掲載日:2019年12月18日 試乗インプレ・レビュー
写真/伊勢 悟 取材・文/小松 男
KAWASAKI Z400
ニンジャと言えばカワサキが世界に誇るペットネームであるのは周知の事実だが、それと双璧を成すのが"Z"シリーズである。どちらも泣く子も黙るほど立て続けにヒットモデルを排出してきたモデルたちだ。現在のラインナップで考えると、ニンジャ=カウル付きスポーツモデル、Z=ニンジャをベースとしネイキッドにしたストリートファイターという位置づけとなっている。排気量は125ccから1000ccまでが存在しており、2019年から新たに「Z400」がファミリーに加わった。ここではそのZ400のポテンシャルを探ってゆく。
Z400という名前を持つバイクは、過去を遡ると何度か存在したことがあったが、ニンジャのネイキッドバージョンという現在の捉え方となってから登場するのは、これが初めてとなる。というのも、これまではER-4nが同様の位置づけとなっていたからだ。丸みを帯びたラインを描き、どちらかというと有機的で優しいスタイリングだったER-4nに対し、現行型Z400は細部にまでエッヂを効かせ、アグレッシブなデザインとされており、まったく異なるキャラクターという印象を受ける。
そもそも兄弟モデルである現行ニンジャ400のトータルバランスの高さには定評があり、例えば免許を取得したばかりのビギナーライダーや、路上に返り咲いたリターンライダーから強い支持を受けている。Z400はエンジンやフレーム、足まわりと言った基本構成をそれと同じとしながら、カウルを取り払い、ワイドバーハンドル化することで、よりコントローラブルなセッティングとしている。実際に乗ってみてそれはどのようなものなのかを検証していこう。
カワサキが推し進めるSUGOMIデザインで纏められたZ400は、低く抑えられたフロントマスク、そこからタンク、テールセクションへとシャープな繋がりを持ち、一目見ただけで"走りそう"と感じさせるものだ。Z400はニンジャ400とだけでなく、現行のZ250ともシャシーを共通としている。つまり車格的には、ニンジャ250/400、Z250/400で比べても基本的には同じということになる。スペックシート上では、Z400のシート高がZ250と比べ10mm低い785mmとなっているが、横に並べておいて比べても違いがわからないほど軽微なものだ。それよりも、250ccのコンパクトなシャシーに、排気量の大きなエンジンを搭載している点に、まずは魅力を感じずにはいられない。
ワイドなバーハンドルによって、コンパクトな車体を抑え込むようなライディングを楽しむことができるZ400は、混雑した街中だけでなく、ワインディングでも真価を発揮する。排気量398ccのパラレルツインエンジンは効率の良いダウンドラフト方式の吸気ラインが採用されており、走り出しから力強さを感じさせるうえ、高回転域までスムーズに吹けあがる。
エンジンのキャラクター的には、突出した部分が無いとも言えるが、むしろそのフラットな部分によって、誰でもセーフティーにスポーツライディングを楽しむことができるだろう。ライディングポジション、パワー感、足まわりのセッティング、すべてにおいてウェルバランスなので、どんなスキルのライダーが走らせても、ライディングの楽しさを感じられることだろう。
先にニンジャ400のネイキッド版はER-4nだったと書いたが、ER-4nとZ400が登場する間には、Z300というモデルがあった。昨今のZシリーズにならいストリートファイタースタイルを持ったモデルだったが、296ccという排気量は、Z250と大差がないためコストパフォーマンス的なことも踏まえて考えると、Z250が選ばれる傾向があったのは事実だ。だがしかしエンジンをスケールアップしたZ400が登場した今、その状況は一変した。
Z250とZ400は全体的な構成は同じでありながらも、パワー感が全くの別物。例えば普段街中を走る際にも、高速道路を長時間走り続けるときでも、ワインディングでスポーティな走りを楽しむときにでも、力の余裕によって必ずと言っていいほど快適に走ることができる。誤解しないで欲しいのはZ250が物足りないと言うのではないことだ。Z250はしっかりとまとまっており、それで完結している。そこにモアパワーが加わったことが大きいということを伝えたいのだ。
この差というのは、ニンジャ250/400でも同じようなことが言えるのだが、Zの方が振り回して走らせるキャラクターということもあり、より強く感じられた。追記すると、アフターパーツも豊富に用意されているので、カスタムベースとして楽しむのもいいだろう。
エキゾーストシステムは2in to1の構成となっている。SUGOMIデザインに合わせた異形サイレンサーを装備しており全体的なデザイン性を高めている。
細いスポークで軽量な印象を受ける星形ホイールを採用。Z1000と同径のφ310mmのセミフローティングぺタルディスクに、ニッシン製キャリパーを組み合わせる。
398ccまで排気量を引き上げられた水冷4ストローク並列2気筒エンジン。DOHC4バルブで高回転まで伸びやかな回転上昇を味わえる。バランサーシャフトが採用されており、振動も抑えられている。
スイングアームは長めに設定されているが、フロントフォークのキャスター角が立ち気味にセットされているため、ホイールベースは短く、クイックなハンドリングを楽しめる。リアブレーキはφ220mmのペタルディスクにデュアルピストンキャリパーの組み合わせ。
センターにデジタルスピードメーターとシフトインジケーター、それを囲むようにタコメーターが配置されたインストルメントパネル。低燃費走行の目安となるエコノミカルライディングインジケーターも装備。
ニンジャ400がセパレートハンドルを採用しているのに対し、Z400では幅の広いバーハンドルが装着される。ストリートで多用する低速域や、きついコーナーが続くワインディングなどで、コントローラブルなハンドリングを楽しめる。
SUGOMIデザインの要素であるクラウチングスタイルを表現するために、低くセットされたヘッドライト。シャープかつダイナミックなデザインは、アグレッシブな走りを連想させる。
燃料タンク容量は14リットルでクラスを考えると十分なもの。ワイドで盛り上がりのある独特な形状となっているが、前後長が抑えられており、シートとハンドル位置が近い。
ライダーとパッセンジャーシートはセパレートとされている。ライダーシートは内腿にあたる部分がシェイプされており、足つき性は良好。パッセンジャーシートは小さめだ。
高く跳ね上げられたテールセクション。パッセンジャーシート下には2段式のユーティリティスペースが設けられている。ウインカーステーも兼ねるナンバープレートホルダーもスポーティーだ。
バックステップスタイルだが、割と低い位置にセットされていることもあり、ツーリングでも疲れにくいポジションとなっている。ヒールプレートは程よい位置と高い強度であり、コーナーリングでも安心して荷重を加えることができる。
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