ヤマハ RZ250R(1983)

掲載日:2014年02月28日 絶版ミドルバイク    

文/柏 秀樹(柏 秀樹のライディングスクール『 KRS 』)

記事提供/ロードライダー編集部

※この記事はカスタムNo.1マガジン『ロードライダー』の人気企画『ミドルバイク流星群』を再編集したものです

YAMAHA RZ250R(1983)
話題沸騰で納車待ちが続いた初代RZ250。
そして2代目はライバルを意識しつつ、独自の持ち味をどのように継承したのだろうか?

前面に出た大人の速さ

’80年代前期はハイテク至上主義とひとことで集約できる時代だった。2スト&4ストを問わず、エンジンの水冷化が一気に進み、さらに2ストは排気デバイスの導入の時代へ……。車体系ではステアリングヘッドからスイングアームピボットまでを直線的に結ぶフレームと前輪の小径化、アンチノーズダイブメカとリンク式リヤサスの採用、カウルの導入などがその代表例だった。

250ccクラスに絞れば、ナナハンキラーの異名を持ち35馬力の高出力で大きな話題を呼んだ、’80年のRZ250が登場し、約2年後に登場したVT250Fが4ストで同じ馬力を出してパワー競争時代が到来。

ホンダはGPシーンでのNR500の技術力とイメージをシフトしてVTを、2ストでもNS500を彷彿させる3気筒のMVX250Fを’83年に投入。RZより5馬力も上を行く40馬力を誇示して250ccクラスナンバーワンをアピールしたが、それも束の間、MVX登場の約1カ月後には、43馬力の新型RZが登場。今回紹介するのはその新型、2代目RZ250Rである。

エンジンは水冷54×54mm、ピストンリードバルブという構成は変わらないものの、GPマシンに採用した排気デバイス・YPVS(ヤマハ・パワー・バルブ・システム)を装着。これによって8馬力もの大幅な出力アップを果たしながら、幅広いエンジン回転域で高いトルクを確保することに成功した。

シャシーまわりも新作となり、オーソドックスなダブルクレードル型から、ステアリングヘッドからスイングアームピボット部を直線的に結ぶタイプへと進化。ホイールベースは初代の1355mmから2代目は1385mmと30mm長くなり、乾燥重量は139kgから145kgへと6kg重くなった。車体サイズアップだけではなく、フロントブレーキをダブルディスク化し、リヤもドラム式からディスク化したことが重量アップの主たる要因だった。

足まわりに目を転じれば、同社がモノクロスサスと呼称したカンチレバー式のリヤサスを、リンク式リヤサスへ変更することでさらに優れた衝撃吸収性を実現した。前後ホイールは18インチのままだが、スパイラル状のアルミキャストから新作ニューイタリックと呼ぶアルミキャストホイールへと変更した。

VT250Fが採用したビキニカウルはメーターバイザーという名称で当局の認可を受けたが、実質的にはこの時期からカウルが解禁されたことになり、RZ250Rもその流れで丸形ヘッドライトのハンドルマウント型ビキニカウルを正式採用。実際にはヤマハ専門店YSP限定仕様車が、輸出仕様の転用としてビキニカウル付きRZ250を先行販売した後なので、正確にはRZ250Rはヤマハのカウル付き車の2代目に当たる。ともあれ、VTが赤色フレームならRZも赤、というように馬力だけでなく細々したことすべてにお互いが対抗意識を燃やしていた。

RZ250Rは実際に走らせると、初代RZとは比較にならないほど落ち着いた乗り味で、体感的には初代よりも速く感じることはなかった。エンジンは高回転まで引っ張らなくてもパワーもレスポンスも優れ、低中速回転域だけではなく、高回転時でも車体はひとクラス上の落ち着きを保った。車体サイズと重量の増加も関係したと思われるが、250ccのジャジャ馬が350ccのジェントルマシンに変わった激変ぶりだった。

世界中で高い人気を誇るバイクとして成長させるには、一部のファンが喜ぶようなジャジャ馬よりも、誰にも安心して乗れる大人の味付けが欠かせない、という判断があったからと推測できる。初代は乗り手の技量を問うバイクだったが、2代目は誰が乗ってもサーキットで良いタイムが出せる優等生的な2ストマシンへと進化したわけだ。しかし、長いストローク感を感じる前後サスやコーナー出口に向けてのフル加速時でコシのある伸び減衰を感じさせるフロントサスなど、ヤマハらしい伝統の持ち味は継承されていた。

RZ250Rは約1年後にフレームマウントの大型カウルを装備し、パワーアップして、さらにレーシーイメージを強めたRZ250RRへと進化。このあとにレプリカ路線を継承したのがTZR250だ。

カタログは時代の証明。カタログで知る名車の系譜…

マイコン制御で排気ポートのタイミングを最適化することにより低中速回転域のトルクを充実させ、高回転のパワーを引きだすYPVS採用。フロントサスは加速時の接地性を考慮したバリアブルダンパーを内蔵。リヤサスはリンク式に

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