アプリリア RSV4 RF
アプリリア RSV4 RF

アプリリア RSV4 RF – WSBレースで鍛えられた本物のレーサーレプリカ

掲載日:2016年11月09日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川健太郎  写真・動画/山家健一  衣装協力/HYOD

アプリリア RSV4 RF 試乗インプレッション

猛烈な加速と鋭いフットワーク
公道での扱いやすさも併せ持つ

アプリリア RSV4 RFの試乗インプレッション

アプリリアは日本ではどちらかというと地味な存在ではあるが、欧州に行くと本国イタリアをはじめドイツ周辺国でもよく見るメジャーブランドである。

今回のRSV4 RFもモータースポーツが盛んな欧州各国では人気だが、その強烈なアグレッシブさ故に国内ではなかなか手強いイメージを持たれているようで、近寄り難い存在なのかもしれない。本当の姿はどうなのか、それを知ることが今回の個人的なテーマでもあった。

量産市販車を改造したマシンで争われるスーパーバイク世界選手権では、ベースマシンの性能が大きな要素を占める。その世界最高峰のカテゴリーで圧倒的な強さで勝ちまくってきたのがRSV4であり、その最新最高峰バージョンがRFなのだ。

勝つための性能に徹したマシン。そこには味わいとか使い勝手など、甘っちょろい要素は何もない。まさにサーキットでガチ勝負するために生まれた戦闘機である。

とまで言うと、さらにビビりが入ってしまうかもしれないが、このマシンの素性はそういうものだ。でも、それが最大の魅力でもある。

アプリリア RSV4 RFの試乗インプレッション

さて、具体的な話だが、エンジンは200馬力を超えるスペックということで、公道ではそのポテンシャルの半分も引き出すことはできない。エンジンマップは「スポーツ」「トラック」「レース」の3段階で、ボタンひとつで簡単に切り替えることができるが、公道では「スポーツ」でも十分すぎる加速力。高速道路の追い越しなどでもスロットルひと捻りで瞬間的に前に移動している。

このピックアップの良さがV4エンジンの魅力でもある。現行の量産スポーツモデルとして、V4エンジンはおそらくRSV4シリーズだけだろう。V4はMotoGPマシンの主流であることからも分かるように、最もレース向きのエンジンと言っていい。

直列4気筒並みの高回転パワーとVツインのような中速トルクがあり、全域でフラットな出力特性を持っている。レイアウト的にも横幅を詰められるし、特にRSV4は65度とVバンクが狭角なので前後長も詰められる。スリムでコンパクトなエンジンであり、つまりはマスの集中化もしやすいわけだ。それでいて、V4ならではの鼓動感があり、低速域でもそこそこ粘るため扱いやすいなど優れた特性を持っている。ただ、開発コストが高いため量産市販車にはあまり採用されないということらしい。

アプリリア RSV4 RFの試乗インプレッション

軽量コンパクトな車体に猛烈なパワーを宿すRSV4ではあるが、イメージしていたよりはずっと乗りやすい。何年か前に従来型のRSV4に試乗したことがあるが、それと比べても明らかに出力特性がスムーズでコントロールしやすくなっている。きっとここ数年で電子制御技術が進化したせいだと思う。たしかに半端なくパワフルではあるが、以前のような凶暴さは鳴りを潜めてマイルドになっている感さえある。特に低速域でのガサガサ感がなくなり、アクセルレスポンスも初期が穏やかになったことでUターンなども普通にできる感じになった。ちなみにハンドル切れ角もけっこうある。シートも高く前傾はきついが、ドライバビリティそのものは至って素直で扱いやすい印象だ。

アプリリア RSV4 RFの試乗インプレッション

APRCも精度が高まっている。たとえば加速中に路面のギャップやマンホールなどで後輪が滑ったときも瞬間的にトラクションコントロールが介入してスリップを防いでくれるし、万が一フロントが舞い上がってしまってもウイリーコントロールが作動して安定した姿勢に戻してくれる。ブレーキも強力すぎて公道ではレースABSを作動させるまでにはなかなか至らないが、安全な場所でガッツンとかけてみてもロック寸前の最後の最後に自然なリリースコントロールをしてくれる、といった具合。究極のハイスペックモデルでありながら、その性能を電子制御の恩恵を受けつつ安全に楽しむことが可能なのだ。

アプリリア RSV4 RFの試乗インプレッション

前後オーリンズと軽量ホイールの足回りもグレード感があり、動的な乗り心地に優れている。路面のギャップ通過時における前後輪の吸い付くような追従性が素晴らしい。ハンドリングはとにかく軽快、というよりも「鋭い」と言ったほうが正確かも。エンジンなどの重量物のマスをまったく感じさせない、フットワークの切れ味はまさにV4由来だろう。公道では試すべくもないが、きっとサーキットではコーナーインやS字の切り換えしなどで強力なアドバンテージになるはずだ。

頭のてっぺんから爪先までキレッキレの、まさに公道を走れるレーサーレプリカだが、その“竹を割ったような性格”が気持ちいい。サーキットでのスポーツライディングを主に考えている方はもちろん、勝つための機能を突き詰めたマシンだけが持っている性能の美学に酔いしれたい方にもおすすめしたい一台だ。

RSV4 RFの詳細写真は次のページにて

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