【インディアン スポーツチーフ試乗記】パフォーマンスクルーザーの最高峰を目指して

掲載日:2023年04月20日 試乗インプレ・レビュー    

取材協力/インディアン モーターサイクル 写真/Garth Milan 取材・文/河野 正士

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INDIAN SPORT CHIEF

インディアンの新型モデルは
足周りを強化したパフォーマンスクルーザー

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2021年、インディアン・モーターサイクル(以下インディアン)は、ブランド設立100周年のアニバーサリーイヤーに、空冷V型2気筒エンジンを搭載したスタンダードクルーザーモデルである「チーフ」を一新。エンジンは排気量1890cc挟角49度の空油冷OHV3カムV型2気筒2バルブのサンダーストローク116は継承しながら、スチールパイプを使ったオールドスクールでシンプルな専用フレームを開発し、そのエンジンを搭載。ユーロ5をクリアし、スポーツ/スタンダード/ツーリングの出力特性が異なる3つのライディングモードを持ち、またアイドリングに一定の条件を越えるとVツインの後ろ側のシリンダーが自動で停止し油温上昇を抑える「リアシリンダー・ディアクティベーション・システム」を持つなど、アメリカンクルーザーらしいクラシカルなスタイルやメカニズムと、最新の電子制御技術をミックスした、インディアンの新定番モデルとなった。

今回、新たにランナップに加わった「スポーツチーフ」は、そのチーフのスポーツバージョンという位置づけだ。前後サスペンションとフロントブレーキをアップグレードがおもな変更点だが、たんに走りのパフォーマンスを高めただけではない。

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チーフ・シリーズは、2021年のフルモデルチェンジ時に「チーフ・ダークホース」「チーフ・ボバー」「スーパー・チーフ」と3つのモデルバリエーションを揃えた。それらはエンジンやフレームといった車体の基本骨格を共有しながら、アメリカのクルーザーシーンの歴史をトレースするような、各時代のトレンドのスタイルが与えられていた。「チーフ・ダークホース」はF19/R16インチのキャストホイールを履き、ミッドマウントのステップと低いハンドルを持つ1970~80年代のスポーツ・クルーザースタイル。「チーフ・ボバー」は高いエイプハンドルにフォワードマウントのステップに、前後16インチのボバー・ホイールを履いた1960年代のスタイル。「スーパー・チーフ」は1940年代にスポーツ性やツーリング性能を高めようとカスタムしたスタイルが、各モデルキャラクターのモチーフになっている。

そして「スポーツチーフ」は、背の高いライザーにフォークマウントされたカウル、それに高性能サスペンションとブレーキで走りのパフォーマンスを高めた、いまアメリカを中心としたクルーザーシーンのトレンドであるカスタムスタイル/クラブスタイルが、そのモチーフとなっている。

インディアン スポーツチーフ 特徴

高性能サスペンションと
スポーティなディメンション

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最大の特徴は、強化された足回りだ。フロントフォークにはKYB製の倒立フォークを、またリアにはリザーバータンク付のFOX製ツインショックが採用されている。フロントフォークは、インディアンのパフォーマンスクルーザーカテゴリーの最高峰「チャレンジャー」と同型。その長さや減衰力を「スポーツチーフ」の車格やモデルキャラクターに合わせてアレンジして搭載している。FOX製のリアショックは、他のチーフモデルに比べ、ストローク長を25mm延長。それによってリアの車高が上がり、バンク角もわずかながら深くなっている。また前後サスペンションや車体姿勢の変更に合わせて、フロント周りのディメンションも変更。フォークオフセット量を減らし、それに伴ってトレール量も変化している。

フロントブレーキもアップデート。「チャレンジャー」と同型のブレンボ製ブレーキを装備している。キャリパーはラジアルマウントの4ポット、ディスクローターは320mm径で、それをダブルで装着。フロントフォーク同様、車格やモデルキャラクターに合わせてブレーキパッドなどを「スポーツチーフ」用にアレンジしている。

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スタイリングの特徴は、クォーターフェアリングの装着とライディングポジションを決めるハンドル&シート&ステップ周りだ。クォーターフェアリングとはフロントフォークに装着したカウルのこと。フレームやタンクラインと合わせて、絶妙な位置にセットアップされている。また6インチ=約15cmの高さがあるハンドルライザーは、ハンドル位置を高め、それにミッドマウントのステップ周りと、専用にデザインしたガンファイターシートで、今風のクラブスタイルのライディングスタイルを作り上げている。

