでもっとも取りまわしが楽なバイクで、同時にスリムな車体で抜群の足着き性を発揮して、多くの新規ファンや女性ファンを増やしていったのだ。

2モーション式センタースタンドも非力なライダーに支持された。スタンドが半出し状態で停止し態勢を整えてから再度、車体を引き上げられる、ありがたい装備。ハンドルはアップ型が基本で、軽い前傾姿勢となるセミフラット型も用意された。

’81年になるとキック始動式だった同車に、セルモーター装備のCB250RS-Zが加わった。燃焼室形状と圧縮比変更による1馬力アップ、低燃費化のほかセミエア式フロントサス、ハロゲンライト、2ポット式フロントブレーキ、キー付小物入れ装備のリヤカウル、めっきのハンドルバーなどで、装備を充実したモデルだ。8月には鈴鹿8耐優勝記念限定車のCB250RS-ZR(カウル付き白赤色)も発売された。

’83年になると、新設計のDOHCエンジンとセミダブルクレードル型フレームを持つCBX250RSSへ進化。放射状の4バルブ配置RFVCとデュアルキャブにより30馬力へ大幅アップ。12月には外観を’60年代風クラシカルデザインとしたGB250クラブマンがデビュー。250cc車の新たな魅力を提案した。

さて、CB250RSデビュー時期に楕円ピストンのNRで世界GPに参戦していたホンダは、水冷V型4ストエンジンの優秀性を証明するため、革新的なVT250Fを’82年に発売した。人気のRZ250に真っ向から対抗する前輪16インチ化、アンチダイブ機構、リンク式リヤサス、超高回転型エンジンでRZと同じ35馬力とするなど驚異の最新メカとスペックを誇っていた。

このVT出現で、時代はハイテク高性能主義へ。4スト250cc単気筒スポーツは脇役へとシフトしたが、シンプル・イズ・ベストといえばまず最初に思い浮かべるのはやはりこのCB250RSなのである。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

’81年に3万円アップのセル付CB250RS-Zを追加。金のピンストライプ入りで赤、黒、銀の3色。出力&燃費向上、セミエア式フロントサス、ハロゲンライト、2Pブレーキキャリパー、新ディスクローター、キー付きリヤカウル小物入れ、めっきのハンドルとブレーキペダル、ステップホルダーを採用。エンジンも黒からアルミ地へ。黒かったFフォークアウターチューブはバフ掛け仕様へ

XL250S系のトルクフルなエンジンをロードスポーツ用にリファインしたCB250RSは、誰でも気持ちよくコーナリングできる絶妙のエンジン&車体剛性バランスを誇った。速さもさることながら、操る楽しさを強く実感させるという意味ではエポックメイキングな1台だった。折しも2011年春に登場するCBR250Rも軽量スリムな単気筒スポーツ。250ccロードスポーツの原点回帰かもしれない

最終的にCB250RS-Zでは燃焼室形状と圧縮比アップで25から26馬力に、トルクは2.2から2.3kg-mに、燃費は50から53km/Lに改善された。ちなみにエンジンの単体重量は37kgだった。バランサー装備で車体の軽量化にも成功。インテグレーテッド・ストリームラインのスタイルはCB750Fを彷彿させる

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