絶版車界の無双、カワサキZ1 レストア車両の公道インプレッション

掲載日:2018年07月26日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/ライコランド新横浜店 ハラファクトリー
文/モトメンテナンス編集部 写真/堤 晋一
記事提供/絶版バイクス編集部
※この記事は『絶版バイクス23号』に掲載された内容を再編集したものです。

キャブとエンジンのマッチング

クラッチ操作は頼りないほど軽い現代的モデルに比べてそれなりの握力が必要だが、切れが悪いわけではないのでシフトチェンジはスムーズ。ギアを1速に入れて走り出して感じるのが、スロットルを開いていく際のエンジン回転の上がり方が実にしっとりとして上質なフィーリングであること。

シリンダー、シリンダーヘッド、クラッチなどエンジン本体とキャブレターのオーバーホールとセッティングを行ったフルレストア後だから調子が良くて当然と思われるかも知れないが、発売から40年以上を経たバイクでは部品交換ができない(交換用の部品が入手できない)ことのある絶版車では、スロットルをガバッと大きく開けたときはともかく、全閉から僅かに開けたあたりの調律がなかなか難しい。

カワサキ Z1の試乗インプレッション

ケーヒンCRスペシャルやFCR、ミクニTMRなどのスペシャルキャブを装着することで、スロットルレスポンスの良さと全開時の吸気効率は明らかに向上する。だが一方でレスポンスの良さが神経質さにつながることもあるが、同調がしっかり合った純正VMキャブは良い意味でユルく、イージーに使える。

一方、開度を大きくするとどうか。5,000回転を超えたあたりからエンジンの存在感と迫力はいっそう明確になり、レスポンスも鋭く街中でも高速道路でも馬力不足を感じることはない。もちろん、1,000ccクラスモデルに比べれば、速さで叶うはずはない。600ccのスーパースポーツにも後塵を拝するだろう。だが、絶版車に乗る多くのユーザーなら理解しているだろうが、そうした評価観点自体に無理がある。

街中で楽しむつもりなら、無駄な張り合いは最初からしない方が良いだろう。集合マフラーのサウンドを楽しみながら、900ccならではのトルクを生かして走るだけでも、Z1の魅力は十分に伝わる。

外乱を受け流す車体の妙

スタンダード状態できっちりメンテナンスしてあるレストア車であることが幸いして、車体についても不足と思える部分は皆無だった。フロント3・25-19、リア4・00-18のバイアスタイヤは現代の250cc並の細さで、絶対的なグリップ力はそれなりだが、街中や首都高、軽くコーナリングを楽しむ範囲では不安や不満は感じられない。

サイドウォールが高いタイヤとスポークホイール、柔らかく動く前後サスペンションの組み合わせによってアスファルト路面のわだちを斜めに横切ると、車体がユサユサと揺さぶられるものの、いなすように乗り越えてくれるし、高速道路でグリップを握る握力をどんどん抜いても、Z1は真っ直ぐ走り続ける。

カワサキ Z1の試乗インプレッション

また路面のジョイント部で車体が多少振られるようなことがあっても、幅の広いハンドルに手を添えていれば勝手に収束するから大丈夫。この点、カスタム好きのユーザーが好む絞りがきつめのハンドルに交換すると、外乱に関して気遣いが必要かも知れない。

付け加えれば、スムーズで素直なハンドリングが実現しているのは、ホイールベアリングからスイングアームピボット、フロントフォークやステアリングステムベアリングに至る車体周りのメンテナンスが行き届いていることを忘れてはならない。ホイールやサスやステアリングのコンディションが良くない車両は操縦性にも悪影響を与えるのは間違いない。

Z1はライダーが主役になれるバイク

フロントのシングルディスクは街中では十分な効力を発揮するが、現代風に細かなレバー操作に敏感に反応するタイプではなく、ガツンと握ってグッと効かせるタイプだ。これはピンスライド式キャリパーの構造と車重によるところだろう。

高速ではその傾向はさらに顕著になり、意識して強めに、早めのタイミングで握るとよい。これではブレーキの利きが悪いように伝わるかも知れないが、リアのドラムブレーキを併用することで必要十分の制動力が発生する。旧車はリアブレーキの使い方がひとつの肝であり、小さな交差点やUターンなどで軽く引きずらせるだけで車体が安定するようになる。

カワサキ Z1の試乗インプレッション

改めてスタンダード車(レストア車)に乗ってみると、エンジンにしても車体にしても許容範囲は広く、どんなスタイルのライダーも過不足なくライディングの楽しさ、バイクに乗らされているのではなく操っている感じを実感できると思う。現代のバイクは速いのは間違いないが、味わいやテイスト感の少ないモデルが多いと言われるが、Z1に乗ってみるとライダー自身が主役になれる楽しさがあり、そうしたキャラクターが現在に至るまで長く愛され続けている理由であると理解できるはずだ。

Z1の詳細写真は次のページにて

こちらの記事もおすすめです

この記事に関連するキーワード

新着記事

タグで検索