掲載日:2019年12月20日 試乗インプレ・レビュー
写真/伊勢 悟 取材・文/小松 男
FANTIC CABALLERO Rally500
ファンティックというバイクブランドをご存知ならば、かなりの通だと言えよう。今から50年以上も前の1968年にイタリアのバルザゴで産声を上げたファンティック社は、モトクロスをはじめ、数多くのオフロードレースでタイトルを得てきた名門ブランドである。中でもトライアルではかなりの戦歴を残してきたのだが、日本では馴染みが薄いのは事実である。なぜならそのファンティックモーターサイクルの国内販売が開始されたのは、2019年に入ってからの事だからだ。
オフロードフリークの間では、公道走行可能なトレールモデル、「エンデューロ」が話題となったが、ストリート色の強い「キャバレロ スクランブラー」と「キャバレロ フラットトラック」はネオクラシックな雰囲気を持ち、幅広いライダーの心をくすぐる物だった。そしてそれを追う形でニューモデル「キャバレロ ラリー500」が追加導入されたのである。
2019年、最初に国内販売されたファンティックは、キャバレロ スクランブラ―とキャバレロ フラットトラック、そしてエンデューロの3モデルで、前者2種はそれぞれ125/250/500ccのエンジンが用意され、エンデューロは125/250ccというバリエーションとなっていた。それらに続き登場したニューモデル、キャバレロ ラリー500は、その名が示す通り500ccエンジン一択のモデルとなっている。
スクランブラ―とフラットトラックはフレームやエンジンなど、車両構成の根幹となる部分を共通としながら、モデル名からもわかるように、それぞれのステージをイメージさせるスタイリングでまとめられている上に、スクランブラーはフロント19、リア17インチ、フラットトラックは前後19インチタイヤが採用され、それぞれのキャラクター付けがされていた。
今回テストしたキャバレロ ラリー500は、フロント19、リア17インチとされており、つまりはスクランブラ―に近しいモデルとなっている。スクランブラ―との大きな違いを挙げると、まずアルミ製となったスイングアームに始まり、調整機能も備わりストロークを拡大した前後サスペンションでオフロード走行でのポテンシャルが引き上げられ、さらにはメーターバイザー、ライトグリル、アンダーガード、ラジエターガードを装備。スタイリング的にもよりオフロード色が強くなっている。
オリーブドラブカラーの車両は、全体的にはコンパクトなものであるが、シートは高め。ただサスペンションストロークが多く取られているということもあり、乗車してしまえば割と沈み込む。これは本格的オフロードバイクを連想させるものだ。キーをまわし、セルボタンを押すと、排気量449ccのシングルエンジンは、想像していたよりも軽く目を覚ました。これは94.5×64mmのビッグボア&ショートストロークという設計のエンジンということもあるだろう。このエンジンは軽く吹け上がる上に、スロットルに対する反応は過剰すぎず、反対にダルでもないという扱いやすいセッティングとなっている。
最高出力40馬力、最大トルク43Nmというポテンシャルは、オンロードでこそ扱いきれるものだが、オフロードではかなりの戦闘力となる。動きの良いフルアジャスタブルサスペンションとの組み合わせにより、オンロード、オフロード問わず、冒険へと誘う相棒として最適なものとなっている。
そもそもキャバレロというネーミングはファンティック創業当時に発表し、若者を中心に大ヒットを遂げたものを受け継いでおり、現在のファンティックのメインストリームとも呼べるシリーズである。その中でもキャバレロ ラリー500は現在のトップエンドモデルと言える位置づけだ。
ファンティック自体が、まだ日本のマーケットに入ってきたばかりなので、中古バイクマーケットの形成はおろか、広く知れ渡るのでさえ、これからのことだと思う。ただ実際に触れて分かったのは、想像以上に、見て良し、乗って良しの美味しいバイクであることだった。通勤通学など日常的な使い方はもちろん、道具を満載にしたキャンプツーリングというのも様になるだろう。バイクそのものの素性がしっかりしているので、これからストリートを走る姿や、口コミなどで一気に拡散することを感じさせるブランド、ファンティック。人よりも先に手を出してみるのも一興だと思うが、いかがだろうか。