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インディアン スポーツチーフ 試乗インプレッション

爽快、痛快な
アメリカン・スポーツ

6インチライザーで肩の高さに腕を前に伸ばした位置まで引き上げられたハンドルポジションと、ミッドコントロールのライディングポジションで、ビッグツインをガンガン走らせるのは、意外にも楽しく、その走りは最高に気持ちが良かった。

これだけハンドルが高い位置にあると、フロント周りの接地感を得られるのか、ハンドリングに悪影響を及ぼしているのではないかと試乗前は心配したが、走り出した瞬間にその不安は吹き飛んでしまった。それはダイレクト感がある操作性に加えて、スポーティなハンドリングが与えられていたからだ。

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リアの車高が上がってフロントへの荷重が増えたこと、またフロンフォークのオフセット量を減らしてトレールを変化させたことで、フロントタイヤが大回りする、フロントに大径ホイールを装着するクルーザーモデルにありがちな、あの感覚がない。また車体姿勢が変化したとは言えリアヘビーであることは変わらず、そのリアタイヤを中心に体重移動で車体を切り返していく操作感は他のクルーザーモデルと変わらないが軽快で、その切り返しやコーナーへのアプローチ時に、フロントタイヤの舵角の付き方が自然。300kg越えの車重と、1626mmというロングホイールベースの車体を操っていることを忘れてしまうくらいだ。

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またブレーキのタッチも制動力も良い。スポーツバイクのように、フロントブレーキ操作時に大きくフロントフォークが縮み、一気にフロント周りに荷重がかかるような動きとは違い、感覚としてはフロントブレーキをかけると、フロントとリアが同時に沈み車体が安定するように感じる。これはフロントブレーキのパフォーマンスのみならず、車体姿勢やフロント周りのディメンションの変更、そして前後サスペンションのセッティングによってこの感覚を作り上げていると感じた。

もちろん、気分が乗ってきてペースが上がると、左右のバンク角が増えたとは言え、ワインディングでは左右のステップがすぐに路面に接地してしまうが、そのときの安定感も高い。

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そしてスポーツ/スタンダード/ツーリングの3つのライディングモードのなかでもっとも過激なスポーツモードを試しても、アクセル操作に対してドカッと車体が前に出ても、サスペンションがその動きを受け止め、ワインディングでの走りをサポートしてくれる。出力特性が穏やかなスタンダードモードやツーリングモードなら、今まで以上にアクセルを開けて、ビッグツイン特有のリアタイヤが路面を鷲づかみにして加速していく感覚をより強く感じることもできる。コレなら、道幅が狭く、また曲がりくねった日本のワインディングでも楽しめる。そう感じた。

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インディアン スポーツチーフ 詳細写真

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「スポーツチーフ」には、ブラックスモーク/ルビースモーク/ステルスグレイ/スピリットブルースモークの、4種類のボディカラーがラインナップされている。グラフィックは使用せず、艶アリと艶ナシの、シンプルなボディカラーがデザインされている。

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フォークマウントされたクォーターフェアリング。そのカウルの奥に、6インチライザーで高い位置にセットされたモトスタイル・ハンドルバーをセットする。オプションでは10インチライザーもラインアップ。スクリーンはLow/Tollの高さの違う2種類が用意されている。

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43mm径130mmストロークを持つKYB製倒立フロントフォーク。インディアンのバガーモデル/チャレンジャーと同デザインのアウターチューブを採用。自由長を短くし、インナーパーツを変更し特性を変更している。

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ラジアルマウントのブレンボ製4ポットキャリパーと320mm径のブレーキディスクを採用。ブレーキパッドなど「スポーツチーフ」に合わせたアレンジを加えセットアップされている。

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4インチのタッチスクリーン仕様のデジタルメーター。デザインが異なる2種類の表示をワンプッシュで選択可能。走行モードも、このスクリーンをタッチして変更することができる。

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エンジンは排気量1890cc空冷挟角49度V型2気筒3カム2バルブ。スポーツ/スタンダード/ツアラーの、出力特性が異なる3種類のライディングモードがセットされている。アイドリングに一定の条件を越えるとVツインの後ろ側のシリンダーが自動で停止し油温上昇を抑える「リアシリンダー・ディアクティベーション・システム」も搭載。

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「スポーツチーフ」用にデザインされたガンファイターシート。暴力的なトルクを活かした加速には、このシートに腰を当てて、体を預けることができる。

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新たに採用したFOX製ツインショック。オプションでは、同デザインとストローク量でありながら、伸び/圧ともに調整可能なアジャスタブルタイプのFOX製ショックもラインナップ。

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