『バイク乗りの勘所』

ハイグリップタイヤはグリップがいい?

掲載日:2012年11月26日 タメになるショートコラム集バイク乗りの勘所    

Text/Nobuya YOSHIMURA

ここ10年ほど、リターンライダーの増加が止まらない。彼らの大半は、1980年代のブームが終わるとともにバイクを降り、10~20年ほど経って再び乗りはじめた世代である。何がきっかけで、どんなバイクとともに、どこを走りたくてリターンしたかは、人それぞれ。ただ、彼らには、いくつかの共通する特徴がある。そういう私も、降りるのもリターンするのも少々早かったとはいえ、1990年代の10年間、まったく乗っていなかったから、リターンライダーの一員である。

共通する特徴のうち、ライディングテクニックや今の交通環境への適応などについては、機会を改めて書くことにして、今回は用品選び、中でもタイヤに関する話をしたい。一言で言うと、20~30年前の商品知識や技術論を引きずっている人が多いのである。峠道を攻めるような場合はタイヤの空気圧を低めにしたほうが良い…なんてのもその一例だが、もっと基本的なところで、いわゆるハイグリップタイヤに対して、間違った(古い)認識を持っている人が多いのに驚く。

20~30年前のストリートタイヤは、鰻重で言うところの “松・竹・梅” みたいなグレードしかなく、夏だろうが冬だろうが、スポーツ走行だろうが街乗りだろうが、どんな使い方でも、松は竹や梅よりもグリップが良かった。だから、ハイグリップタイヤが欲しい場合は、とりあえず松を選べば良かった(松を選ぶしかなかった)。だが、今は違う。グリップだけではなく、操縦性、耐荷重、乗り心地、耐久性など、それぞれの性能を高めた各種のタイヤが開発されている。

おまけに、最もグリップの良いストリート用タイヤは、レース用との差が縮まり、温度依存性が高くなっている。タイヤウォーマーや高荷重走行で温度を上げないと能力を発揮しないのだ。これは極端な例だが、グリップの良さを売りにするタイヤには、多少なりともその傾向があり、低温時には、グリップの良さを売りにしないツーリング用タイヤのほうが、実はグリップが良かったりする。そのあたりを考え、自分の走りと環境に応じたタイヤ選びをおすすめしたい。

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索