ホンダ VFR1200XD MUGEN
ホンダ VFR1200XD MUGEN

ホンダ VFR1200XD MUGEN – DCT搭載のビッグアドベンチャーツアラー

掲載日:2012年09月06日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  撮影/MOTOCOM  衣装協力/HYOD(ヒョウドウプロダクツ)

ホンダ VFR1200XD MUGENの試乗インプレッション

ホンダ VFR1200XD MUGENの画像

まさに大船に乗った気分
オフロード性能は安心に振り分けたい

クロスツアラーは、試乗を楽しみにしていた1台だ。と言うのも、R1200GS シリーズをはじめとする国内外の主なアドベンチャーモデルはほとんど乗ってきており、その魅力についてもだいぶ分かってきたつもりだが、これだけは未体験だったからだ。V4 のビッグオフというだけで珍しいが、そのうえ DCT である。このパッケージングはどうなのか? 非常に興味深いところだ。

ライディングポジションはとにかくデカい。V4 とは言え、さすがに 1,200cc ともなるとスリムとは言い難く、跨ると両足が地面にべったりとはいかず、280kg を超える車重は停止時にもバランスに気を遣う。ハンドル位置は高く、オフロードでなくツアラー的設定で、それゆえ遠くに感じてしまう。ひと口に言えば巨艦だ。

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だが、走り出すとプレッシャーが一変し、優越感になる。目線はどのバイクよりも高く、隣のクルマを見下ろせるし、そびえ立つようなフロントカウルと眼光鋭いV字のヘッドライトに圧倒されるのか、何もせずとも周囲が避けてくれるのだ。ノーマルは乗ったことがないが、『無限』仕様のマフラーはうるさ過ぎず、「ブイブイ」と特徴的な V4 サウンドを奏でてくれて気持ちいい。

加速感は圧倒的。シャフトドライブ特有のトルクリアクションによって、リアが持ち上げられながらジェット機のように加速していく。思えば当然、国内仕様の VFR1200F より大パワーなのだ。ハンパなスポーツバイクでは敵わないダッシュである。もちろん、このパワーを制御するためにトラクションコントロールが装備され、マンホールなどに乗って滑ったとしても即座に作動し、パワーを制御してくれるので安心だ。オフロード走行などでは逆にトラクションコントロールを OFF にしてスライドさせることもできるし、「MTモード」でフルスロットルにすると、一瞬フロントを浮かせることもできる。

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ハンドリングは穏やかで、大柄な車体と 19 インチホイールで優雅に曲がっていく感じ。フォークオフセット量も大きいため、ハンドルの動きもダイナミックだ。長い脚とワイヤースポークホイールのおかげで、コーナー途中にある減速帯やアスファルトの剥がれた所など、一切気に留めることなく走り抜けていく。万が一滑っても、トラクションコントロールがあるので安心感が違う。ただ、重量があるためか、サスペンションのバネはちょっと固めな印象で、オンロード主体のセッティングのようだ。パワーがパワーだけにフレームもかなりしっかりしている。よって動きは穏やかだが、乗り味はけっこうハードに感じた。

DCT は NC700 シリーズで体験済みなので、特別な感動はなかったが、従来型の VFR1200F に比べれば「ATモード」は確かにスムーズで、「MTモード」では素早いシフトチェンジにもよく反応してくれる。高速道路などは AT で余裕のクルーズを楽しみながら、ここ一発の加速時は MT でダッシュをかけるなど、便利な使い方ができる。とは言え、通常のミッション式のようなダイレクト感までは求められないので、自分でエンジン回転数とシフトタイミングをコントロールしたい人には、フラストレーションが溜まるかもしれない。

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とくに違和感を感じるのはUターン時などで、通常は半クラッチとリアブレーキを使ってパワーと速度を微調整するが、DCT にはそもそもクラッチレバーがないので、スロットルで調整するしかない。さらにリアブレーキを踏むとフロントも効くタイプの前後連動ブレーキなので、リアブレーキを使うと姿勢が乱れやすいのだ。DCT は絶対にエンストしないのでそれは強みだが、重量があるだけにバランスを崩したときのリカバリーは難しいと思った。

勇気を出してダートにも少しだけ足を踏み入れてみたが、デカくて重いためか意外と安定している。通常モードだとトラクションコントロールが作動しっぱなしでスロットルを開けてもぜんぜん加速していかないが、そのぶん安心感はある。もっと積極的にダートを楽しみたいときは、トラクションコントロールを切ればいいのだが、そうなると逆にスライドしまくりなので、冷や汗もたっぷりかくことになる。いずれにしても、DCT はミッション式に比べればダイレクト感に欠けるため、オフロードはあまり得意とは言えないだろう。コンバインド ABS はダートでもよく機能してくれて、安心感は絶大だった。

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クロスツアラーはやはり、万能型ハイスピードツアラーだと思う。その気になればオフロードを走られるだけのポテンシャルを、オンロードでの安全マージンと余裕に振り分けるのが正しい考え方だろう。DCT はそこに快適さを上乗せしてくれるのだ。

ホンダ VFR1200XD MUGENの詳細写真は次ページにて

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