掲載日:2014年02月26日 絶版ミドルバイク
文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)
記事提供/ロードライダー編集部
※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです
NV400SPとNV400カスタムは1983年に登場。’83年といえば原付1種の速度リミッターが60km/hとなり、NHK朝の連続テレビ小説では「おしん」が放映され、東京ディズニーランドがオープンした年だ。そして日本製バイクの生産量がピークを記録した年でもある。
この頃のホンダの400cc車はこの2台のほか、直列4気筒の空冷CBR400F、CBX400カスタム、V4のVF400F、並列2気筒のCB400LCだけではなく、縦置きVツインのCXユーロ、CX400カスタムをリリースしていた。
直4のホンダとしてCBR400Fで2バルブ/4バルブ切替えの新システムREV(レボリューション・モジュレーテッド・バルブコントロール=バルブ休止機構)を導入してライバルに対抗。一方でV型エンジンのホンダとして縦置きと横置きの水冷Vツインをリリース。しかもいずれもアメリカン(ホンダはアメリカンの呼称をカスタムとしていた)を用意。まさに充実の400ccクラスだったのだ。
そんなホンダ400の中で、地味ながら独自のテイストを放ったのがNV400SPだった。輸出仕様のVT500Eと外観は同じであり、ダートトラッカースタイルのVT500アスコットとも基本構成は同じ。
NV400SPは、あえて90度Vツインとせず、52度としてエンジンの前後長を短く、全体の軽量・コンパクト性を確保しながら、クランクを位相(オフセット:デュアルピン・クランクシャフト)させて一次振動を大幅に減らす手法を導入。新規性を打ち出すこだわりをみせた。
燃焼室は気筒当たり2個の点火プラグに吸気2、排気1バルブの水冷SOHC3バルブ。駆動系はノーメンテナンスで清潔感・静粛性に優れるシャフトドライブを採用。非常に静かなエンジンと相まってVツインテイストが存分に楽しめる設定。
ホイールはキャストホイールの軽量高剛性とスポークホイールのしなやかな乗り味の両立を目指したブーメラン型コムスター。前輪ブレーキにはインボード式ベンチレーテッド・ディスクを採用。この構成は基本的にVT250Fと同じだ。
すでに16インチホイールが前輪に採用されていた時代だが、あらゆる道で穏やかな操舵レスポンスが得られることを優先して、ホイールは前後とも18インチ。
フロントサスはエアアシスト式。左右のフォークを連結して剛性を高めるフォークブレースを装備。リヤショックはデュアルレートスプリングとホンダ独自のFVQダンパー式。
VT250Fと同じビキニタイプ(ハンドルマウント型)カウル内のメーターデザインもVT250Fの流れを汲む、速度計とタコメーターは針の0起点を水平配置したタイプ。
横置きクランクのVツインでもVT250Fは打倒RZ250に燃えたバイク。対して輸出モデルVT500Eの姉妹車NV400SPはあくまでも落ち着きのあるデザインと走り味を主張した。カーブでは車体の倒し込み反応が穏やかで、しかも路面からの情報もたっぷり。それでいてハイペースでも安定して、エンジンテイストをさまざまな回転域で楽しむことができた。
目立つ存在ではなかったが、走るほど味わい深くなるタイプ。その大きなポイントはやはりエンジンであった。そのエンジンは、後にVツインスポーツとして人気を得ることになるブロス(北米名:ホークGT)、アフリカツイン、トランザルプ、ドゥービル、パシフィックコースト、大ベストセラーとなったスティード(非位相クランク採用)、DN-01、そして現行アメリカンのシャドウ……など、非常に長い間にわたって活躍。非常に滑らかで、なおかつトラブルが少ないタフなこのエンジンは、約30年が経過しようとしているにも関わらず、今なお魅力が色あせない希有な存在なのである。
滑らかさ・静粛性・耐久性において今でも世界トップクラスに君臨するNV400SPのVツインエンジン。まさに旅の道具として最適のキャラクターだ。当時、用意されたアクセサリーも大型のタンクバッグにソフトバッグなど、装備オプションが充実していた
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