【ビモータ KB4 試乗記】独自設計フレームに、カワサキ製エンジンを搭載したプレミアムスポーツ

掲載日:2022年10月24日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文・写真/淺倉 恵介

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bimota KB4

イタリアの高級ハンドメイドバイクメーカーであるビモータ。2019年、カワサキとのコラボレーションが発表され、意欲的なニューモデルが発表されているが、その主力モデルとして登場したのがKB4。カワサキのエンジン技術と、独創的なビモータのシャシー設計思想がフュージョンして産み出された、超軽量スポーツバイクだ。

プレミアムバイクの雄ビモータ
復活後本格始動の先陣を切るモデル

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ビモータKB4は、Ninja1000SXのパワーユニットを、独自のフロントトレリスフレームに搭載したスパーツバイク。ビモータは1973年創業のイタリアのバイクメーカーで、他社製エンジンを自社で設計・製作するオリジナルシャシーに搭載したマシンを、ハンドメイドで少量生産している。独創的な設計思想を持つフレームと美麗なイタリアンデザイン、ハンドメイドならではの工芸品的な精緻な仕上げが特徴で、多くの名車を世に送り出してきた。

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しかし、1990年代末に経営難に陥り倒産。2000年代に入って復活を遂げるも、2010年後半に再び営業状況が悪化し休眠状態となっていた。そこに救いの手を差し伸べたのがカワサキで、2019年に共同で合弁会社を設立。コラボレーション後、最初に発表されたTESI-H2は、Ninja H2系の過給器エンジンをビモータが生み出し熟成を続けてきたハブセンターステアリングを採用したシャシーに組み合わせたユニークなマシン。TESI-H2は900万円近い価格を持ち、極めてプレミアムな存在でビモータ復活のアイコンとして製作された側面が強い。2021年、二の矢として登場したKB4は、車両本体価格も400万円切りと、愛車の選択肢として、現実的なエリアに入ってきたモデルだ。

bimota KB4 特徴

独自フレームの採用で超軽量
ハイクオリティな使用パーツにも注目

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ビモータ KB4最大のトピックは、やはり車体。独自に開発されたフロントトレリスフレームは、強固なクロモリ鋼製パイプをエンジン上側から覆うようなダイヤモンドフレーム的構成で組み上げ、アルミ削り出し製のピポットプレートでスイングアームを支持している。フレーム形状から察するに、エンジン自体を強度メンバとして積極的に利用する構造。

ホイールベースは1,390mmと、600ccスーパースポーツ並と、非常にコンパクトに作られている。また、特異なポイントとして、ラジエターがシートカウル下のリアフェンダー内側に配置されていることがあげられる。これは、前輪とエンジンを近づけることで、理想的な前後重量配分を追求したもの。冷却に必要な走行風は、フレームの左右に設けられたダクトによって、ラジエターへと導かれる。

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軽量化が徹底され、車重は194kgの軽さを実現。同じエンジンを搭載するNinja 1000SXの236kgと比べると、実に42kgも軽量。パワーユニットを共有するだけで、全く別個な車両ではあるため単純比較は出来ないが、それでも軽さに驚かされる。前後ホイールはO・Z製のアルミ鍛造、ショックユニットにオーリンズ製を採用するなど、装着されているパーツのクオリティも高い。

bimota KB4 試乗インプレッション

スポーツライディングに全振りした
潔いキャラクターに魅惑される

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KB4を目の前にすると、存在感に圧倒される。ビモータが黎明期に製作した、空冷Z系エンジン搭載車KB41をオマージュしたフォルム。細部まで造形にこだわった、美しい部品の数々。放つオーラが違う。装着されるパーツは世界の銘品と呼べるものばかり。排気ガス規制対策のためだろうか? マフラーは、パワーユニットのドナーであるNinja 1000SXのノーマルパーツを使用しているが、そこに違和感を感じてしまう。Ninja 1000SXの純正マフラーは、決して質感が低いものではないのに……。

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外から見る印象は、軽い車重や、短いホイールベースといったデータが頭に入っていたためか、意外なほど大柄に感じる。だが、実際にマシンに跨ると、認識が一変する。なんというコンパクトなライディングフォームだろう。ハンドルはリッタークラスのスーパースポーツとしては近いが、異例なほど低い。近年主流となっている、フラットで開いたハンドル設定ではなく、適度に絞りとタレ角がつけられているのが、昔のバイクを知る人間としては好印象。ステップはかなり後方に位置するが、高さはそれほどではなく下半身は適度にリラックスできる。

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エンジンを始動して、バイクを起こす時に驚いた。軽い!軽いのだ。言ってもリッターバイクなのだからと、それなりに左足に力を入れると、拍子抜けする軽さでバイクが起きる。おおげさでなく、逆側に倒してしまいそうだ。これは、楽しみと走り出した。が、正直なところ街中では不満しか感じない。

軽いことは有難い、強力かつコントローラブルなブレーキも最高だ。渋滞路でのチョコマカとした走行でも、基本性能の高さを恩恵として受けられる。だが、ポジションがいけない。とにかく上半身の前傾がキツい。都内の渋滞路を10kmほど走っただけで、腕と背中が悲鳴を上げた。独特のラジエター配置のせいで、低速走行では水温が上がりやすく、水温計の数値を見てヒヤヒヤした。しかし、高速道路、ワインディングの順で走るステージを変えるにつれ、不満は吹っ飛び走る喜びしか感じなくなった。

