掲載日:2023年01月11日 フォトTOPICS
取材・写真・文/河野 正士
日立アステモとして2年目のEICMA参加となった2022年。2014年からSHOWAブランドでEICMAに参加。一昨年2021年1月1日に新会社/日立アステモがスタートし、その11月に開催されたEICMAは日立アステモとして初の参加と言うこともあり、先進運転支援システムなどを開発する日立オートモーティブシステムズ、燃料供給システム電子制御システムのケーヒン、サスペンションのショーワ、ブレーキのニッシンの、4つのブランドの最先端技術やプロダクトの紹介を行った。
そして2年目となったEICMA2022では、その4ブランドが集まったことで実現可能となった、現在開発中のADAS(Advanced Driver-Assistance Systems/先進運転支援システム)や、小型電動バイク向けのシステムソリューションを展開した。
注目は、やはりADASだ。すでに二輪完成車メーカーからは、ミリ波レーダー利用した、設定した速度を上限に車間距離を自動で調整するACC(アクティブ・クルーズコントロール)や、後方死角に居る/または近づく後続車を検知するBSD(ブランインド・スポット検出)など、他ブランドが開発したADAS装備の車両が発売されている。
対する日立アステモは、ADASの要である前方検知に、ライバルが採用するミリ波レーダーではなく、すでに四輪ADASで実績のあるステレオカメラを採用。さらにはサスペンション、スロットル操作やFIシステム、ブレーキシステムを連動させることで、高い安全性を維持しながらADASの構築を目指しているという。
ユニークなのは、ADASに関係するシステムを2つ展示していたことだ。
ひとつは大型車用のシステム。前方の危険を察知して自動的にアクセルが戻ったりブレーキを掛けたりする自動減速システムや自動ブレーキといった安全性を高めるADASにくわえ、電子制御サスペンション特有のリアルタイムでサスペンション特性を変化させることができる機能やACCといった、安全性と快適性を高めるADASを複合的に作動させるシステムだ。
前方検知のステレオカメラは、ミリ波では判断できない、車線や標識、それに前方車両の大きさや、ヒトや自転車やクルマなど、前方状況を視覚的に捉え、詳細な情報を得ることができる。その情報を元に、サポートできる機能の幅を広げ、高い拡張性を持つことが大きなメリットとなるのだという。
もうひとつは、小排気量コミューターへの搭載を考慮したシステムだ。移動手段として日常生活に浸透し、また配送ツールとして活躍する小排気量コミューターは、低価格で販売台数も多い。その小排気量コミューターに搭載するために、大型車用ADASから快適性を除外し、さらにシステムを簡略化することで、安価で世の中に広めるためのADAS構築を目指しているのだ。
小排気量コミューターの販売台数も事故件数も多いアセアン地域の二輪車事故を調査すると、直進での衝突事故が多く、その直前に回避行動が取れていない。そのような事故を減らすため、ステレオカメラとABSユニット、そしてFIコントロールユニットを操作して制動サポートや危険認知を行うというのだ。具体的にはカメラからの情報を元にABSのポンプを利用して、ライダーが操作するブレーキとは別経路でキャリパーを加圧してブレーキを操作し減速するブレーキ周りの減速アシスト機能。そしてFIの燃料噴射量を制御して、ワイヤーを使ったメカニカルスロットルでも、自動減速ができる燃料オフによる減速アシスト機能だ。
もちろん排気量も車体も小さく、車両販売価格が安い小排気量コミューターに、日立アステモが考える新しいADASを搭載するのはコスト的に厳しいが、それが成立すれば、各メーカーが威信を賭けて開発するフラッグシップモデルへのADASも必ず成立するとして、遅くても3年後の市場投入を目標に開発を進めているという。