2018 ヤマハMT-09 SP 充実の足まわりを手に入れた「SP」の真価

掲載日:2018年05月24日 試乗インプレ・レビュー    

取材・文/佐川 健太郎  写真/山家 健一  動画編集/山家健一  衣装協力/HYOD

ヤマハ MT-09 SP 試乗インプレッション

路面が良くなったと勘違いするほど
コーナリングの安定感もアップ

低速からアクセルひとつでドーンと出ていく力強いトルク感、俊敏なスロットルレスポンスは相変わらずだ。最高出力は116psと驚くほどではないが、3気筒クロスプレーン独特の俊敏でダイレクトなパワーと192㎏の軽量な車重を生かして、スペック以上の瞬発力を見せつけてくれる。特別仕様を表すネーミングが与えられたSPは、カラーリングやシートの素材も高級になっているが、STDとの違いは何と言ってもグレードアップされた前後サスペンションだろう。

ヤマハ MT-09 SPの試乗インプレッション

まずフロントは日本が世界に誇るKYB(カヤバ)製のスペシャルで、プリロード(バネの初期荷重)と減衰力(いわゆるダンパー)に伸び側と圧側の調整機構を持つフルアジャスタブルタイプである。しかも圧側調整が「低速」と「高速」に分かれたフルスペックタイプだ。ちなみに「高速」「低速」とはストロークスピードを表していて、簡単に言うと「低速」側は街乗りやツーリングなど普通に穏やかに乗っているシーンで有効。

ヤマハ MT-09 SPの試乗インプレッション

一方、「高速」側はフル加速やフル減速などサスペンションを酷使する走りや、ハイスピードで路面のギャップに当たったときの外乱吸収などに効果を発揮するものだ。つまり、街乗りからサーキットレベルの走りにも対応する足まわりが与えられたことになる。
また、リアのオーリンズはプリロードを素手で調整できるリモートアジャスターを装備。加えてサブタンクにも圧側20段階、ショック本体側には伸び側30段階のアジャスターが装備されるなど、幅広いセッティングが可能となっている。

ヤマハ MT-09 SPの試乗インプレッション

MT-09は元々エンジンがすこぶる元気なだけに、ちょっとラフにアクセルを開けると簡単にフロントアップしてしまう。また、STDモデルは前後サスともストローク量が多めで比較的ソフトなセッティングだったため、強くブレーキングするとフロントが入り過ぎてしまい、場合によってはピッチングの挙動が激しすぎると感じることもあった。それ故に「やんちゃ」とか「ジャジャ馬」などと表現されることも多く、またその過激な乗り味がエキサイティングでもあったのだが、気楽に乗りたいときはやや疲れることも。2017モデルでエンジンもややマイルドになりフロントフォークも改良されて、だいぶマイルドな乗り味にはなっていたが、それでも基本的傾向は同じだったと思う。

ヤマハ MT-09 SPの試乗インプレッション

それが今回のSP仕様の場合、俊敏さの中にもしっとりした安定感が出てきた。跨っただけでサスペンションの動きにグレード感が出てきたのが伝わってくる。ギャップの通過でも吸収性が良く安定しているため、サスペンションがあまり動いていない気がするほどだ。いつもと同じ道路なのに路面が滑らかになったような乗り心地なのだ。それが優れたサスペンションの証であることは言うまでもない。

ヤマハ MT-09 SPの試乗インプレッション

コーナリングでも荷重をかけて曲がるほどいい味が出てくる。粘り腰というか、ぐっと耐えてくれる安心感があるのだ。コーナー途中に出現するあのイヤな減速帯の凸凹なども気にならないし、路面のウネリなども前後の長い脚がうまくいなしながら追従してくれるおかげでリラックスして曲がっていける。そして、減速時や加速時でのピッチングモーションも穏やかで姿勢が安定しているため、思い切って進入していける。さらにパワーモードやABS、トラコンなどの電子制御が保険としてサポートしてくれるため安心。シフトミスをカバーしてくれるアシスト&スリッパ―クラッチも含め、滑りやすい路面ではとても頼もしい。

シートまわりもスリムなので足着きも意外に良好で、シートレザーも座面部分に滑りにくい素材が使われているためホールド感もよく、クッションもより快適になった気がする。ライポジも上体が起きて視界も良好、シート前後の自由度も高くハンドル幅がワイドなため楽にリラックスして乗りこなすことができる。

ヤマハ MT-09 SPの試乗インプレッション

元々走りに定評があったMT-09だが、「もう少し落ち着きがあったらいいのにな~」という多くのユーザーの望みをかなえてくれたのが今回のSPである。フルオートの電子制御サスもいいが、せっかく全調整式の前後サスが入っているので活用しない手はない。自分好みのセッティングを細かく詰めていく楽しさはマニュアル式ならではだ。これだけの装備でコスパ的にも素晴らしいレベル。ツーリングからサーキットまで幅広く楽しめて、サスセットを含めてスポーツライディングを学ぶための教材としても最適なモデルだ。

ヤマハ MT-09 SPの詳細写真は次ページにて

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