【ブリクストン クロムウェル250 試乗記】 オーストリアで生まれた、気楽で軽快なネオクラシック

掲載日:2023年04月24日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/中村 友彦 写真/富樫 秀明

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BRIXTON CROMWELL 250

2017年から発売が始まり、ヨーロッパ市場を中心にして好調なセールスを記録しているブリクストン。現在は13台が並んでいる同社のラインアップの中から、当記事ではベーシックモデルとなるクロムウェル250の乗り味を紹介しよう。

ライバル勢とは異なるスタンス

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2023年から日本市場への導入が始まるブリクストンは、ヨーロッパ最大級の2輪ディストリビューター/ディーラーにして、ランブレッタとマラグーティの復活に尽力した、オーストリアのKSRグループが2015年に立ち上げた新興メーカーである。社名の由来になったのはイギリスの首都ロンドン南部に位置する地区の名称で、ブリティッシュクラシックスタイルと現代的なストリートカルチャーの融合が、同社のテーマになっているようだ。

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ちなみに昨今の2輪業界には、欧州設計・中国生産車が数多く存在し(日本に導入されていないモデルも非常に多い)、ブリクストンの手法もそれに該当する。ただしフルラインアップメーカーを目指す同社の場合は、KSR Asiaが徹底的な品質管理を行っていること、KTMで手腕を奮ったKISAK出身のクレイグ・デント率いるRIDEと共同開発を行っていること、すでに自社開発の500cc/1200ccの水冷パラレルツインエンジン搭載車を販売していること、などといった特徴があるので、他の欧州設計・中国生産車と同列で語ることはできないだろう。

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ブリクストン クロムウェル250 特徴

250cc以下はスズキ製空冷単気筒を搭載

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前述したように、現在のブリクストンは自社開発の500cc/1200ccの水冷パラレルツイン搭載車を販売しているが、250cc以下のエンジンはスズキから供給を受けた空冷単気筒が主力になっている。2019年から発売が始まったクロムウェルもエンジンはスズキ製で、今回試乗する250ccに加えて、車体の基本設計を共有する125ccも存在する。

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現在のブリクストンの日本のウェブサイトには、斬新なデザインのクロスファイヤシリーズ、スクランブラースタイルのフェルスベルグシリーズ、往年のブリティッシュツインを彷彿とさせるクロムウェル1200、カフェレーサーのサンレイ125、クラシックボバーのレイバーン125など、13台のモデルが並んでいる。そしてそれらと比べるとクロムウェル250/125は、主張が控えめな気がしないでもない。もっとも現在の日本では、クラシック&ベーシックテイストの250/125ccは貴重なのだから、このモデルの導入を歓迎するライダーは少なくないはずだ。

ブリクストン クロムウェル250 試乗インプレッション

どんな用途にも気軽に使えそう

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クロムウェル250でさまざまな状況を走って、僕が思わずホッとしたのは、新興メーカーの車両でときとして感じる、破綻の気配や予想外の動きが見当たらないことだった。市街地を普通に走れるのは当然としても、高速道路では余裕で100km/h巡航ができるし、峠道ではなかなかのスポーツライディングが楽しめる。決して侮っていたわけではないけれど、そういった印象を通して、僕はブリクストンを信頼に足るメーカーだと感じたのだ。

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ちなみに、今回の試乗の途中から僕の頭に浮かんだライバルは、ホンダGB350とロイヤルエンフィールド・クラシック350だった。クロムウェル250はその2台と同様に、ハンドリングがフレンドリー&ニュートラルで、どんな用途にも気軽に使えそうで(悪路もそれなりに楽しめる)、エンジンは心地いい鼓動感を披露してくれる。もちろん排気量が100cc少ないぶん、クロムウェルの鼓動はGB350やクラシック350ほど濃厚ではないのだけれど、ブリクストン独自の吸排気系の設定が絶妙だからだろうか、中回転域を維持してのまったり巡航では250cc単気筒らしからぬ……と言いたくなる充実感が得られた。

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まあでも、クロムウェル250の価格は、GB350より15万円ほど高く、クラシック350とほとんど互角の70万4000円なので、だったら排気量が大きいほうを……という印象を抱く人はいると思う。ただし装備重量に注目すると、GB350の180kg、クラシック350の191kgに対して、クロムウェル250は格段に軽い約153.6kgなのだ(145kgの乾燥重量にガソリン容量の11.5ℓ≒8.6kgをプラスした数字)。この数値ならではの軽快さを、クロムウェル250の美点と感じる人も少なくないだろう。

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さて、そんなわけで初試乗のブリクストンに好感を抱いた僕だが、リアショックの明らかなダンパー不足や、左ステップのバー⇔ペダル間の遠さ、停止時のニュートラルの出しづらさなど、気になる点が無かったわけではない。とはいえ、そのあたりは慣れやカスタムで解消できそうな問題だし(ニュートラルは停止前なら簡単に出る)、今の僕は気になる点を強調するよりも、ブリクストンが日本で購入できるようになったことを素直に喜びたい、と感じているのだった。

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ブリクストン クロムウェル250 詳細写真

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ヘッドライトはオーソドックスなハロゲンバルブ式。外周にLEDデイタイムライト、中央にXマークを配置することで、ライバル勢とは一線を画する個性を演出。

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ハンドルはワイドで絞り角が少なめ。グリップラバーはブリクストンのロゴ入りで、左にはUSBポートが備わる。バックミラーの後方視界はいまひとつで、ステーにもっと角度をつけたくなった。

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メーターはトップブリッジに食い込むようにしてマウント。液晶画面に表示されるのは、速度、燃料残量、ニュートラルインジケーター、オドメーターのみで、トリップメーターはナシ。

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容量11.5ℓのガソリンタンクは往年の英車を思わせる造形で、エノッツタイプのキャップには施錠機構が備わる。ツートーンのペイントは、オレンジ×ゴールドとブラック×グレーの2種を設定。

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座面がフラットなダブルシートの座り心地はなかなか良好。荷かけフックは存在しないものの、しっかりした造りのグラブバーはタンデムやツーリングで重宝しそう。

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LEDテールランプは相当にコンパクト。とはいえ、試乗中に後方を車で走っていたカメラマンによると、光量は十分以上だったようだ。

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バーの位置は好感触だったのだが、ステップで気になったのはシフトペダルの遠さ。ギアチェンジの際は左足を前方に動かす必要があった。

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スズキから供給を受けた空冷単気筒エンジンは、12.6kw(17.1ps)/7500rpm、16.5Nm/6500rpmを発揮。クランクケースカバーにはブリクストンのロゴとXマークが刻まれている。

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なかなか微妙な角度で装着されるスロットルボディを含めたインジェクション関連部品は、デルファイとの共同開発。

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ブレーキディスクはF:φ276mm/R:φ220mmで、キャリパーは前後とも片押し式2ピストン。ABSは2チャンネル式で、作動感は至って自然だった。

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タイヤサイズはF:100/90-18/R:120/80-17で、試乗車はオンオフ指向のCST・C6017を装着。マフラーはピシューター、あるいはキャブトンなどと呼ばれる昔ながらの形状。

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