BMW Motorrad F800S
BMW Motorrad F800S

BMW Motorrad F800S – BMW渾身のミドルスポーツ

掲載日:2008年07月30日 試乗インプレ・レビュー    

構成/バイクブロス・マガジンズ編集部

新カテゴリの開拓を続ける
BMW渾身のミドルスポーツ

BMWは、ここ数年で最もイメージが変わったメーカーだ。これまでBMWというとどうしてもツーリングバイクというイメージが強くかったが、最近ではツアラーからスポーツ、オフロードマシンまでフルラインアップを擁する総合モーターサイクルメーカーという印象が強い。数年前からじわりとカバーするカテゴリを広げつつあったBMWの中で、近年もっとも変化を印象付けたモデルといえば、F800SとF800STをおいて他にないだろう。新開発の並列2気筒エンジンを搭載し、価格帯は100万円代からの安価な設定とされた新しいF800Sは、明確にBMWの変化を感じさせるものだった。大型のツーリングスポーツと、趣味性の高いデュアルパーパスモデルを中心としたラインアップの中、スタンダードなスポーツバイクとして登場したF800Sは、まさに新たなライダーたちをBMWに呼び込むエントリーモデルとなった。事実、発売後は大ヒットとなり、販売店では多くの納車待ちが発生したほど。各バイク専門誌でも大きく取り上げられ、日本人の体格や道路事情を考慮した場合、まさに真ん中に位置するスタンダードバイクとして評価された。また、F800Sに搭載された新型エンジンは中間排気量クラスを拡充する意欲的なもので、最近ではF650GSにも採用されている。BMWというバイクのイメージを大きく変えたF800Sの実力を、試乗を通して早速体感してみようと思う。

BMW Motorrad F800S 特徴

扱いやすいサイズとスペック
ジャストサイズのパッケージング

BMW Motorrad F800S 写真F800SはこれまでのBMWと比較すると、驚いてしまうほどコンパクトだ。跨った時の印象は400ccネイキッドバイクのように感じてしまうほどだ。ただ、シート高は790mmとスポーツモデルとしては標準的なもので、女性の場合は少し高く感じてしまうかもしれない。ちなみに、身長174cmの筆者の場合、跨った状態で両足のつま先がつくため、特に不安に感じることはなかったことを書き添えておく。車両重量はガソリン満タンの状態で210kgほどとなっているが、重心バランスが良いため取り回しは良好。実際に斜面の駐輪場に停めてから動かしてみたのだが、教習所で習ったようにバイクを動かせば、特に苦も無く車両を出すことができた。ライディングポジションはセパレートハンドルながらライトなもので、前傾ながら腰の負担は控えめ。大型バイクはこれがはじめて、というライダーでも、F800Sなら不安なく扱えそうだ。

F800S最大の特徴とも言えるのが、このモデルにあわせて開発された798cc水冷並列2気筒エンジン。オーストリアのロータックス社とBMWで共同開発されたこのエンジンは、最高出力の90%を5,000rpmで発揮するように設定されており、非常にドライバビリティが高い。また、第3のコンロッドとも呼べるバランサーアームを内蔵しており、振動を抑えた滑らかなふけ上がりを実現しているのも特徴だ。足回りは標準的なテレスコピックフォークとスイングアームの組み合わせだが、駆動にチェーンやシャフトでなくベルトを採用。軽量でありながらメンテナンスフリーを実現している。しかも寿命がおおよそ4万kmとなっているため、交換のサイクルにも余裕がある。ブレーキは前後ともディスクを採用しており、メーカーオプションにてABS装着の選択も可能。サイズ、スペックだけでなく、扱いやすさという面においても、F800Sはスタンダードなスポーツモデル以上の仕上がりとなっている。

BMWが中間排気量クラスを開拓するために開発した、並列2気筒パラツインエンジン。バランサーアームによる、振動を抑えた滑らかな吹け上がりが特徴。また、エンジンサイズが小さくF800Sのコンパクト化にも貢献している。

Fシリーズのために開発された
並列2気筒798ccエンジン

BMWが中間排気量クラスを開拓するために開発した、並列2気筒パラツインエンジン。バランサーアームによる、振動を抑えた滑らかな吹け上がりが特徴。また、エンジンサイズが小さくF800Sのコンパクト化にも貢献している。

F800S/STの駆動系はコッグドベルトを使用。最初にテンションを正しく調整すれば、チェーンと違い頻繁なメンテナンスは不要。ベルトは新開発の幅広タイプとなっているため、耐久性が高く交換サイクルも長い。

ローメンテナンスのベルト駆動
新開発の幅広ベルトで長寿命を実現

F800S/STの駆動系はコッグドベルトを使用。最初にテンションを正しく調整すれば、チェーンと違い頻繁なメンテナンスは不要。ベルトは新開発の幅広タイプとなっているため、耐久性が高く交換サイクルも長い。

フロントには320mm径ダブルディスク、リアに265mm径シングルディスクを採用。コントロール性と制動力を両立したブレーキフィールを持つ。また、メーカーオプションでABSが設定されているのも見逃せない。

安心感のあるブレーキングを楽しめる
高性能ブレーキシステム+ABS

フロントには320mm径ダブルディスク、リアに265mm径シングルディスクを採用。コントロール性と制動力を両立したブレーキフィールを持つ。また、メーカーオプションでABSが設定されているのも見逃せない。

