カワサキ ヴェルシス 1000
カワサキ ヴェルシス 1000

カワサキ ヴェルシス 1000 – 伝統の直4エンジンで挑む

掲載日:2012年05月24日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  撮影/MOTOCOM

カワサキ ヴェルシス 1000の試乗インプレッション

カワサキ ヴェルシス 1000の画像

世界基準のデカさとパワー
スケールの大きさが魅力

「デカいな~」というのが第一印象。1,000cc という排気量は昨今では珍しくないが、車格はそれ以上のサイズ感がある。ヴェルシス(650)と比べるとふたまわりは大きい。跨ってみると、さらにそれを実感できる。1,500mm を優に超えるホイールベースに 240kg 近い車重、足長系の宿命でもある高いシートなど「ちょっと手強いぞ」というメッセージが直観的に伝わってくる。

エンジンは思っていた以上に軽やかでシャープ。見た目がデュアルパーパス的なので “モッサリ” しているかと油断していたが、スロットルレスポンスはけっこう鋭い。考えてみれば、エンジンは Z1000 やニンジャ 1000 と同系である。つまり、カワサキの最新リッタースポーツのエンジンそのものなのだ。

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ヴェルシス 1000 の魅力はこのエンジンにある。カワサキと言えば “4発”。かつての空冷Zや水冷 GPZ シリーズで築き上げてきた、十八番の直4エンジンの伝統はこの最新モデルにも脈々と息づいている。中速域の “ゴリゴリ” とした骨っぽいトルク感と、回転数を上げるときの天まで抜けるような上昇感は、まさにカワサキの大排気量直4ならではの魅力だ。他のライバルと思わしきアドベンチャーツアラーたちが軒並み2気筒エンジンであることを考えると、好き嫌いは別として、これは大きな差別化と言えよう。実際、加速力ではカテゴリー内最強レベルだと思う。

カワサキ ヴェルシス 1000の画像

ハンドリングは独特で、足長系らしい高さを生かしたダイナミックなコーナリングが新鮮だ。上体がアップライトでシートも高いので、ライダーの目線はかなり高いところにある。倒し込みでは建物の2階からダイブしていく感じになり、旋回中も地面が遠いので、慣れるまではちょっと躊躇うはずだ。また容量21リットルの燃料タンクや、がっちりと作られたリアキャリアなどの重量物が高い位置にあるため、特にガソリン満タン時などは、低速コーナーなどでちょっとグラッとする感がある。

ただ、車体の動きそのものは基本的に軽快なので、こうしたクセを理解した上でスロットルワークとサスペンションの反動を使えば、パタンパタンと気持ち良く切り返していける。サスペンションの豊富なストローク量を生かして車体の姿勢を作っていくのが、この手のバイクを乗りこなすコツだ。ゆえにライダーの動作もややゆったりのほうがしっくりくる。エンジンが強力かつ鋭いので、あまりガツガツ走ろうとすると、かえってリズムを崩しやすいのだ。

カワサキ ヴェルシス 1000の画像

高速巡航は直4パワーと路面に影響されない長い足、乗り心地の良いシート、小ぶりでも効果の高いウインドスクリーンのおかげで、ロングツアラー並みに快適。上体も前傾せずに済むので、日本の速度レンジだったら 1400GTR より快適かもしれない。ブレーキも扱いやすくコントローラブルで、パワーと車重を考えればもう少し初期に食い付きがあってもいいかとも思ったが、たぶんこれも、姿勢安定を優先してのことだろう。いざというときには ABS が作動してくれるので安心感は絶大だ。ABS の作動フィールもキックバックが少なく自然なものだ。

ヴェルシス 1000 でもうひとつ注目すべきポイントは、電子デバイスである。ZX-14R 同様、3モードのトラクションコントロール(KTRC)と、「ロー」と「フル」をセレクトできるパワーモード機能が搭載されているが、これが秀逸。ZX-14R に比べるとトラクションコントロール介入時の挙動は穏やかで、砂利道など滑りやすい路面などではきれいに駆動力を逃がしつつ、スリップを最小限に抑えてくれる。アスファルト路面でもコーナー立ち上がりなどでスロットルを開け過ぎたときなど、即座に介入してスライドをコントロールしてくれる。ライダーの負担を軽減しつつ、安全かつ快適に遠くまで運んでくれる、まさに魔法の装置だ。ちなみに、このマシンのキャラクターを考慮すると、普段はトラクションコントロール介入度最大の「3」と、パワーを抑えた「ロー」の組み合わせにしておくのが平和だと思う。

カワサキ ヴェルシス 1000の画像

ヴェルシス 1000 は最初に想像していたとおり、世界基準のアドベンチャーツアラーだった。正直なところ、ライダーの技量や体格を選ぶだろうし、日本の道では少々持て余すかもしれないが、それを補って余りある “パフォーマンスの魅力” を持ったバイクであることも事実。旅の荷物を満載して、高速道路でもダートでも道を選ばず、どこまでも突っ走る…。そんな妄想を広げてくれるスケールの大きいバイクだ。

カワサキ ヴェルシス 1000の詳細写真は次ページにて

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