ホンダ XLX250R(1983)

掲載日:2014年04月25日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

HONDA XLX250R(1983)
4ストオフの名門を長くアピールしてきたホンダの新たなトライ……。
それが放射状バルブRFVC技術搭載のパワフルマシンXLX250Rだった。

鋭いダッシュが魅力だ

ホンダの4スト単気筒250ccオフローダーの歴史は長く、1972年のSL250Sから始まる。4スト単気筒の走りに大きな変化が訪れたのは’82年のXL250Rでのプロリンク式リヤサスの導入による大幅な走破力アップだった。そしてその翌年、’83年4月に登場したXLX250R(以下、XLX)では、エンジンの変革が大きな特徴だった。足まわりの大幅な進化はエンジン出力アップを要求するという流れだ。

XLXの新エンジンはそれまでのような4バルブ方式ではなく、RFVC(Radial FourValve Combustion Chambar)と呼ぶ4本のバルブを放射状に配置したものだ。OHVでは1964年まで存在した英国エクセルシャーが、近年ではBMWがR1200系にも採用。理想的な燃焼室形状とし、センタープラグ配置との組み合わせによって均一な火炎伝播性能を得て燃焼効率をさらにアップさせたものだった。ホンダはこの放射状バルブ配置を後のXLR系に継続して採用。ホンダ4スト・オフのひとつの象徴的な技術のひとつとして定着していった。

このRFVCを採用することにより、吸・排気のバルブ径を大きくすることが可能となり、デュアルキャブレターシステムとデュアルエキゾーストシステムの組み合わせにより、吸・排気効率を大きくアップさせた。

そのデュアルキャブレターシステムは、低中速域ではひとつのキャブが対応。スロットル開度が一定以上になるとふたつめのキャブも作動する。吸入路にリードバルブを設定したことも含めて、それまでにないガッツ感溢れるダイレクトなパワーフィールを得ることに成功した。

ホンダは2ストのモトクロッサーCRシリーズと同じようにXRを4ストのモトクロッサーとして位置づけたことが、ガッツ感のあるパワーの背景にあった。前後サスの味付けもまさにCRのような姿勢変化を少なくしたハードな設定だったが、そのXRの流れを汲むXL系のXLXも例外ではなかった。

ちなみに輸出専用車だったXR350Rをボアダウンして国内市販車のXLX250Rが生まれた形だ。それまでXL系先行でXR系が後追い開発されていたが、XLX以降はXR先行でXL系がその下に生まれる流れに変わっている。

シャシーまわりでは、エンジン本体がフレームの強度メンバーとなるダイヤモンド式フレームを止めて、より高い強度と剛性を求めてXLXからセミダブルクレードル型を新たに採用。そのシャシーは、’80年代後半になるとCR系とは異なる独自の味付けを、ホンダはXRシリーズで展開していった。具体的にはマイペースで走るウッズライディングでも無類の走破力が発揮できるもの。XLXのリヤサスはプロリンク式だがコンロッドおよびクッションアームにジュラルミン鍛造を採用して軽量化を狙った。なお、伸び側減衰力は4段階に調整可能。フロントサスはフリクション増加を防止する機能を内蔵したセミエア式を採用していた。

この頃のリンク式サスのバイクは、ツインショック式よりも車重が重めだったが、これはリンク部にかかる何トンもの荷重やフレームへの応力や必要強度などが多めに設定されていたためだ。だが、リンク式サスの導入で、足まわりの剛性アップや大幅なマス集中が図れ、重量アップのハンデを跳ね返し、2本式サスとは異次元の走りを可能とした。なお、エンジン始動はセルモーター式ではなく、キック式のみ。キックは重くて初心者や女性には少し手強いものだった。

デザインに目を向ければ、それまでの丸いヘッドライトから四角いヘッドライトへ。メーター類もそれぞれに四角い速度計と別体タコメーターを装備。四角いバックミラー、四角いウインカーランプも含めて、それまでのXL路線とは一線を画すグレード感の高いデザインとした。

XLXがデビューした’83年は、ライバルのヤマハとの熾烈な競争が続いた時期で、奇しくもDOHC 4バルブ・ツインキャブ単気筒のXT250Tが、同じ4月に同じ価格でデビュー。ヤマハはDOHCを採用するもホンダはSOHC。そしてモトクロッサーが4スト主流となった現代でも、ヤマハはYZFでDOHCを、ホンダはユニカムを採用。オフ車で部品点数が増え重量に関わるDOHCを避ける姿勢は、この時代から培われたものだったのだ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

バルブ面積の極大化と理想的な燃焼室に大きく貢献する、放射状バルブシステムRFVCのエンジンは、センタープラグ配置をデュアルキャブレターと組み合わせて、スロットを開けた瞬間に味わえるガッツ感溢れるパワーを約束した。それでいて1次バランサーを装備したことで、エンジンの振動は大幅に減って非常に快適な走りを可能にしていた。エンジンは競技専用の輸出車XR350Rからのボアダウンで生まれたもので、堂々とした車格を醸し出している

カタログは現代で多く使われる合成写真などではなく、実際に海外ロケに出掛けて雄大な大地にこそXLX250Rが似合うことをアピールしている。前輪が浮いている写真などは採用しないなど過激な表現、刺激的な表現を避ける現代のカタログとは異なって、まさにワイルドで自由奔放な雰囲気に溢れている。今見ても訴求力抜群だ

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