掲載日:2026年09月19日 フォトTOPICS
写真・文/小松 男


まず結論から言う。今回出てくるのは、復刻品じゃねえ。「あの頃の雰囲気を再現しました」なんて代物でもねえ。当時、実際に工場で作られ、車体に付けられてた純正のエンブレムが、そのままの状態で出てくるんだ。
普通、こういう物はひっそり捨てられる場合が多い。在庫はコストだ。置き場所は金だ。10年、20年と場所を食うだけのパーツを、いつまでも取っておく会社なんて、そうはねえ。それでもカワサキは残していた。そして今度、それを市場に放り込む。手を加えず、偽らず、当時のままでだ。

考えてみろ。70年代から90年代っていや、もう40年、50年前だ。このエンブレムを箱に詰めた人は、とうに現場を離れてる。倉庫だって何度も建て替わったはずだ。それでも箱は残った。誰かが「いつか、必要な人が現れる」と言い続けたんだ。その「いつか」が、いま来た。9月28日だ。
レストアをやってる奴なら、この重みがわかるはずだ。リプロ品なら探せばある。だが「その年の、本物」は金を積んでも買えなかった。車体は完璧なのに、バッジだけリプロ——そんな悔しさを味わった兄貴は、山ほどいる。今回、その借りを返せる。なにせ40年、50年前の本物なんだからな。

ラインアップの規模が、もう冗談じゃねえ。KZ・Z系を筆頭に、Vulcan、Voyagerまで、89モデル分、合計123アイテム。発表された名前を見ただけで、声が漏れる。
1972年、Z1。ショーウインドーの向こうに、指をくわえて眺めただけの「いつか」の少年。1978年、Z1-R。レーサーの切れ味を、噂話で追いかけた記憶。1983年、Spectre。近所の兄貴が乗っていて、宿題の答えより先に排気音を覚えたあの一台。……それらのサイドカバー純正エンブレムが手に入るんだぞ!

Z系だけじゃない。Vulcan、Voyagerなんかの平成を走り抜けたクルーザー陣も揃っている。89モデルって数字は、ただの型番の羅列じゃねえ。カワサキという会社が積み上げてきた歴史、そのものだ。ページをめくるたび、忘れかけた記憶が顔を出す。
エンブレムは、その時代の「顔」だ。ロゴじゃねえ、記憶だ。飾りじゃねえ、勲章だ。自分の車体に戻した瞬間、あの日の風と、ガソリンの匂いと、心臓の音が戻ってくる。純正ってのは、そういうもんだ。

販売開始は2026年9月28日(月)。場所はカワサキオンラインショップ。目当てのページはここだ。
https://kawasaki-onlineshop.jp/shop/r/rEMBLEMS/
「あとで見る」はなしだ。今すぐブックマークしろ。
そしてよく聞け。これは在庫限りだ。再入荷なし。再生産なし。売り切れたら、それで終わり。二度と出てこない。しかも長期間しまってあった在庫品だから、外観や状態には個体差がある。裏を返せば、世界に同じ物は二つとねえ。一秒で、その一個は他人の宝物になる。手に取って見つけた傷は、40年を生きた勲章だと思え。

ひとつだけ助言だ。自分の車種の型式と年式は、前もって洗い出しておけ。パーツリストと照合も済ませておけ。開戦の日、迷った瞬間に勝敗は決まる。
「給料日が入ったら買う」——この世界で一番間抜けなセリフだ。先に動いた奴が、全部持っていく。それがルールだ。ずっとそうだったろ。
なぜカワサキは、こんなことをしたのか。たぶん、わかってたんだろう。エンブレムが、ただのパーツじゃねえってことを。あの時代を、その機械が生きた証だってことを。あの時代を生きたオーナーの勲章だってことを。
今夜もガレージでレストアを続ける兄貴へ。コレクションケースにまだ空きがある兄貴へ。昭和の本物の顔を、自分の目で見てみたい若い衆へ。金庫の扉が開くのは、一度きりだ。二度はねえ。
旧車は、ガソリンだけじゃ走らねえ。記憶と、執念と、こういう馬鹿げたほど熱い想いで走ってる。今回のエンブレム放出は、その記憶と執念への給油だ。カワサキは満タンで差し出した。あとは俺たちが、スロットルを開けるだけだ。

9月28日。カレンダーに印をつけろ。指を研いでおけ。迷った奴は負ける。動いた奴が、全部持っていく。
熱い気持ちと、クリックする指を準備しておけ。








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