ヤマハ YZF-R15
ヤマハ YZF-R15

ヤマハ YZF-R15 – インドの本格的スモールスポーツ

掲載日:2013年01月24日 試乗インプレ・レビュー    

取材・撮影・文/田宮 徹

ヤマハ YZF-R15の特徴

ベーシックな設計ながら
リアスイングアームはアルミ製

この YZF-R15 のエンジンは、マニュアルクラッチ式の 149cc 水冷単気筒。燃料供給には F.I. を採用し、2011年秋のモデルチェンジ時には ECU などの見直しが図られた。変速機は6速。これを搭載するメインフレームは、スチール製のデルタボックスタイプ。リアスイングアームはアルミ製へと進化。フロントフォークは正立タイプ、リアサスペンションはリンク式モノショックで、どちらも調整機能はない。前後タイヤのワイド化も施され、リアタイヤにはラジアルタイプを新採用。アルミ製ホイールも、スポーツイメージを高めるニューデザインとなった。ブレーキは、もちろん前後ともディスク式だ。また、レイヤード構造のミッドカウルやセパレートタイプの前後シート、LED テールランプを使ったテールカウルなども新採用し、初代と比べると外装デザインもより上質かつスポーティなものとなった。

ヤマハ YZF-R15の画像

なお、本国で販売される YZF-R15 は、リアスイングアームに装着されたインナーガードの後端と両側に、マッドガードや巻き込み抑止用のサリーガードを装備しているが、日本で販売される車両はこれが取り外されている。

ヤマハ YZF-R15の試乗インプレッション

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軽快なフットワークと
使い切れる感が最大の魅力

前後に 17 インチホイールを履く、いわゆるフルサイズボディだが、エンジン排気量が小さいことから、さすがに車体はスリム。シート最前部に座れば、身長 167cm の筆者でも両足の裏がべったりと着く。さらに、前席の後ろめに座ったままでも、両足の裏は半分ほど接地。車重が軽量なため、支えているのが楽ちんで、日本のエントリーユーザーや小柄な女性にも向く仕様と言ってよいだろう。ステップは、シート位置からするとやや高めで、そのままでも違和感なくスポーツ走行できる設定。ハンドルは、やや遠めかつ低めだが、タンク長がそれほどないので、極端な前傾姿勢を強いられることはない。

さて、走り出してまず気づくのは、排気量のわりには極低速域でもがんばるエンジンの扱いやすさ。さすがに、驚くほどトルクフルというわけではないが、燃料供給に F.I. を採用していることもあり、人が歩くような速度でも、1速ならクラッチを切らずに走り続けられる。このモデルを、コンパクトなシティコミューターとして考えた場合、これはうれしい。

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一方で、この 149cc 水冷単気筒エンジンが活発さを増すのは、エンジン回転数が 7,000 回転を超えるあたりから。全体的にはフラットな出力特性となっているが、この領域になるとよりキビキビ感が得られる。レッドゾーンは 10,500 回転からで、実質的なパワーバンドは 7,000~10,000 回転。スポーティに操りたいなら、なるべくこの範囲をキープしたい。

これが大/中間排気量モデルとなると、なるべくパワーバンドをキープして走るなんて、クローズドコースであっても難しい。しかし相手は 16 馬力のシングルエンジン。ある程度の運転歴があるライダーなら、いやそれどころかエントリーユーザーであっても、たぶん簡単にそれができてしまう。そう考えると、扱い切れるエンジン性能というのも YZF-R15 の魅力と言えるだろう。

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ちなみに、1速で約 45km/h、2速で約 70km/h、3速で約 95km/h というのが、レッドゾーンまで引っ張ったときの速度。逆に6速 100km/h 巡航時の回転数は、7,000 回転弱となっている。排気音は、うるさすぎて困るというレベルではないが、今どきの日本国内仕様車と比べれば大きい印象。低回転域だけでも普通に走るなら十分な加速力が得られるので、早朝深夜の住宅街ではあまり回さず、郊外ではやや回転を上げて、という使い方をお薦めする。

この扱いやすくてスポーティにも使えるエンジンと組み合わさる車体にも、小排気量モデルならではの良さがある。つまり、コンパクトで軽い。カウリングの造形である程度のボリューム感が与えられているとは言え、149cc 単気筒エンジンを積んだ車体はスリムで、跨った瞬間から “操れる自信” が湧いてくる。そして実際、市街地の交差点でも郊外のコーナーでも、これといって意識することなくスッと曲がっていける。

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ただし、ノーマルタイヤでの深いバンキングには、やや注意する必要がある。インド MRF 社製のタイヤは、絶対的なグリップ力に欠けることに加え、深くバンクさせたとき寝たままになりやすいように感じられた。海外に比べて恵まれた舗装環境の路面で、高性能なタイヤで育ってきた筆者が、タイヤに頼りすぎて走っていることもあるだろうが、少し気になる部分ではある。もちろん、タイヤを交換して走ってみたわけでもないので、このフィーリングがタイヤからくるモノとは断言できないが、筆者がこのバイクを購入したら、エンジンの慣らしが終わった段階で、タイヤは有名ブランド製に交換する。このような症状が出ていたとある海外ブランドの小排気量モデルが、タイヤを交換しただけで見違えるように気持ちの良いコーナリング性能となった経験があるからだ。

しかし、そのようなネガティブ要素があったとしても、YZF-R15 はやっぱり、魅力いっぱいのモデルだと思う。いつでもライダーを “その気” にさせてくれるし、一方で気軽に市街地で日常の足として使うこともできる。いざとなれば高速道路にも乗れるし、居住性はともかくとしてタンデム走行もできる。そして何度も書くが、性能を使い切って遊ぶことができる。

車両価格や軽2輪クラスの維持費を考えれば、セカンドバイクとしても最適。インド生まれ、インド育ちのヤマハで、小排気量ロードスポーツの魅力を再発見してみませんか?

ヤマハ YZF-R15の詳細写真は次ページにて

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