スズキ GSX400E(1980)

掲載日:2014年08月01日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

SUZUKI GSX400E(1980)
GSシリーズで4ストローク技術に自信を得たスズキが打った次なる手はDOHC4バルブ化。
スズキが4ストエンジンで一歩先を歩み始めた。

ハイメカ中型ツイン

2ストロークのスズキが4スト4気筒のGS750、GS550に続いて並列2気筒のGS400を発表したのは1976年12月。本格的に4ストのエンジン分野に参入したのは日本の4社で最後発だった。

しかし、だからこそスズキは絶対の信頼性を最優先した4ストエンジンの開発に傾注した。そして総力を掛けて開発したGSシリーズを成功させ、大きな自信を得たスズキはすかさず次の手を打った。それがGSXシリーズだった。

1980年に登場したGSX750EもGSX400Eも、スタイルは伝統的で端正な美のGSに対して、力強く独創的造形に満ちたもの。ライバルに追いつき、追い越す意気込みがまず形に表れていたのだ。

GSX400EのエンジンテイストはGS400と同様に180度クランクエンジンならではのリズミカルな鼓動とスポーティな走り味をアピールした。

空冷並列2気筒180度クランクというエンジンの基本レイアウトはそのままだが、65×60mmから67×56.6mmへショートストローク化。他社よりも一歩先を行く1気筒あたり4バルブとDOHCを採用した。

さらにスズキは、燃焼効率アップのための新技術としてTSCCを採用した。これはツイン・スワール・コンバスチョン・チャンバーの略だが、吸入行程時にふたつの渦流ができるように、シリンダーヘッドにふたつのドーム状燃焼室をセットしたもの。渦流による混合気の急速な流れが燃焼スピードを高めるものだ。

これらにより、エンジン出力はGS400の39馬力からGSXでは一気に44馬力へと向上し、レッドゾーンも9千回転から9千5百回転へアップ。ライダーのスロットル操作に、より敏感に反応するスポーティなエンジンへと進化したのだった。

GSXはGSから引き継いだギヤ駆動によるバランサーを装備して不快な振動もなく、鋭い吹け上がりが楽しめるエンジンだった。

足まわりでもGSX400Eは先進性を見せつけ、当時世界GP500ccクラスで4年連続メーカーチャンピオンを獲得していたRGB500も装備したアンチ・ノーズダイブ機構を、GSX750Eとともに世界初の採用。アンチ・ノーズ・ダイブ・フォークを略してカタログにはANDFと表記した。

乗り心地を考えればソフトに動くサスが必要だが、ソフト設定では制動時のノーズダイブが大きくなる。ANDFはブレーキレバー入力の液圧上昇と連動して、制動時の姿勢安定性を確保する、フロントサスの圧側減衰力を高めるシステムだった。興味深いのはフロントフォークのストローク変位とブレーキ圧力の相関図だけでなく、ノーズダイブした時のフロントブレーキ圧力とリヤサスの変位相関図も明記したことだ。つまりノーズダイブが少ないとリヤ側の浮き上がりが少なくなるという証明を今回掲載できなかった他のGSX400Eのカタログでは行っていた。

もちろん、GSX400Eは他の装備も充実していた。GS400から受け継いだギヤポジションインジケーターがとりわけ便利だった。個性的だったのはウインカースイッチ。左右に動かすと通常の右左折表示となるのだが、上下方向にも動き、ヘッドライトのハイとローの切り替えになっていた。ホーンのボタンも内側にスライドさせるとパッシングライトとして機能する。それらはひとつのボタンにふたつの機能を持たせる合理的な方式だった。

翌’81年2月にはフロントをダブルディスクブレーキ化した。アンチダイブ機構も外観が変わり、ブレーキキャリパーも変更。タイヤは3.00S18-4PR、3.50S18-4PRから、3.60S18-4PR、4.10S18-4PRにサイズ変更。タイヤ銘柄は北米で人気が高かったIRC製を引き続き採用した。

400ccツインが北米市場では入門用として人気だが、日本ではミドルクラスはこの頃から4気筒車の時代へシフトしスズキも同年5月にGSX400Fを同社初のミドル4気筒として誕生させた。短命に終わったGSX400Eだが、強い個性は今なお色あせず輝きを放っている。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

400ccクラスでも軽量性を誇ったGSX400E。ダブルディスク化しても乾燥重量で174.7kg。’81年型はカラーリング変更のほか、サイドリフレクターを省略。またタンク容量の表記も14.5Lから14Lへ変更。ホーン取り付け位置も下面から正面向きとなるなどの小変更があった

GSシリーズで高評価を得たスズキはエンジンのDOHC4バルブ化を進め、スワール効果を使った燃焼促進技術TSCCも投入。TSCCは後にGSX1100Sカタナでも採用し、ヤマハも同じ時期にスワール効果を狙った技術(別の名称)を採用。アンチダイブメカのほかアルミフレーム、前輪16インチ、リンクサスなどハイテク技術導入がこの後、一気に進んだ時期

カタログは前輪ダブルディスクになった後期型のもの。カラーリングのほか、変更の目玉はアンチダイブメカのANDFだが、前輪シングルディスクの初期型とはANDFの形状やブレーキホースの取り回しが異なっている。フロントフォークのアウターチューブはバフ掛け仕様で高級感をアップした

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