ヤマハ XT1200Z スーパーテネレ
ヤマハ XT1200Z スーパーテネレ

ヤマハ XT1200Z スーパーテネレ – パリダカマシンの名を受け継いだエンデューロツアラー

掲載日:2011年12月01日 試乗インプレ・レビュー    

ヤマハ XT1200Z スーパーテネレの試乗インプレッション

ヤマハ XT1200Z スーパーテネレの画像

かつての砂漠の王者は
より優しく頼もしくなって帰ってきた

スーパーテネレと聞くと、パリダカで6度の優勝をすべてヤマハのマシンで飾った鉄人、“S・ペテランセル” が思い浮かぶ。彼が駆ったマシンが当時の市販モデル、XTZ750スーパーテネレをベースに開発された XTZ850R(TRX)などのワークスマシンだった。巡航速度160km/hオーバーとも言われた、これら砂漠の怪物マシンが砂丘を大ジャンプで超えていくシーンがあまりに強烈な印象として残っているせいか、今回およそ15年ぶりに復活したスーパーテネレは最初、「かなり手強いぞ」という先入観を持っていた。普通の人間では到底操れない代物と記憶に刷り込まれていたからだ。しかも排気量は 1200cc にまで拡大されている!

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だが、実際に現代のスーパーテネレに乗ってみると、その素直なハンドリングと扱いやすいエンジンに驚いた。年月は凄い進化をもたらしていたのだ。まずワインディングを流してみたが、想像以上にスポーティである。並列2気筒270度クランクの小気味よいパルス感を味わいながら、右へ左へと軽快に切り返していける感覚は、ビッグオフというよりはスポーツモデルに近い。少なくともビッグネイキッド並みのアベレージで普通に峠道を走ってしまう。シート高を “ロー” に設定すると、着座位置もかなり下がるのでオフロード系マシンにありがちな腰高感もあまり感じずに済む。足着きにも貢献するが、コーナリング中も地面が比較的近いので安心感があるのだ。

ヤマハ XT1200Z スーパーテネレの画像

走行モードは “Sモード” でも “Tモード” でも出力特性に極端な差はなく、それ故、逆に気軽にスイッチできていい。“Sモード” はちょっとキビキビ走りたいとき、“Tモード” は燃費を稼ぎながらのんびり走りたいときに向いている。特筆すべきはYCC-T連動のトラクションコントロール。これを試さずにレポートは書けない、と標準モード(最もトラコン介入度が高い)に設定した上で、濡れ落ち葉が溜まる直線路で勇気を振り絞って思い切りスロットルを開けてみた…。が、どうだろう、トラコン介入を知らせるランプの点灯とともに、何事もなかったかのように走破していくではないか。普通に考えたらその路面状況で、装備重量260kgを超える巨体をスロットル全開で制御できるはずがない。ダートではトラコンのメリットがさらに鮮明になった。低い凸凹のある砂利の林道でもトライしてみたが、リアが「ザサーッ」と滑り出してはトラコンが効いて駆動力が適度に抜かれるため、危険なほど横滑りすることがない。もちろん、オフ系のエキスパートだったら、トラコンを解除してリアをスライドさせながカウンターを当てて曲がっていくこともできるかもしれないが、おそらく99%のライダーにとってトラコンは大きなメリットに違いない。

ヤマハ XT1200Z スーパーテネレの画像

270度クランクというエンジン特性もオフロードには向いている。XTZ750スーパーテネレも並列2気筒だったが、クランク角度は360度だった。ワークスマシン、XTZ850 が途中から当時のロードスポーツモデル、TRX850 のエンジンを流用したのは、270度クランクによる不等間隔爆発のトラクション性能の高さゆえと言われている。エンジンが元々持っているトラクションの良さに加え、万が一のときはトラコンがアシストしてくれるので、まさに鬼に金棒だ。さらに前後連動 ABS もクリック感のないスムーズな作動フィールで、ワインディングのコーナー進入時などはブレーキレバー操作だけでリアも適切な配分で制動してくれるので、とても楽である。それでいて、リアブレーキは独立して作動させることができるので、Uターンでパワー制御したいときやオフロードでの姿勢制御には何ら支障をきたさない。ABS は従来タイプにありがちだった “間引き感” がなくスムーズに作動してくれるため、オフロードでも低速であれば十分な効力で減速してくれる。高速道路ではよく動く長い足と余裕の排気量、ゆったりとしたライポジと優れた防風効果によって快適なロングランが楽しめるはずだ。といった具合に、現代のスーパーテネレは「走る」「曲がる」「止まる」のすべてにおいてライダーに優しく、頼もしい存在である。これも電子制御技術をはじめとしたのテクノロジーの力である。近年、ビッグオフ的マルチパーパスツアラーというと、BMW の独壇場的なところがあったが、国産もようやく本腰を入れてきたな、という確かな手応えを感じる一台である。

ヤマハ XT1200Z スーパーテネレの詳細写真は次ページにて

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