『バイク乗りの勘所』

ハイグリップタイヤには、まだ早い

掲載日:2013年05月27日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

前回、チェーンの張りすぎについて “何度も繰り返して書きたくなる” と書いた。タイヤの選定についても同じく、2012年11月26日のコラム『ハイグリップタイヤはグリップがいい?』に書いているが、補足を込めて、もう一度書いておきたい。今回のタイトルの “まだ早い” というのは、季節的な意味とテクニック的な意味の両方である。ようやく夏日(最高気温が25℃以上30℃未満)が現われだしたばかりのこの時期は、ハイグリップタイヤが充分な性能を発揮するには “まだ早い” のだ。

誤解のないようにつけ加えておくと、ここで言う “ハイグリップタイヤ” は、最近の重量車向けに開発された高性能タイヤの中でも最もレース用に近い製品群のことである。ツーリング向き、スポーツ向き、サーキット向きの3種類に無理やり分ければ、サーキット向きに分類される物だ。それでいながら、いわゆるレース専用パーツのような “CLOSED CIRCUIT USE ONLY” といった表示はなく、その気になればだれだって(サイズさえ合えば)自分のマシンに装着できる。

だが、こいつをそれらしく使う…というか、こいつがツーリング向きやスポーツ向きのタイヤよりも高いグリップ力を発揮するためには、高い温度と大きな荷重が必要なのである。タイヤウォーマーを用い、素手では触りたくないくらいの温度に加熱して使うレース用タイヤほどではなくても、それに近い傾向はあり、夏日よりもさらに暑い真夏日(最高気温が30℃以上35℃未満)や猛暑日(最高気温が35℃以上になる日)の日中、日の当たる路面でようやく本領を発揮するのだ。

もちろん、路面温度の低さをカバーすべく、ライディングによって大きな荷重を与え、繰り返し変形させることでタイヤの温度を上げるテクニックもある。だが、そういった条件が整わなければ、ツーリング向きやスポーツ向きのタイヤよりも低いグリップ力しか発揮しないのがサーキット向きタイヤなのである。これからタイヤ交換をしようという人は、この夏に使い切るのか、寒くなるまで使うのかも含めて、よく考え、使用環境とテクニックに合った製品を選んでほしい。

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