異形のヘッドライトが二つ連なる独特の表情がF800Sの特徴。ライトの光量はナイトランでも全く問題が無い。スクリーンは低めだが、先端部に折り返しがついているため、見た目以上に防風性能が高くなっている。

個性的なフロントマスク
低めスクリーンは防風性も十分

異形のヘッドライトが二つ連なる独特の表情がF800Sの特徴。ライトの光量はナイトランでも全く問題が無い。スクリーンは低めだが、先端部に折り返しがついているため、見た目以上に防風性能が高くなっている。

BMW Motorrad F800S 試乗インプレッション

誰もが扱える高性能で楽しむ
BMWならではの世界

BMW Motorrad F800S 写真さて、早速F800Sにまたがり、並列2気筒にエンジンに火を入れると、迫力のある低音のエキゾーストノートに驚く。決して大きいということではない。控えめながらも、しっかりと存在をアピールするサウンド。軽く手首を返してみたところレスポンスも良好で、元気のよい音が自然とライダーへ「やる気」を吹き込んでくれるようだ。BMW独特のウィンカースイッチは最初戸惑うものの、ライディングポジションやシートと座り心地は、まるであつらえたかのようにしっくりとくる。ゆっくりとアクセルを開けて走りだしてまず驚いたのが、予想以上の扱いやすさだ。東京の昼、しかも中心部の渋滞でありながら、持て余すことが無い。低速のトルクは太く、アクセルからパワーの立ち上がりが伝わってくるかのようにコントロールがしやすいのだ。かといって、回したときに物足りないかと言えばそんなことは一切無く、アクセル開度にあわせて必要なだけのパワーを簡単に引き出せる。高速道路の追い越しはもちろん、ワインディングの立ち上がりまで、まるで自分がエンジンとつながっているかのようなフィーリングだ。

BMW Motorrad F800S 写真また、ブレーキ性能の良さは特筆すべきレベルで、フロントWディスク、リアがシングルというスタンダードな構成ながら、レバータッチが抜群に良い。引き込みに応じて素直に立ち上がる制動力は、まるで指先で直接ローターを制御しているような感覚。ストップ&ゴーの多い街中からワインディングまで、ステージを選ばず安心感のあるブレーキングを楽しめる。足回りも安定志向になっており、国産スポーツのようにマシンに任せて切り込んでいくような曲がり方には不向きだ。しかし、ライダーが操りやすい素直な特性のため、「腕に覚えあり」なベテランはもちろん、初心者でも積極的に入力を行えば、レベル応じたコーナリングを楽しめてしまうのだ。F800Sは、エンジン、ブレーキ、足回りともに本当にコントローラブル。時間さえ許せば、もっと多くの道でこの扱いやすい高性能を試してみたいほどだ。

BMW Motorrad F800S こんな方にオススメ

初心者からベテランまで楽しめる
真にスタンダードなスポーツバイク

これからスポーツバイクをはじめたい、というライダーならF800Sは最右翼に位置するマシンだと言っても過言ではない。素直で扱いやすいということは、見た目のスペック以上に重要なもの。F800Sからはじめれば、無理なくライディングスキルを積み重ねていけるだろう。また、この扱いやすさはベテランライダーにもおすすめしたい。扱いやすい=底が浅い、ではないのだ。さすがBMWというべきか、扱いやすいだけに終わらず、扱えるからこそよりエキサイティングな走りを楽しめてしまう。本気で走れば、公道の速度域では収まりきらない性能さえ持っている。もし心が躍るスポーツバイクをお望みなら、F800Sは是非1度体験して欲しい。

BMW Motorrad F800S 総合評価

どんなステージでも楽しめる
快楽系モーターサイクル

正直な話、これまでBMWはツーリング向けでそれ以外は…と思っていた。しかし、F800Sはそんな先入観を粉々に打ち砕くほどエキサイティングなバイクだった。どこまでライダーのコントロールを受け入れ、思うままに曲がり、走り、止まる。渋滞する街中から山間部のワインディング、高速道路まで考えられるだけのステージを楽しんだが、まだまだ足りないほどだ。試乗車を返したあとも、あの低くうなるサウンドと、ダイレクトにバイクつながったかのような右手の感覚がなかなか消えないくらい、快楽を与えてくれるバイクだった。自分のように「BMWは…」という先入観があるライダーほど、衝撃的に感じるかもしれない。そして、この初心者にやさしく、ベテランでもあなどれない実力を持つバイクが、国産車とほぼ同じ価格で手に入ってしまうのだ。「BMW」というブランドにもっていたこれまでのイメージでは推し量れないこの楽しさを、できれば一度味わってもらいたい。バイクで走ることの面白さを、F800Sは雄弁かつ丁寧にライダーへと伝えてくれるから。

SPECIFICATIONS - BMW Motorrad F 800 S

BMW Motorrad F800S 写真

価格(消費税込み) =
116万3,000円(Active Line)
工場オプション 131万円(Hi Line)

新開発の水冷並列2気筒エンジンをアルミフレームに搭載したスポーツモデル。ベルトドライブとシート下ガスタンクといったこれまでのFシリーズで培った機能性を受け継ぎながら、これまでのモデルにはないスポーティな乗り味を実現している。

■エンジン = 水冷4ストローク並列2気筒 798cc
■最高出力 = 85PS/8,000rpm
■最大トルク = 86N・m/5,800rpm

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