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まず、高速道路。直進安定性にはなんの不満もないのだが、鈍重さは皆無。車線変更は一瞬、この軽快感は未体験のものだった。ワインディングに入ると、これはもう歓喜しかない。高性能なブレーキシステムは、容易にブレーキングポイント深くとれる。自分が上手くなったのかと錯覚するほどだし、自由自在のブレーキコントロールが楽しい。マシンを曲げるのが、また楽しい。ステップに軽く入力するだけで車体が“スッ”と寝て、上半身の抜重で一気に向きが変わる。この時、ステアリングが切れたがったりしないところが実に素晴らしい。曲がりたがるバイクにありがちな悪癖がない。旋回性の高さと、安定性のバランスが絶妙なのだ。

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コーナーの立ち上がりでは、オーリンズ製のショックユニットがしっかりと荷重を受け止めてくれる。このショックユニットが、またいい。ブレーキングでフロントが突っ込みすぎることも、立ち上がりでリアが腰砕けになることもないが、硬過ぎずギャップを踏んだ時などもキレイに衝撃をいなしてくれる。軽量なO・Z製アルミ鍛造ホイールなど、使われているパーツの性能と質感の高さは嬉しい。

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エンジンは、電子制御や吸気系までNinja 1000SXをそのまま流用しているわけだが、車重が大幅に軽いおかげで相対的にパワフルに感じる。ダッシュ力は、あきらかにKB4が上だ。パワーモードも試してみたが、ワインディングでは、ローパワーで開けやすい「RAIN」モードが楽しく感じられたほどだ。「SPORT」どころか「ROAD」でも持て余す感がある。もっとも、操る楽しさを味わいたいのなら、よりパワフルなモードがいい。

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気になった点をあげるとすれば、まず横風への弱さ。海沿いの高速道路で、強い横風を受けると、マシンが簡単に流される。これは、フルカウルかつ軽量なマシンだから、致し方ないところだろう。また、ミラーが金属製のステーを持たず、カーボン製のアッパーカウルに直マウントされているため、速度を上げると振動で後方視界が悪くなる。車両の個体差か、走行距離の少なさが理由の可能性があるので参考程度の感想なのだが、シフトアップ&ダウン対応のクイックシフター「KQS」の動作に固さを感じることがあった。独自設計のステップが原因であれば、調整が必要になるかもしれない。

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KB4が発表になった時、なぜNinja 1000SXのエンジンを採用したのか? との疑問をもった。カワサキには、よりハイパワーなZX-10Rという素材があるからだ。ビモータは、ワインディングを楽しむためトルクのあるエンジンをとして、Ninja 1000SXのそれを選択したという。今回の試乗で、そのことを十分納得できた。これ以上、パワフルで軽かったら手に負えるマシンになるとは思えない。だが、ビモータならひょっとして? と期待もしてしまう。KB4が完璧なバイクかといえば、そうとも言い切れない。スポーツライディングには最高だが、街乗りは苦行でしかない。だが、飛び抜けた走りの面白さを持ち、所有感の高さは抜群だ。これから先も、実に楽しみなビモータとカワサキのタッグだ。

bimota KB4 詳細写真

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カウルの隙間から、わずかに確認できるフロントトレリフレーム。車格を考えれば華奢に感じるが、走らせて剛性不足を感じることはない。

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エンジンはNinja 1000SXと基本的に同一。マフラーも共通だが、独自装備のカーボン製カバーを備える。

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ラジエターはテールカウルの内側にマウント。冷却風は、アッパーカウルに大きく口を開けたダクトから導入する。

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フロントフォークはオーリンズ製倒立、伸/圧のダンパーを左右独立させたNIXタイプ。ステアリングダンパーもオーリンズ製。

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フロントブレーキは、ブレンボ製モノブロックラジアルマウントキャリパーに、同社製φ320mmフローティングディスクを組み合わせる。セミラジアルブレーキマスタシリンダーもブレンボ製。

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スイングアームは、アルミ削り出しで製作されたもの。リアショックユニットのアッパーマウントは、スイングアームに設けられ、車高調整機能も備える。

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リアブレーキもブレンボ製。前後ホイールはO・Z製のアルミ鍛造を採用。サイズはフロント3.50×17、リア6.00×17。

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造形へのこだわりが見てとれるステップは、ピポットプレートにマウントされる。クイックシフターKQSも装備。

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カウリング他、エクステリアパーツの多くはドライカーボンで製作。ヘッドライトはZ900RS純正の流用と思われる。

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シートは本革製。イタリア植物なめし本革組合の品質保証を受けた高級素材を使用。テールカウルの内部にはETC車載機が収められる。

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コンパクトに見える燃料タンクは、意外にも19.5Lと大きな容量が確保されている。

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インスツメンツパネルはフルカラーTFT液晶で、ユニット自体はカワサキの他車種でも使用されているもの。操作方法もそれに準じる。オーピニングセレモニーでは「bimota」ロゴを表示。

試乗ライダー プロフィール
淺倉 恵介
Web、雑誌を問わず、各種バイクメディアで活動中のフリーライター。バイクチューニング専門誌出身で、カスタマイズやチューニング、レース関連に詳しいが、本人の嗜好は好き嫌いなくバイク全般に及ぶ。バイクの評価で一番重視しているのは”乗って面白いかどうか”だが、身長164cmと小柄なため取り回しの良さにもこだわる。

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